オミクロン株 どう備える? 今できることは?

世界各地で感染報告が相次ぐオミクロン株。
NHKが2日午後8時半時点でまとめたところ、日本を含め世界の28の国と地域で確認されています。

水際対策は、そして感染拡大の懸念は。
主な動きや専門家の分析をまとめました。

1.きょうの動き 水際対策で方針転換も

フィギュアスケート グランプリファイナル開催中止へ

日本スケート連盟は2日、今月9日から大阪府で開催される予定だったフィギュアスケートの国際大会、グランプリファイナルを中止すると発表しました。

大会をめぐっては、オミクロン株の影響で日本政府が外国人の新規入国を原則停止するなど水際対策を強化したため、海外選手の受け入れなどについて日本スケート連盟やスポーツ庁など関係機関で対応を協議してきました。

その結果、日本スケート連盟は今月9日から12日の日程で行われる予定だったフィギュアスケートのグランプリファイナルを中止すると発表しました。

グランプリファイナルはグランプリシリーズの成績上位の選手が出場する国際大会で、来年の北京オリンピックの日本代表の選考などにも関わる大会です。

去年の大会は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となり、ことしは2年ぶりに大阪府門真市で男子シングルに世界選手権3連覇中のアメリカのネイサン・チェン選手、女子シングルに今シーズン世界最高得点をマークしたロシアのカミラ・ワリエワ選手など海外のトップ選手が参加して開催される予定でした。

国際線新規予約停止要請を取り下げ

一方で、水際対策を強化するとして国際線で新たな予約の停止を航空会社に要請していた国土交通省は、2日、一部で混乱を招いたとしてこの要請を取り下げ、日本人の帰国需要に十分配慮するよう航空会社に改めて通知しました。

国土交通省は、オミクロン株の感染拡大に対する水際対策を強化するとして、航空各社に対し今月末までの1か月間、日本に到着するすべての国際線の新たな予約を停止するよう先月29日に要請しました。

新規予約の停止要請の対象には海外にいる日本人も含まれ、予約を取っていない日本人が事実上、帰国できなくなることについて国土交通省は「緊急避難的な予防措置だ」と説明していましたが、航空会社の関係者からは「対応が厳しすぎる」と反発の声が上がっていたほか、海外からの帰国を予定していた日本人などの間で困惑が広がっていました。
これについて岸田総理大臣は「一部の方に混乱を招いてしまった」などとして日本人の帰国需要に十分に配慮するよう指示したことを明らかにし、国土交通省はこうした指示を受け、2日、予約停止の要請を取り下げて日本人の帰国需要に十分配慮するよう航空会社に改めて通知しました。

国土交通省は、今後、航空各社と具体的な対応について調整することにしていて、水際対策を強化するとして打ち出した要請は、3日間で方針転換を迫られる形となりました。

ワクチン3回目接種の間隔 見直し検討へ

対策の鍵になる3回目のワクチン接種について、松野官房長官は午前の記者会見で「接種間隔は原則8か月以上としているが、感染拡大防止の観点から医療機関などでクラスターが発生した場合の例外的取り扱いについて、先日、厚生労働省から示した」と述べました。

そのうえで「今後の感染状況の変化や自治体の準備状況、ワクチンの供給力などを踏まえ、必要があれば改めて8か月を待たずして接種を行う範囲についてさらに検討を行う。まずは、オミクロン株のウイルスの特徴やワクチンの効果などの情報収集をしていきたい」と述べました。

2.専門家「油断してはいけない」「感染対策の継続が大事」

中山特任教授 さらに接種を進める必要性指摘

オミクロン株について、専門家はどう見ているのか。

ワクチンやウイルスに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「遺伝情報のデータが公開されているが、感染力が強い『アルファ株』の変異に加え、抗体の攻撃から逃れる『ベータ株』の変異もあり、基本的にはワクチンで誘導された抗体から逃れるような傾向を持っていると思う。実際に感染が広がってきていることも考えると、感染の拡大が懸念されるウイルスだと思う」と述べました。

また、ワクチンについて「今のワクチンは重症化を抑える効果が多少落ちるかもしれない。ただ、ワクチンは抗体だけでなく、ウイルスを攻撃する細胞の活性化も促すので、必ずしも重症化を抑えることができないものではない」と述べ、3回目の接種を含めてさらに接種を進める必要性を指摘しました。
一方、各国から軽症のケースが多いという報告が続いていることについては「どんな変異が病原性の変化に関わるか、今後の実験結果を見ないと分からない。オミクロン株についてはデータがまだ十分集まっていないので、病原性が低く感染しても重症化しにくいかどうかはまだはっきりわからない。ただ、それなりに感染力が強いと感染者の中で重症化する人が一定数出てくると考えられるので、油断してはいけない」と話しています。

いま求められる対策について、中山特任教授は「アルファ株もデルタ株も、検疫で見つかった時点ですでに国内に入っていたため、オミクロン株も入っているという前提で考えないといけない。検査体制を整え、積極的疫学調査で感染者と周辺を徹底的に調べて感染を広げないことが大事だ。また、マスクの着用や3つの密を避けるなど、基本的な感染対策を常日頃から徹底する必要がある」と指摘しました。

和田教授「インパクト 約2週間で見えてくる」

厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治教授は「オミクロン株がデルタ株と比較してどういうインパクトが私たちの生活にあるのか、そういうところが今後おそらく2週間くらいで見えてくると思う。特にどれくらい重症化するのか、感染力はどれくらいあるのか、そしてワクチンは効くのか、そういうところを見ながら、場合によっては入国の水際対策をどういうふうにするのかということを示していく必要がある」と述べました。

そのうえで、現在の水際対策について「水際対策は『時間稼ぎ』と捉えて、その間にこの変異ウイルスへの備えを進めておくという考え方が重要だ」と指摘しています。
私たちがオミクロン株にどう備えればいいかについて、和田耕治教授は「今、国内では比較的に感染が収まっているので、これまでに引き続き、基本的な感染対策を行いながら冷静に情報収集していくことになると思う。引き続き、体調が悪ければなるべく外に出ないようにして検査を受けることや、ワクチンをまだ2回接種していない人はぜひともこの機会に接種することも大切だ」と話していました。

さらに、日々の対策については「今の段階では過度に不安に思っていただく必要はないが、感染対策の継続が大事で、特に話をするときにはマスクをすることや、寒くなってきているができるだけ換気をすること、人と人とが集まるような場面でも気をつけながらなるべく小規模で行うことを心がけてこの12月の初旬を過ごしていくことが大切だ」と話していました。

3.医療現場の備えは

新型コロナ患者の治療を続ける大学病院の医師は、感染がいったん減少している今のうちに、これまでコロナ対応をしていない地域の医療機関にも診療方法を学んでもらおうと指導を行っています。
ただ、感染の減少もあって参加する医療機関が思うように広がらない現状に危機感を募らせています。

取り組みを進めているのは、川越市にある埼玉医科大学総合医療センターの感染症科の岡秀昭教授です。

第5波では40床余りある病床が埋まり、入院を断らざるをえないケースも相次ぎ、岡教授は感染がいったん減少している今のうちに、コロナ診療にあたる医療機関を増やそうと、地域の診療所などに指導を行っています。
この日、指導を受けた診療所は、発熱患者の検査などは行ってきましたが、コロナ患者の診療には参加していませんでした。

今後は自宅療養者などにも対応する予定で、岡教授が重症化のリスクが高い患者かどうか見極める方法を伝えていました。

ワクチン接種の有無を確認し、がんの治療を行っている場合や別の病気の治療で免疫を抑える薬を使用しているケースは、ワクチン接種後も重症化のリスクがあると注意を呼びかけました。

そして、発症から1週間ほどたっても熱が下がらなければ「肺炎」を疑い、息苦しさといった自覚症状がなくても入院できるよう調整してほしいと話していました。

参加した看護師は「正しくおそれつつ有事の備えを今のから進めたい」と話していました。

コロナ診療に参加する医療機関を広げようという取り組み。
感染が減少してきてからは依頼が減っていて、岡教授は、参加する医療機関が思うように広がらない現状に危機感を募らせています。

「拡大してからでは間に合わない 今から準備を」

岡教授は「オミクロン株の出現で分かったことは『コロナは簡単には終わらない』ということで、残念ながら新しい波は起きてしまうと思う。『のどもと過ぎれば熱さを忘れる』というように、研修が思うように進んでいないが、感染が拡大してからでは間に合わないので今から準備を進めてほしい」と話していました。