オミクロン株 “第6波”抑えるため… 年末年始にできること

感染力がデルタ株以上に強いとされる新型コロナウイルスの変異ウイルス、オミクロン株。懸命な水際対策が続けられる中、国内でも相次いで市中感染が確認され、さらなる感染拡大が懸念されています。

オミクロン株は流行のいわゆる「第6波」につながってしまうのでしょうか?
感染が最も広がりやすい時期とされる年末年始、「第6波」を抑えるために私たちは何をすればいいのでしょうか?

AIの感染者数予測 ピークは…

世界中でオミクロン株の感染が拡大する中、国内にオミクロン株が入ってきた場合の新型コロナウイルスの感染がどうなっていくのか。AI=人工知能を使って予測しているのが、名古屋工業大学の平田晃正教授です。

オミクロン株については、最初に南アフリカの当局から発表されたのが2021年11月25日。まだ分からないことも多くあります。

平田教授はオミクロン株の市中感染が始まる時期によって東京都の新型コロナウイルスの感染者数がどう変化するのか、AIに人流のデータ、過去の新型コロナの感染の推移、これまでに海外で報告されたオミクロン株の感染力、ワクチンの効果に対する影響のデータなどを入力して分析しました。
東京都でオミクロン株の市中感染が始まったのが12月25日だったと仮定した場合、都内の1日の新規感染者数は、2月中旬に約3300人でピークとなる計算となりました。

2022年1月1日に市中感染が始まったと仮定した場合でも、2月中旬に3000人に達しました。

2022年1月16日まで遅らせることができた場合は、都内の1日の感染者数は3月上旬に最大2200人余りという結果でした。

平田教授
「市中感染の始まりを少なくとも12月後半まで抑えられたことは水際対策の成果だと考えている。市中感染が12月上旬に始まっていた場合、忘年会シーズンと感染拡大が重なって感染者数はかなり増加していたと思う」
なお、AIの予測にはオミクロン株だけではなくデルタ株などすべての新型コロナが含まれています。ただ、オミクロン株の感染拡大がいつ始まるかがその後の感染状況に大きな影響を与えるという結果になりました。

このまま“第6波”に? 「経験上は…」

東京都では12月24日にオミクロン株の市中感染とみられる感染者が確認されています。このままでは再び流行の波、「第6波」になってしまうのでしょうか。

平田教授
「AIの予測通りに推移すると、これまでの経験上は大きな波になってしまう可能性がある。ただ予測は今後の私たちの行動次第で変化するもので、感染対策をしっかりすることでこの数値は2割程度減らすことができると思う。節度を持った行動が大切だと考えている」

「拡大し始めると そのスピードが速い」

AIの予測とは別に、世界中で進められているウイルスの研究からはオミクロン株の性質が徐々に明らかになってきています。専門家たちが懸念するのが、オミクロン株の感染力とワクチンの効果への影響です。

厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長は2021年12月22日に行われた会合後の記者会見で、オミクロン株についての見解を述べました。

脇田座長
「今後、国内でオミクロンによる感染拡大が起こることを想定すべき時期に来ている。専門家の間でもさまざまな議論があったが、オミクロン株が拡大し始めると、そのスピードが速いことが海外の流行状況によって分かっている。日本でも同じようなスピードで拡大してしまうと、医療提供体制が急速にひっ迫するのでそれに対する準備が必要だ」
脇田座長
「オミクロン株は感染力が強い一方で、感染すると軽症者や無症状者が多くなることが明らかになってきている。宿泊療養施設の確保や自宅や施設で療養する人の健康観察を行う体制を整えておくことが必要になる。また、ワクチン効果が下がることへの対応として追加接種の前倒しをして進めていくことが重要だ。」

オミクロン株による流行の「第6波」が起こる可能性については…

脇田座長
「デルタ株に対してはワクチン接種などによる免疫の効果が保たれていて、すぐ大きな流行につながるとは考えにくかったが、オミクロン株ではワクチンの効果が低下することがわかっていて、他国の状況をみると感染が非常に急速に進む可能性がある。現在の国内の人と人との接触機会は去年の最も多かった時期と同じぐらいの水準まで上がっているとみられる。流行はいつ始まってもおかしくない状況だ」

オミクロン株 感染のスピードは?

多くの専門家が指摘するオミクロン株の感染スピードはどのようなものなのでしょうか?イギリスの例を見てみると…
オミクロン株がイギリスで最初に確認されたのは11月27日でした。
それが約1か月後の12月24日には、国内でオミクロン株の感染が確認された人は1日2万3700人余り、累計は約11万4000人となっていました(12月24日時点データ)。
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は2021年12月23日、オミクロン株の「倍加時間」(累計の感染者数が2倍になるまでにかかる期間)について、イギリスや南アフリカなどの流行地域の分析では「2日から3日と極めて短いとの報告」があると指摘しました。

京都大学の西浦博教授や北海道大学の伊藤公人教授らのグループが2021年12月22日の厚生労働省の専門家会合で示した資料では、デンマークのデータから計算したオミクロン株の「実効再生産数」(1人の人が何人に感染を広げるかを示す数値)はデルタ株の3.19倍となっていました。

ワクチン効果が下がっている?

もう一つ懸念されているのが、オミクロン株に対してワクチンの効果が下がっているのではないかという点です。

西浦教授は、オミクロン株に対するファイザーのワクチンの効果を調べた海外の研究と国内でのワクチンの接種データをもとに、現時点で日本国内でオミクロン株に対する十分な免疫を持っている人がどの程度いるのか推定しました。

その結果、2021年12月22日時点で、
▽発症を予防できる水準の免疫がある人は14.8%
▽重症化を防ぐことができる水準の免疫がある人は38.7%
▽死亡を避けることができる水準の免疫がある人は37.5%という計算になったということです。

日本のワクチン接種率は約8割となっていますが、オミクロン株に対する免疫の現状としてはこのような推定となりました。西浦教授は、オミクロン株に対しての免疫は「第6波」の流行を防ぐには不十分な状態だとみられるとしています。
西浦教授
「海外ではこれまで、ナイトクラブやクリスマスパーティー、ライブで若者を中心に大規模なクラスターが発生して流行が始まっていた。日本でもそうした屋内でのハイリスクな接触が起こると、クラスター発生のリスクが十分にあると考えている。オミクロン株のリスクについて市民の皆さんや政府、行政が認識を共有してほしい。年末年始の帰省や移動に伴うリスクについて皆さんに考えてもらいたい」

にじむ「第6波」への強い警戒感

尾身会長は12月23日に会見を開いてオミクロン株への警戒を呼びかけました。
オミクロン株の市中感染については今のところスポット的に起きているもので面的な広がりまでは至っていない可能性を指摘しましたが、呼びかけの中では今後の「第6波」に対する強い警戒感をにじませました。

尾身会長
「年末年始の時期を迎え、デルタ株も感染拡大の傾向にある。今後ある程度の感染拡大は覚悟しなければならない。過去の変異ウイルスの経験を振り返っても、オミクロン株は国内の複数の場所で感染が起きていることは間違いない。オミクロン株に対しては、ワクチンの感染予防効果が弱まることが分かっているうえに感染拡大のスピードが極めて速い。日本でも急速な拡大が起こる可能性がある」
尾身会長
「オミクロン株がひとたび地域に定着してしまうと、仮に軽症者が多くても感染者の急増に医療体制が対応できなくなる可能性がある。これまでは最初は若い世代で軽症者が多く、高齢者が感染して重症者が増え始めるまでにタイムラグがあった。しかしオミクロン株では感染拡大の始まりからそれほど間をおかずに重症者増加のフェーズに入ってしまうおそれがある。感染状況に応じて強い対策を打つ判断は今までよりさらに早くすることが必須だ」

年末年始の行動については…

尾身会長
「現時点では増加傾向とは言え、感染者の水準もかなり落ち着いている。帰省も何もかも取りやめてというのは、多くの人の共感や理解を得られないメッセージになってしまう。ただ、まだ帰省や旅行をするか迷っている方がいれば、オミクロン株の状況を見て少し考えてくださいと呼びかけたい。オミクロン株の感染力はいままでとは異なり、これから年末にかけて接触機会が増えて感染も増えそれが帰省によって各地にも広がるリスクがあるということは専門家として伝える責務がある。これからの期間をどう過ごしてもらうかどうかが今後の感染拡大がどうなるかを左右すると考えている」