きょうから衆院代表質問 10万円給付やコロナ対応などで論戦

国会では8日から、岸田総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が始まりました。
現金とクーポンによる18歳以下への10万円相当の給付をめぐり、立憲民主党の泉代表は、半分をクーポンにすると経費が膨らむとして、全額の現金給付を選択できるよう求めたのに対し、岸田総理大臣は、全額の現金給付も可能とするとしたうえで、自治体の意見を聞きながら具体的な運用方法を検討する考えを示しました。

立民 泉代表

10万円相当の給付について

立憲民主党の泉代表は、18歳以下への10万円相当の給付をめぐり「半分をクーポンで配布すると経費は膨らみ、市町村の手間も非常にかかる。市町村みずからの判断で現金給付を選択できるようにするべきではないか。クーポン事務費分は生活困窮者向けの臨時特別給付金に上乗せすべきだ」と指摘しました。

岸田総理大臣は「クーポンによる給付は、より直接的、効果的に子どもたちを支援することが可能だ。地方自治体にはクーポン給付を原則としてもらいたいが、実情に応じて、全額現金での対応も可能とする。どのような場合に現金給付とできるか、自治体の意見を伺いつつ具体的な運用方法を検討する」と述べました。

【10万円相当の給付をめぐる現状】

政府が新たな経済対策に盛り込んだ、18歳以下を対象にした1人当たり10万円相当の給付では、所得制限を設けたうえで、年内に5万円の現金給付を始め、残りの5万円は来年春の卒業・入学シーズンに向けて、子育て関連の商品やサービスに使いみちを限定したクーポンを基本に給付する方針です。

政府によりますと、現金とクーポンを組み合わせた給付にかかる事務的な経費は1200億円で、現金で一括給付する場合に比べて900億円程度高くなります。

こうしたことも踏まえ、政府は、効果的に子どもを支援するためクーポンでの給付を基本としながらも、自治体の判断によって全額現金での給付も可能だとしています。

“文書交通費”について

また泉氏は、国会議員に支払われる、いわゆる文書交通費をめぐり「立憲民主党の法案は、日割り化、そして、収支報告と領収書を議長に提出するなど、先進的な内容だ。与党にやる気があるなら、今の国会で合意を得ることはできる。岸田総理大臣、自民党の決断を強く求める」とただしました。

岸田総理大臣は「議員の政治活動の在り方と密接に関連する重要な課題と認識している。各党・各会派が考えを持ち寄ってしっかりと議論し、合意を得る努力を重ねる必要がある」と述べました。

【「文書通信交通滞在費」をめぐる現状】

国会議員に毎月100万円支払われる「文書通信交通滞在費」は、その月に1日でも在職していれば全額支払われる仕組みになっていて、ことし10月31日の衆議院選挙で初当選した議員などにも10月分の100万円が支給され、世論の批判が高まりました。

これを受け、自民・公明両党は、在職日数に応じた日割りでの支給に改める法改正を臨時国会で行う考えを示していますが、野党側は、制度の透明性を高めるため、使いみちの公開義務づけもセットで行うよう求めていて、立憲民主党、それに日本維新の会と国民民主党は、それぞれ法案を提出しています。

自民 茂木幹事長

3回目のワクチン接種について

自民党の茂木幹事長は、新型コロナ対策をめぐり、3回目のワクチン接種について「感染症克服の鍵を握るのはワクチンだ。3回目の接種も8か月を待たずに前倒しすべきだ」と指摘しました。

岸田総理大臣は「感染防止に万全を期す観点から、既存のワクチンのオミクロン株への効果を一定程度見極めたうえで、優先度に応じ、追加承認される見込みのモデルナ社のワクチンを活用して、8か月を待たずに、できるかぎり前倒しする」と述べました。

経済対策について

また茂木氏は、経済対策について「今後、必要になるのは攻めの経済政策だ。ウィズコロナのもとで経済をしっかりと動かせる体制をつくっていく。日本経済をどのような成長軌道に乗せていくのか」と質問しました。

岸田総理大臣は「新型コロナを決して楽観せず、最悪の事態を想定した医療体制の確保などを強化する。総額55.7兆円の大規模な経済対策によって、日本経済を1日も早く回復軌道に戻し、コロナ後の新たな社会を切り開いていく」と述べました。

日本のミサイル防衛体制について

さらに茂木氏は、日本のミサイル防衛体制について「迎撃能力を向上させるだけで、本当に日本を守れるのかという問題意識のもと、敵基地攻撃能力の保有は有力な選択肢だ。今後、専守防衛の考え方などを維持しつつ、保有について検討を加速すべきだ」と指摘しました。

岸田総理大臣は「極超音速滑空兵器や変則軌道で飛しょうするミサイルなどの技術は急速なスピードで変化、進化している。国民の命や暮らしを守るために何が求められるのか、いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討していき、国民にも理解していただきたい」と述べました。

立民 西村幹事長

医療提供体制の強化について

立憲民主党の西村幹事長は、医療提供体制の強化について「ことし新型コロナに感染した多くの方が入院できず、十分な医療を受けられずに亡くなった。病床だけでは医療はできない。看護師などの人材の確保はできているのか」とただしました。

岸田総理大臣は「この夏に比べて3割、1万人増のおよそ3万7000人が入院できる体制を確保し、医療人材も、全国でおよそ2000の医療機関から、医師およそ3000人、看護師およそ3000人の派遣に協力いただける」と述べました。

入国者の待機施設について

また岸田総理大臣は、水際対策に関連し、入国者の待機施設について、先週4日から2260室増やし、現時点で9610室を運用していることを明らかにしたうえで「引き続き、待機者の増加に備え、自治体とも連携して、必要な待機施設の確保に取り組んでいく」と述べました。

民間企業の賃上げについて

さらに民間企業の賃上げについて「来年の春闘に向けて議論をスタートしており、環境整備に全力で取り組んでいく。賃上げ税制については抜本的に強化し、企業の税額控除率を大企業で最大30%、中小企業で最大40%に大胆に引き上げることにした」と述べました。

「トリガー条項」の発動について

そして岸田総理大臣は、ガソリン価格をめぐり、本来の税率に上乗せした課税措置を停止する、いわゆる「トリガー条項」の発動について「発動された場合、ガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱、国と地方の財政への多大な影響などの問題があることから適当ではない」と述べ、慎重な考えを示しました。

入管施設でのスリランカ人女性の死亡問題について

また、入管施設に収容されていたスリランカ人の女性が死亡した問題について「亡くなられた方のご冥福を心からお祈り申し上げる。ご遺族の手紙は拝読し、気持ちはしっかりと受け止めた。このような事案が二度と起こらないよう、法務省でしっかりと取り組んでもらいたい」と述べました。

人権侵害関与の団体などへの制裁について

さらに岸田総理大臣は、人権侵害に関与した人物や団体に対する制裁を可能とする法整備について「幅広い理解が重要との観点から、今、超党派での議論が進んでいると承知している。議論をよく見守るとともに、これまでの日本の人権外交を踏まえて、引き続き検討していく」と述べました。

自民 茂木幹事長「骨太の議論できた」

自民党の茂木幹事長は代表質問を終えたあと記者団に対し「コロナ対策や経済対策、気候変動問題など、非常に骨太の議論ができ、岸田総理大臣からは丁寧な答弁をいただいた。中国への対応やミサイル防衛、経済安全保障など、これからまさに政府・与党で議論を深めていくテーマについても、いい問題提起ができた」と述べました。

立民 泉代表「政策立案型の姿示せた」

立憲民主党の泉代表は代表質問を終えたあと記者団に対し「17の政策提案を行い、政策立案型という立憲民主党の本来の姿を国民に知ってもらえたと思う」と述べました。

そのうえで「コロナ対策では最悪を想定すると言いながら入国規制は甘く、新自由主義を批判したように見えて実際には安倍路線を踏襲するようなことばしか出てこないところが、岸田総理大臣の限界かなと感じた」と述べました。