オミクロン株 感染力やワクチン効果は?いま分かっていること

この夏以降、世界で検出される新型コロナウイルスはほぼすべてが感染力が強い「デルタ株」になっています。日本でも“第5波”以降、ほぼ完全にデルタ株に置き換わりました。そこに突然現れた「オミクロン株」。これまでデルタ株より感染力が強い変異ウイルスはありませんでしたが、南アフリカではオミクロン株に置き換わってきているとされています。これまでで最も感染力の強い変異ウイルスなのか、オミクロン株で“第6波”が起きる可能性はあるのか?いま分かっている情報をまとめました。

オミクロン株 デルタ株より感染力強い?

新型コロナウイルスは変異を繰り返していて、これまでにも感染力が強かったり、病原性が高く、感染した場合に重症になりやすくなったりする変異ウイルスはありました。
その中でこの夏以降、世界の新型コロナウイルス感染のほぼすべてを占めるようになったのがデルタ株。

世界中の研究機関から、ウイルスの遺伝子配列が登録されるサイト「GISAID」に報告されたのは、この2か月間では99.8%がデルタ株となっていました。

一時は、南米などから報告されたラムダ株やミュー株の感染が広がるのではないかとされましたが、結局、南米でもデルタ株が優勢のままです。

感染力でデルタ株をりょうがする変異ウイルスはこれまでありませんでした。
それが、オミクロン株を初めて報告した南アフリカでは、デルタ株をしのぐ勢いでオミクロン株の感染の報告が相次いでいます。

デルタ株よりも感染力が強いのではないかと警戒が高まっているのです。

さらに、遺伝情報を調べてみると、新型コロナウイルスの表面にある突起「スパイクたんぱく質」の変異が30ほどと、これまでの変異ウイルスより多いことが分かりました。

ウイルスが細胞に感染する際の足がかりとなる部分で、より感染しやすくなっているおそれがあるとされています。

また、抗体の攻撃から逃れる変異もあります。

こうしたことから、WHO=世界保健機関は、オミクロン株を最も警戒度が高い「懸念される変異株=VOC」に位置づけました。

現在報告されている以上の広がりか

ヨーロッパではオミクロン株が報告されていない国から入国した人からもウイルスが検出されているほか、遺伝子解析が十分に行われていない国もあります。

このため国立感染症研究所は、アフリカ地域を中心にオミクロン株の感染がすでに拡大している可能性があると指摘しています。

専門家は、アルファ株やデルタ株が大きく広がったときと同じように、いま見えている数以上に世界各地で感染が広がっているのではないかと懸念しています。

“第6波で広がるおそれ”指摘も

いま、日本は、新型コロナウイルスの感染者数が去年の夏以降で最も少ない状態です。
しかし、厚生労働省の専門家会合などは、ワクチンの接種から時間がたって効果が弱まることや、気温が下がり感染が拡大しやすい室内の閉めきった環境での活動が多くなることで、感染拡大の“第6波”が起きるおそれを指摘しています。

専門家は、オミクロン株が感染力が高かった場合、ただでさえ感染拡大しやすい季節に“第6波”として広がってしまい、大きな感染拡大になることを警戒しています。

多くの人が感染すると、重症化しやすい人にも感染が広がります。
このため、この夏の“第5波”などで経験したような医療が危機的な状態になるおそれがあるとしていて、こうしたことからも感染対策を続けるよう呼びかけています。

いま、ワクチン接種を終えた人は77%と高くなっているので、これまでの感染拡大の際とは状況が異なりますが、ワクチンを接種した人でも感染するケースもオミクロン株で報告されています。

感染力や感染した場合の重症になりやすさを見極められるまでは、最大限の警戒をするという対応が取られています。

これまでの変異ウイルスとの比較

感染力や病原性など、いま分かっていることをWHOや国立感染症研究所、各国の公的機関などの情報をもとに、ほかの「懸念される変異株=VOC」と比較する形でまとめました。

感染力

オミクロン株は、スパイクたんぱく質の変異の数から見ると、感染力が強まっている可能性が指摘されています。

ただ、WHOは2021年11月30日現在「感染力が強まっているという直接的な科学的証拠はない」としています。

病原性

オミクロン株について、各国からは死亡例がなく、軽症が多いという報告が次々に出されていますが、WHOは11月30日現在、「まだ分からず、臨床結果のデータを精査している」としています。

厚生労働省専門家会合の脇田隆字座長は「去年2月の武漢からのチャーター便でも死亡例はありませんでした。病原性はまだ分かっておらず、市中感染しているところの状況を見るなど、慎重に考えるべきだ」と話しています。

再感染のリスク

▽『アルファ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは維持、再感染のリスクは従来株と同じか

▽『ベータ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは減る。ウイルスを攻撃する細胞の働きは維持

▽『ガンマ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きはやや減る

▽『デルタ株』
→ウイルスを抑える抗体の働きは減る

▽『オミクロン株』
→再感染のリスクが上がっている可能性があるという報告がある

ワクチンの効果(ファイザー・モデルナのmRNAワクチン)

▽『アルファ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『ベータ株』
→発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『ガンマ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず

▽『デルタ株』
→感染予防・発症予防・重症化予防ともに変わらず
(感染予防・発症予防は下がるという報告も)

▽『オミクロン株』
→不明

オミクロン株について、ワクチン接種を完了した人でも感染しているケースが報告されています。症状は軽症だとされています。

治療薬の効果

オミクロン株の変異のため、重症化を防ぐために感染した初期に投与される『抗体カクテル療法』に影響が出ないか懸念されています。

一方で、ウイルスの増殖を防ぐ仕組みの飲み薬には影響が出ないのではないかと考えられています。

感染経路

新型コロナウイルス感染経路は、飛まつや「マイクロ飛まつ」と呼ばれる密閉された室内を漂う小さな飛まつが主で、ウイルスがついた手で鼻や口などを触ることによる接触感染も報告されています。

オミクロン株について、感染力が強まっているおそれはありますが、同様の感染経路だと考えられています。

専門家「第6波の元になっていく可能性も 油断してはいけない」

ワクチンやウイルスに詳しい北里大学の中山哲夫 特任教授は「感染力が強い『アルファ株』の変異に加え、抗体の攻撃から逃れる『ベータ株』の変異もあり、基本的にはワクチンで誘導された抗体から逃れるような傾向を持っていると思う。実際に感染が広がってきていることも考えると、感染拡大が懸念されるウイルスだと思う。オミクロン株も国内に入っているという前提で考えないといけない。検査体制を充実させる必要があり、濃厚接触者を追跡できないと、第6波の元になっていく可能性もある。病原性については、感染しても重症化しにくいかどうかはまだはっきりわからない。それなりに感染力が強いと、重症化する人が一定数出てくると考えられるので油断してはいけない」と話しています。
また、新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博 教授は「感染性に関してはかなり高いことが推定されているが、重症化しやすいかどうかはまだはっきりと結論が得られていない。まだ、オミクロン株で重症化したという報告はほとんどないが、高齢者や免疫不全の人などがどれだけ重症化するのか注意して見ていく必要がある。ワクチンの効果については、弱まったとしても全く効果が無くなるとは考えにくいのではないか。追加接種を粛々と進めていくことが重要になる。また、治療薬について、抗体カクテル療法は効果が下がる可能性はあるので、これからのデータを待たないといけない。開発中の飲み薬は、ウイルスの遺伝子を増幅する酵素や合成に関わる酵素を阻害するもので、オミクロン株でもその部分には変異が入っていないので、効果は維持されるのではないか」と話しています。

これまでと同様の対策を

オミクロン株は、▽デルタ株より感染力が強く、病原性も高い変異ウイルスなのか、▽感染力は強いものの、重症化の割合は低い変異ウイルスなのか、2021年12月初めの段階ではまだ見極められません。

オミクロン株の感染力や病原性について、世界中で研究が進められていて、WHOや国立感染症研究所などが情報を更新していく予定です。

私たちができる対策はこれまでと変わりません。

厚生労働省の専門家会合も、ワクチン接種の推進に加えて、マスクの着用、消毒や密を避けるといった基本的な対策を続けるよう呼びかけています。