ミャンマー 拘束中のスー・チー氏に禁錮4年の判決

ミャンマーでクーデターを実行した軍に拘束されている、アウン・サン・スー・チー氏は6日、社会不安を引き起こしたとする罪などで禁錮4年の有罪判決を受けました。複数の罪に問われているスー・チー氏の裁判で判断が示されたのはこれが初めてで、今後も厳しい判決が続くことが予想されます。

スー・チー氏は、軍がクーデターを実行したことし2月1日に拘束されたあと、これまでに少なくとも12件の罪で訴追され、首都のネピドーに特別に設けられた法廷で審理が続いています。

裁判の関係者によりますと、このうち、
▽クーデターの発生から6日後と12日後にスー・チー氏の率いる政党が出した声明を通じて社会不安を引き起こしたとする罪と、
▽去年行われた総選挙の運動期間中の集会で新型コロナ対策の規定に違反したとする罪について、
6日、合わせて禁錮4年の有罪判決が言い渡されました。

スー・チー氏の罪を問う一連の裁判で判決が出たのはこれが初めてです。

スー・チー氏は、自身の拘束後に出された声明のことなど知らず、新型コロナ対策の規定にも違反していないとして、2つの罪について無罪を主張していました。

スー・チー氏はほかに国家機密法違反や汚職などの罪に問われていますが、軍の統制下で行われている一連の裁判では今後も厳しい判決が続くことが予想されます。

スー・チー政権で大統領 ウィン・ミン氏も禁錮4年の判決

首都ネピドーにある裁判所は6日、スー・チー政権のもとで大統領を務めていたウィン・ミン氏に対しても、同じく社会不安を引き起こしたとする罪と、新型コロナ対策の規定に違反したとする罪で、合わせて禁錮4年の有罪判決を言い渡しました。

ウィン・ミン氏はスー・チー氏と同様に、クーデターが起きたことし2月1日の早朝に軍に拘束され、現在も軟禁下におかれています。

スー・チー氏への訴追は少なくとも12件

アウン・サン・スー・チー氏は、軍に拘束されたあと複数の罪で訴追され、その数はこれまでに少なくとも12件に上っています。

6日判決が言い渡された、社会不安を引き起こした罪や新型コロナ対策の規定違反のほかに、国家機密法違反、複数の汚職の罪、無線機を違法に輸入した罪、無線機を不法に所持した罪、去年の総選挙で不正に関わった罪で訴追され、審理が続いています。

仮にすべて有罪判決を受けた場合、刑期は最大で100年を超えます。

現在76歳のスー・チー氏が再び自由の身となることは到底不可能な年数になります。

“密室”で続く裁判

およそ半世紀に及ぶ軍主導の政権に終止符を打ち、国家顧問として民主的な政権を事実上率いていたアウン・サン・スー・チー氏は、クーデターが発生したことし2月1日に軍に拘束されたあと、当初は首都ネピドーの公邸に軟禁されていました。

しかし5月下旬に自身も見知らぬ場所へと身柄を移され、現在の軟禁場所は不明です。

裁判は、首都ネピドーの地元政府施設の中に特別に設けられた法廷で行われています。

一般の傍聴は許されず、報道関係者も近づくことができません。

当初は、弁護団を通じて裁判の進捗(しんちょく)状況やスー・チー氏の健康状態、国民に向けたメッセージなどが外に伝えられていました。

しかしその後、軍は、統制下に置く地方政府を通じて、弁護団に対しても法廷で見聞きした内容を報道関係者や外交官、国際機関に伝えることを禁止する命令を出しました。

命令は、弁護士を通じて外部に伝えられた内容が司法手続きを妨害し、人々に混乱を引き起こしたなどという理由をあげています。

さらに、事実関係を争う審理では、軍から危害を加えられることを恐れて、スー・チー氏を弁護する立場で証言に立つ人がほとんどいないと伝えられています。

裁判はこのように固く閉ざされた密室で、被告のスー・チー氏にとって極めて不利とされる状況で行われています。

京都大 中西准教授「透明性の低い判決」

今回の判決について、ミャンマー政治に詳しい京都大学東南アジア地域研究研究所の中西嘉宏准教授は「軍のクーデターはスー・チー氏をはじめとした民主派勢力の排除が最大の目的であり、有罪判決は予想の範囲内だ」と話しています。

そのうえで、裁判の手続きについて「そもそもミャンマーの司法は長い軍事政権の中にあって独立性が認められておらず、今回の判決も独立した司法府が出したものと受け止める人は少ないだろう。何よりもスー・チー氏が今どこにいるのかさえ分からない状態で、弁護士との接見も限られるなど、法的に十分保護されていない可能性が高い中で、透明性の低い判決と言える」と指摘しています。

そして今後について「スー・チー氏にはまだいくつもの判決が待っているが、76歳という年齢を考えると受け入れられないような刑が下されることになると思う。一方でミャンマー国内では多くの人が判決に納得しておらず、むしろ抵抗を強めたり、社会の分断をさらに深めることになる可能性が高い。国際社会は、外交がほぼ無力な状態の中でも、黙認ではなく今回の判決に対して批判的なメッセージを軍に示していくことが重要だ」としています。

人権団体が非難の声明

アウン・サン・スー・チー氏の有罪判決について、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルは6日、声明を出し「すべての反対派を排除し、自由を抑圧する軍の決意を表すものだ」として強く非難しました。

そのうえで「国際社会は市民を保護するとともに、重大な権利の侵害行為を犯した者について、その責任を問うための取り組みを強化しなければならない」と呼びかけました。

イギリス トラス外相「自由と民主主義を抑圧」

アウン・サン・スー・チー氏の有罪判決についてイギリスのトラス外相は6日、コメントを発表し「判決は反対派を抑え、自由と民主主義を抑圧する軍の恐ろしい企てだ」と非難しました。

そして「イギリスはミャンマー軍に対して、政治的な理由で拘束されている人々の解放とともに対話を行い民主主義に戻すよう求めている。選挙で選ばれた政治家の恣意的(しいてき)な拘束はさらなる混乱を招くだけだ」と述べました。

国連 人権高等弁務官「政治的な動機に他ならない」

アウン・サン・スー・チー氏が有罪判決を言い渡されたことについて国連のバチェレ人権高等弁務官は6日、声明を発表し「軍が管理する裁判所で秘密裏に進められた偽りの裁判での有罪判決は、政治的な動機に他ならない。スー・チー氏の自由を恣意的に否定するだけでなく政治的な対話の扉を閉ざすものだ」と強いことばで非難しました。

その上でバチェレ高等弁務官は「判決はクーデターに対する人々の拒絶を深めるだけだ」として、有罪判決は平和的な事態の解決につながらないという考えを強調するとともに、スー・チー氏の速やかな解放を求めました。

EU ボレル上級代表「判決を強く非難」

アウン・サン・スー・チー氏が有罪判決を言い渡されたことについてEU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は「EUは、この政治的な動機に基づく判決を強く非難する。判決はミャンマーで民主主義がさらに大きく後退したことを示している」との声明を発表し、ことし2月のクーデター以降政治的な理由で拘束された人々をすみやかに無条件で解放するよう求めました。