オミクロンにワクチンは効く? 専門家・最新の研究は

新型コロナウイルスワクチンの3回目の職域接種の申請が13日から始まりました。
オミクロン株はこれまでの変異ウイルスよりも感染力が強いことが懸念されていますが、3回目の接種でも使われるのはこれまで接種してきた従来の新型コロナウイルスに対応して作られたワクチンです。
効果についてどう考えればよいのでしょうか?

オミクロン株で下がる懸念も 一定の効果

オミクロン株はウイルスの表面にある突起「スパイクたんぱく質」に多くの変異があるため、ワクチンで作られた中和抗体が結合しにくくなり、効果が下がることが懸念されています。

それでも同じワクチンで3回目の接種を行うことについて政府の基本的対処方針分科会のメンバーで、国立病院機構三重病院の谷口清州院長はオミクロン株にも一定の効果はあると考えられ、意義は大きいとしています。

谷口院長は「たとえば、ウイルスが変異して中和抗体の効果が4分の1になったとしても、ワクチンを追加接種することで免疫の機能を高めて、全体の抗体の量が4倍になればウイルスに結合する中和抗体も増える。全体の抗体レベルが高くなるのは、追加接種のメリットだ」と話し追加接種によって中和抗体の量を増やせば、中にはオミクロン株に結合するものも現れ、効果が期待できるとしています。

免疫の“記憶”長続きがポイント

また3回目の接種によって「ウイルスが攻撃対象である」という、免疫の“記憶”を強固にして長続きさせることが重要なポイントだとしています。
谷口院長は「変異が重なって新たな変異ウイルスが出現しても、ワクチンを接種して免疫をきちんとつけておけば重症化は避けられるのではないかということは、オミクロン株にも当てはまることだと思う。ワクチンの追加接種は進めていくことが大切だ」と話しています。

抗体だけでなく ウイルス攻撃する免疫細胞で重症化防ぐ効果

またウイルスやワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「オミクロン株は細胞の表面にある突起のスパイクたんぱく質に変異が30あっても、スパイクたんぱく質全体からすると3%に限られ、ワクチンが全然効かなくなるというほどではない。感染を抑える効果は多少落ちる可能性が高いが、重症化を予防する効果はそれほど落ちないと思う」と話しています。

そのうえで3回目の接種について「抗体のレベルを上げるだけではなくて、ウイルスを攻撃する細胞による免疫の能力も高いレベルにすることができる。ウイルスに変異があり、抗体から逃れるかもしれないが、広い範囲の変異に対しても対応できる細胞による免疫が誘導されて、それが高いレベルで維持できることによって、重症化を抑える働きがあると考えられる」と述べました。

“3回目接種で効果上がる”発表・研究も

アメリカの製薬大手ファイザーなどは12月8日、オミクロン株に対するワクチンの効果について、3回目の接種を行うことで中和抗体の値が2回接種の場合の25倍になり、従来のウイルスに対する場合と同じ程度に高まったとする初期の実験結果を発表しました。

ファイザーなどが3回目の接種から1か月たった人の血清を使ってオミクロン株に対する中和抗体の値を実験で調べたところ、ワクチンを2回接種したあと3週間たった人の従来のウイルスに対する中和抗体の値と同じ程度で、オミクロン株に対する高い効果が期待できるとしています。

またオミクロン株でも免疫細胞が攻撃対象だと認識するスパイクたんぱく質の部分の80%は変化しておらず、2回の接種でも重症化を予防できる可能性があるとしているほか、3回目の接種を行うと免疫細胞のレベルが上がり重症化の予防につながると考えられるとしています。
一方、南アフリカのアフリカ健康研究所は、オミクロン株に対する効果についてファイザーのワクチン接種を受けた12人の血液を使って分析した結果、中和抗体の値が従来のウイルスに対する場合と比べておよそ40分の1になったと発表しました。

また発症を予防する効果は従来のウイルスに対する場合と比べて22.5%にとどまるとする試算も示しました。

この中で新型コロナウイルスに感染したあとワクチン接種を受けた6人のうち5人は中和抗体の効果が比較的高かったということで「3回目の追加接種を受けることなどで、中和抗体の働きを高めたり、重症化を防ぐことができたりする可能性が高い」としています。
アメリカのCDC=疾病対策センターは12月10日、週報の中で、ワクチンを2回接種した人や3回目の接種を終えた人でもオミクロン株に感染したケースがあることを報告したうえで「これまでの新型コロナウイルスと同様、ワクチンを接種した人では症状が軽度であると考えられる」としています。
ワクチンのオミクロン株への効果についてはいま世界各国で研究が進められています。今後、オミクロン株に適合したワクチンが必要になってくる可能性はありますが、現時点ではこれまでと同じワクチンを接種することで効果が期待できると考えられています。