オミクロン株 第6波のリスクは? 過去の感染拡大どうだった?

世界各地で感染が拡大しているオミクロン株。
日本国内での感染について、専門家は「現時点で“オミクロン株は軽症化しているのでは”というのは楽観的すぎる」としたうえで、「市中感染が起きる前提で対策を検討しておく必要がある」と指摘しています。

国内ではこれまで、イギリスで最初に見つかった「アルファ株」、そしてインドで見つかった「デルタ株」が検疫で確認されたあと市中感染が起き、数か月後には大きな感染の波を引き起こしてきました。

それぞれ、国内で初めて確認されてからどれくらいのスピードで感染が広がったのでしょうか。

関西で拡大し始めた「アルファ株」

まずは第4波を引き起こした「アルファ株」です。

アルファ株が日本の空港検疫で初めて確認されたのは、去年12月25日。

数日前にイギリスから入国していた男女5人の感染が判明したケースでした。

それからおよそ1か月たったことし1月18日に、渡航歴のない静岡県の男女3人がアルファ株に感染していることが明らかになり、国内で初めて市中感染を確認したケースとされました。

国立感染症研究所が国内のPCR検査の結果などをもとにした推計では、アルファ株はまず関西で、それまでのウイルスを押しのけるように広がったと見られています。

関西ではことし2月下旬には25%が置き換わり、3月中旬には50%が、そして初めて検疫で確認されてから4か月余りたった5月上旬には、ほぼ完全に置き換わっていたとされています。

アルファ株は、それまでのウイルスより感染力が強く、大阪府などで感染者が急増し、医療が危機的な状況になりました。

また首都圏の1都3県でも、ことし4月上旬には25%が置き換わり、4月中旬には50%が、そして関西から1か月ほど遅れて、6月上旬にはほぼ完全に置き換わったとされています。

「アルファ株」しのぐ「デルタ株」

次に、これまでで最大の感染拡大となった第5波を引き起こした「デルタ株」です。

デルタ株が空港検疫で初めて確認されたのは、ことし3月28日にインドから入国した男性のケースでした。

国立感染症研究所は、およそ3週間余りたった4月20日には、国内の患者から初めてデルタ株が検出されたとしています。

デルタ株はアルファ株よりも感染力が強く、国立感染症研究所の推計では、首都圏の1都3県では、ことし7月上旬には25%が置き換わり、7月中旬には50%に達したとされています。

その後も急速な拡大が続き、初めて検疫で確認されてから4か月余りたった8月上旬にはほぼ完全に置き換わっていたと見られています。

関西でも7月下旬には50%が置き換わり、8月下旬にはほぼ完全に置き換わったとされています。

デルタ株が中心のことし夏の感染の「第5波」では感染者が急激に増加し、首都圏を中心に各地で医療が危機的な状況になりました。
そして、そのデルタ株をも上回る感染力があるのではないかと警戒されている「オミクロン株」。

世界でもこの夏以降、検出される新型コロナウイルスは、ほぼすべてがデルタ株に置き換わっていますが、南アフリカではデルタ株をしのぐ勢いでオミクロン株の感染の報告が相次いでいます。

11月に行われた遺伝子解析の結果によると、4分の3がオミクロン株に置き換わっているとみられています。

一方、WHOは今月7日の時点で「データが限られていて、重症化しやすいか評価するのは難しい」としています。

WHOによりますと、6日の時点で、ヨーロッパの18か国で確認された212の感染例すべてが軽症か無症状だったということです。

一方で、南アフリカでは11月末からの1週間で新型コロナの入院患者は82%増加しましたが、オミクロン株への感染者が占める割合は明らかになっていないとしています。

専門家「市中感染を前提に対策を」

オミクロン株の今後の感染の広がりについて、国際医療福祉大学の和田耕治教授に聞きました。

和田教授は、「過去の変異ウイルスを見ると検疫で初めて確認されてから1か月くらいで国内での市中感染例が見つかっている。オミクロン株についても、例えばきょう国内での感染が見つかっても全く不思議ではない」と指摘しました。

そのうえで「国内で市中感染が起きることを前提に感染者が見つかった場合、濃厚接触者の調査をどの範囲まで広げるのかや現在の厳しい水際対策をどうするのかなど対策を切り替える方法を検討しておく必要がある。また、これまで最初の感染例では感染した人の個人情報がさらされたり、誹謗中傷が寄せられたりという事態になってしまったので、どのように情報を伝え、どう受け止めてもらうのか整理をしておくことも重要だ」と話していました。

「忘年会や帰省 急激な拡大につながるおそれも」

そして、オミクロン株の感染が広がるスピードについては「オミクロン株は感染力が高いとされる一方で、今回は早い段階で強い水際対策をとったことで国内での流行を遅らせる効果がうまく現れる可能性もある。過去の変異ウイルスと同じようなスピードで広がるかどうかは分からない。ただ、年末年始にかけて忘年会などで人との接触が増えたり、帰省などで人の移動が増えたりすると見込まれていて、こうした中でオミクロン株が入ってくると急激な拡大につながるおそれもあると考えている」と話しました。

また、オミクロン株の重症化のしやすさについて、和田教授は「“オミクロン株は軽症化しているのでは”という見立ては現時点では少し楽観的すぎる。南アフリカでも入院患者が増加していて、現在は感染は若い世代が中心だが、感染がさらに広がり、高齢者などに達したとき、どのような状況になるのか見ていく必要がある」と話していました。