米製薬大手メルク 新型コロナの飲み薬 日本での使用 承認申請

アメリカの製薬大手メルクが、新型コロナウイルスの飲み薬の日本国内での使用を認めるよう厚生労働省に承認を申請しました。

承認が申請されたのはメルクが新型コロナウイルスの軽症と中等症の患者向けに開発した飲み薬「モルヌピラビル」です。

国内で新型コロナウイルスの飲み薬の承認申請が行われたのは初めてです。

承認されれば自宅でも服用できるようになるほか、これまでの治療薬に比べて病院での管理が簡単になり、患者や医療機関の負担の軽減につながると期待されています。

メルクの発表によりますと「モルヌピラビル」は臨床試験では、発症から5日以内で重症化リスクがある患者に対し、入院や死亡のリスクを30%低下させる効果が確認されたということです。

安全性については大きな懸念は確認されなかったとする一方、胎児の成長に深刻な影響が出る可能性が否定できないなどとして妊娠中の患者への使用は推奨していません。

厚生労働省はすでにメルク側と160万人分の供給を受けることで合意していますが、当面は流通量が限られるため、特定の医療機関や薬局に供給することなどが検討されています。

厚生労働省は有効性や安全性を審査したうえで年内にも専門家部会を開いて承認の可否を判断する方針です。

「モルヌピラビル」は、先月、世界で初めてイギリスで承認され、アメリカでも近く緊急使用の許可を出すか判断される見通しです。

初めての飲み薬「モルヌピラビル」

「モルヌピラビル」は、アメリカの製薬大手「メルク」が開発した重症化を防ぐ効果があり、感染から間もない患者に使える初めての飲み薬です。

ウイルスが細胞に侵入したあと、設計図となる「RNA」をコピーして、ウイルスが増殖するのに必要な酵素の働きを抑え、増殖を防ぎます。

感染が確認されたらなるべく早く、症状が出た場合は5日以内に服用することが推奨され、新型コロナウイルスの軽症から中等症の患者で、肥満や糖尿病など、感染した場合に重症化するリスクが少なくとも1つはある人が対象です。

メルクは、重症化リスクがある患者の入院や死亡のリスクを低下させる効果は、2021年10月には治験の初期段階での解析の結果、およそ50%としていましたが、11月には追加の解析を行った結果、およそ30%だったと発表しました。

2021年10月の発表では、発症から5日以内の患者で、重症化リスクのある760人余りを薬を投与するグループと、プラセボと呼ばれる偽の薬を投与するグループに分けて、経過を比較したところ、
▽プラセボを投与したグループでは、入院した人や死亡した人の割合が14.1%だったのが、
▽薬を投与したグループでは7.3%で、入院や死亡のリスクがおよそ50%低下したとしていました。

一方で、11月に発表した、追加のデータを加えた治験の解析結果では、1400人余りを薬を投与するグループと、プラセボを投与するグループに分けて、経過を比較したところ、
▽プラセボを投与したグループでは、入院した人や死亡した人の割合が9.7%だったのが、
▽薬を投与したグループでは6.8%で、入院や死亡のリスクがおよそ30%低下したとしています。

また、副作用について、薬を服用したあとで有害事象が出た割合は、薬を服用したグループと、プラセボを服用したグループで変わらなかったとしています。

「モルヌピラビル」は、2021年11月にイギリスの規制当局が承認しているほか、アメリカでもFDA=食品医薬品局の専門家委員会が緊急使用の許可を出すことを支持する結論を賛成13人、反対10人の賛成多数で可決していて、これを受けて近く、FDAが最終的に判断する見通しです。

松野官房長官「年内の承認目指し迅速に審査」

松野官房長官は午後の記者会見で「きょう特例承認を求める申請があったと聞いている。今後、年内の承認を目指し、まずはPMDA=医薬品医療機器総合機構で優先的かつ迅速に審査を行っていくものと承知している」と述べました。