オミクロン株 感染力は?重症化は?分かってきたこと【12/8】

日本を含め、多くの国や地域で確認されるようになってきている新たな変異ウイルス「オミクロン株」。これまでデルタ株より感染力が強い変異ウイルスはありませんでしたが、南アフリカではオミクロン株に置き換わってきているとされています。

感染力は強いのか、感染した場合に重症化するのか?そして、オミクロン株で“第6波”が起きる可能性はあるのか?
いま分かっている情報をまとめました。
(2021年12月8日現在)

オミクロン株 デルタ株より感染力強い?

新型コロナウイルスは変異を繰り返していて、これまでにも感染力が強かったり、病原性が高く、感染した場合に重症になりやすくなったりする変異ウイルスはありました。
この夏以降、デルタ株が世界の新型コロナウイルス感染のほぼすべてを占めるようになっています。

世界中の研究機関から、ウイルスの遺伝子配列が登録されるサイト「GISAID」に報告されているのは、この2か月間でも99.8%がデルタ株。

感染力でデルタ株を凌駕する変異ウイルスはこれまでありませんでした。
それが、オミクロン株を初めて報告した南アフリカでは、デルタ株をしのぐ勢いでオミクロン株の感染の報告が相次いでいます。

11月に行われた遺伝子解析の結果でみると、4分の3がオミクロン株に置き換わっているとみられています。

デルタ株よりも感染力が強いのではないかと警戒が高まっているのです。

遺伝情報を調べてみると、新型コロナウイルスの表面にある突起「スパイクたんぱく質」の変異が30ほどと、これまでの変異ウイルスより多いことが分かりました。

ウイルスが細胞に感染する際の足がかりとなる部分で、細胞により結び付きやすい変異があり、感染しやすくなっていると考えられています。

また、抗体の攻撃から逃れる変異もあります。

こうしたことから、WHO=世界保健機関は、オミクロン株を最も警戒度が高い「懸念される変異株=VOC」に位置づけました。

現在報告されている以上の広がりか

ヨーロッパではオミクロン株が報告されていない国から入国した人からもウイルスが検出されているほか、遺伝子解析が十分に行われていない国もあります。

このため、国立感染症研究所は、アフリカ地域を中心にオミクロン株の感染がすでに拡大している可能性があると指摘しています。

専門家は、アルファ株やデルタ株が大きく広がったときと同じように、いま見えている数以上に世界各地で感染が広がっているのではないかと懸念しています。

“第6波で広がるおそれ”指摘も

いま、日本は、新型コロナウイルスの感染者数が去年(2020)夏以降で最も少ない状態です。
しかし、厚生労働省の専門家会合などは、ワクチンの接種から時間がたって効果が弱まることや、気温が下がり感染が拡大しやすい室内の閉めきった環境での活動が多くなることで、感染拡大の“第6波”が起きるおそれを指摘しています。

専門家は、オミクロン株が感染力が高かった場合、ただでさえ感染拡大しやすい季節に“第6波”として広がってしまい、大きな感染拡大になることを警戒しています。

多くの人が感染すると、重症化しやすい人にも感染が広がります。
このため、この夏の“第5波”などで経験したような医療が危機的な状態になるおそれがあるとしていて、こうしたことからも感染対策を続けるよう呼びかけています。

いま、ワクチン接種を終えた人は80%近くと高くなっていて、これまでの感染拡大の際とは状況が異なりますが、ワクチンを接種した人でも感染するケースもオミクロン株で報告されています。

感染力や感染した場合の重症になりやすさ(病原性)を見極められるまでは、最大限の警戒をするという対応が取られています。

これまでの変異ウイルスとの比較

感染力や病原性など、いま分かっていることをWHOや国立感染症研究所、各国の公的機関などの情報をもとに、ほかの「懸念される変異株=VOC」と比較する形でまとめました。

感染力

オミクロン株は、スパイクたんぱく質の変異の数から見ると、感染力が強まっている可能性が指摘されています。

WHOは2021年12月7日現在、「これまでの変異ウイルスと比べて増殖しやすいとみられるが、これで感染が広がりやすくなるかはまだ分からない」としています。

WHOによりますと、オミクロン株を最初に報告した南アフリカでは、11月第2週から感染者数が増加していて、11月末の1週間では前の週に比べて2倍以上になったとしています。

病原性

WHOによると、12月6日の時点で、ヨーロッパの18か国で確認された212の感染例すべてが軽症か無症状だったということです。

一方で、南アフリカでは11月末からの1週間で新型コロナの入院患者は82%増加しましたが、オミクロン株の感染者が占める割合は明らかになっていないとしています。

そのうえで、感染者数が増えれば入院患者の数は増えるとして、全体像を把握するにはより多くの情報が必要だとしています。

厚生労働省専門家会合の脇田隆字座長は12月1日の記者会見で、「去年2月の武漢からのチャーター便でも死亡例はありませんでした。病原性はまだ分かっておらず、市中感染しているところの状況を見るなど、慎重に考えるべきだ」と話しています。

また、アメリカ政府の主席医療顧問を務めるファウチ博士は12月5日、アメリカメディアのインタビューで、「重症化の度合いはそれほど高くないようだ」と述べる一方で、断定するには時期尚早でさらなる研究が必要だとする考えを示しました。

国立感染症研究所 感染症危機管理研究センターの齋藤智也 センター長は、12月7日、NHKの「クローズアップ現代+」で、重症化しやすい人たちに感染していない段階かもしれないことや、感染から重症化までは一定の時間がかかることもあり、重症化しやすいかどうか見分けるには少なくともあと2ー3週間かかるとする見方を示しています。

再感染のリスク

▽『アルファ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは維持、再感染のリスクは従来株と同じか

▽『ベータ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは減る、ウイルスを攻撃する細胞の働きは維持

▽『ガンマ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きはやや減る

▽『デルタ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは減る

▽『オミクロン株』
→再感染のリスクが上がっている可能性があるという報告も

WHOでは、ワクチンや過去の感染によって免疫を持つ人でも再感染しやすくなる変異があるとしています。

南アフリカでは、再感染のリスクが11月にはそれ以前と比べて2.39倍になっているとする研究報告があるということです。

しかし、WHOは再感染のリスクや、ブレイクスルー感染がどの程度起きるか見極めるためには、さらに研究が必要だとしています。

ワクチンの効果(ファイザー・モデルナのmRNAワクチン)

▽『アルファ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『ベータ株』
→発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『ガンマ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『デルタ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず
(感染予防・発症予防は下がるという報告も)

▽『オミクロン株』
→不明(※重症化予防効果あるとの見方も)

オミクロン株について、ワクチン接種を完了した人でも感染しているケースが報告されています。

症状は軽症だとされています。

ファイザーとともにワクチンを開発したビオンテックのCEOは、アメリカメディアのインタビューで、オミクロン株に対しても重症化を防ぐ効果がある可能性が高いという見解を示しています。

治療薬の効果

オミクロン株の変異のため、重症化を防ぐために感染した初期に投与される『抗体カクテル療法』に影響が出ないか懸念されています。

一方で、ウイルスの増殖を防ぐ仕組みの飲み薬には影響が出ないのではないかと考えられています。

また、WHOは、重症患者に使われる免疫の過剰反応を防ぐ薬やステロイド剤は、引き続き効果が期待されるとしています。

感染経路

新型コロナウイルス感染経路は、飛まつや「マイクロ飛まつ」と呼ばれる密閉された室内を漂う小さな飛まつが主で、ウイルスがついた手で鼻や口などを触ることによる接触感染も報告されています。

オミクロン株について、感染力が強まっているおそれはありますが、同様の感染経路だと考えられています。

専門家「第6波の元になっていく可能性も 油断してはいけない」

ワクチンやウイルスに詳しい北里大学の中山哲夫 特任教授は「国内に入っているという前提で考えないといけない。検査体制を充実させる必要があり、濃厚接触者を追跡できないと、第6波の元になっていく可能性もある。病原性については、感染しても重症化しにくいかどうかはまだはっきりわからない。それなりに感染力が強いと、重症化する人が一定数出てくると考えられるので油断してはいけない」と話しています。
また、新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博 教授は「感染性に関してはかなり高いことが推定されているが、重症化しやすいかどうかはまだはっきりと結論が得られていない。まだ、オミクロン株で重症化したという報告はほとんどないが、高齢者や免疫不全の人などがどれだけ重症化するのか注意して見ていく必要がある。ワクチンの効果については、弱まったとしても全く効果が無くなるとは考えにくいのではないか。追加接種を粛々と進めていくことが重要になる。また、治療薬について、抗体カクテル療法は効果が下がる可能性はあるので、これからのデータを待たないといけない。開発中の飲み薬は、ウイルスの遺伝子を増幅する酵素や合成に関わる酵素を阻害するもので、オミクロン株でもその部分には変異が入っていないので、効果は維持されるのではないか」と話しています。

これまでと同様の対策を

オミクロン株は、▽デルタ株より感染力が強く、病原性も高い変異ウイルスなのか、▽感染力は強いものの、重症化の割合は低い変異ウイルスなのか、2021年12月初めの段階ではまだ見極められません。

オミクロン株の起源は分かっておらず、国際的なウイルスの監視網が届いていないところで発生したと考えられています。

現在、感染力や病原性について、世界中で研究が進められていて、WHOや国立感染症研究所などが情報を更新していく予定です。

私たちができる対策はこれまでと変わりません。

厚生労働省の専門家会合も、ワクチン接種の推進に加えて、マスクの着用、消毒や密を避けるといった基本的な対策を続けるよう呼びかけています。