女子テニス協会 中国でのすべての大会中止と発表 選手不明で

WTA=女子テニス協会は1日、中国の前の副首相に性的関係を迫られたことなどを告白したあと、行方が分からなくなったと伝えられている女子テニス選手を巡り「中国はこの問題に信頼できる対処をしていない」などとして香港を含む中国でのすべての大会を中止すると発表しました。

中国の女子プロテニスの彭帥 選手をめぐっては、共産党最高指導部のメンバーだった張高麗 前副首相から性的関係を迫られたことなどを告白したとされる文書がSNS上に投稿され、その後、行方が分からなくなったと伝えられています。

WTAではこれまで中国政府に対して透明性を確保したうえでの調査を求めてきましたが、WTAのスティーブ・サイモンCEOは1日、公式ホームページで声明を発表し「中国の指導者たちはこの非常に深刻な問題に信頼できる方法で対処していない」などとして「香港含む中国で開催されるすべての大会を直ちに中止する」ことを明らかにしました。

このほか声明では「彭選手の居場所は明らかになったが、彼女が安全で自由かということや、検閲されたり強制や脅迫されていることに深刻な疑問を抱いている」としたうえで、現在の状況を踏まえて「来年、中国で大会を開催した場合、すべての選手やスタッフがリスクに直面する」などとして大会を開催した場合の安全性に懸念を示しました。

そして、テニス界における中国の経済的な影響の大きさを考慮しても「彭選手とすべての女性に正義がもたらされることを願っている」としています。

毎年10近い大会開催 ツアーファイナルも

WTAのツアー大会のうち、香港を含む中国で開かれる大会は2008年の夏の北京オリンピック以降、増えてきました。

ここ2年は新型コロナウイルスの影響で多くの大会が中止となりましたが、近年は毎年10近い大会が開催されていて、2019年にはシーズン成績の上位選手のみが出場できる「ツアーファイナル」も開かれています。

IOCバッハ会長がテレビ電話で対話するも…

先月21日にはIOC=国際オリンピック委員会のバッハ会長がテレビ電話で対話したと発表しました。

彭選手とは30分間話し合い、彭選手から北京市内の自宅にいて無事だという説明を受けたとしています。

この際、バッハ会長は、北京オリンピック開催前の来年1月に北京市内での夕食に彭選手を誘い、本人も受け入れたということです。

これに対してWTAは「公開された映像によって要求が変わることはない」などとして透明性のある調査を通じて真相を明らかにすべきだと改めて中国側に求めていました。

往年の名選手がWTAを支持

中国の前の副首相に性的関係を迫られたことなどを告白したあと、行方が分からなくなったと伝えられている彭帥選手を巡り、WTA=女子テニス協会が香港を含む中国でのすべての大会を中止すると発表したことについて、女子テニス界の往年のスター選手から支持する声が相次いでいます。

このうち、女子テニス界の伝説とも呼ばれるビリー・ジーン・キングさんは「中国と世界の人権を守るために強い態度を取ったことに拍手を送ります。WTAは、歴史の正しい側に立って選手を支えている」とツイッターに投稿し、WTAの決定を支持しました。

また、四大大会の女子シングルスで、18回の優勝を誇るマルチナ・ナブラチロワさんも「WTAは、勇気ある姿勢でお金よりも原則を優先し、世界中の女性のため、とりわけ彭帥選手のために立ち上がった」と対応を評価しています。

中国共産党系メディア編集長 WTAを批判

中国の女子プロテニスの彭帥選手をめぐって、WTA=女子テニス協会が、香港を含む中国でのすべての大会を中止すると発表したことに対し、中国共産党系のメディア、環球時報の胡錫進編集長は、2日ツイッターに「WTAは、彭選手に対し、中国の制度に対する西側の攻撃を支援するよう強要している。WTAは、彭選手の説明が彼らの期待に添うものでなければならないと要求しており、彼女の表現の自由を奪っている」と投稿し、WTA側を批判しました。

胡編集長は、これまでにも彭選手の様子だとする動画を相次いで投稿するなど、この問題に関する発信を行っています。

中国外務省 報道官「スポーツの政治問題化 断固反対」

中国の女子プロテニスの彭帥選手をめぐって、WTA=女子テニス協会が、香港を含む中国でのすべての大会を中止すると発表したことについて、中国外務省の汪文斌報道官は、2日の記者会見で「われわれは、スポーツを政治問題化することには、一貫して断固反対している」と述べ、WTAの対応を批判しました。

松野官房長官「懸念払拭 強く望む」

松野官房長官は2日午後の記者会見で「彭帥選手をめぐる状況については、これまで多数の関係者が懸念の声をあげており、今回の女子テニス協会の決定はそうした声を受けたものと認識している。政府としては、一刻も早く懸念が払拭されることを強く望んでおり、関連の状況を注視していく」と述べました。

元プロテニス選手 杉山愛さん「すばらしい決断」

元プロテニス選手で自身もWTAのツアー大会で長年活躍した杉山愛さんは、WTAの今回の判断について「選手の命を守ることを最優先に考えていると思うので、すばらしい決断だった。テニス界にとって10年余り前から中国の市場は大きなものになっていたが、それよりも大事なものが明確にされないことは受け入れられないという意思の表れだと思う」と理解を示していました。

杉山さんは、現役時代に彭帥選手と2度対戦し、いずれも負けた経験があるということで「気持ちがしっかりとした選手なので、あまり揺らぐことなく、冷静に対処する印象がある」としたうえで「最初のSNSの発信を見たときは正直驚いた。なぜこのようなタイミングで発信したかったのかなと思ったが、その後こういった形になり安否を心配している。自分が発信することで社会に一石投じるではないが、何か変えたい気持ちがあったのかもしれない」と気遣っていました。

そして「女性の地位向上については、まだこれからという国もあるし、中国のように大きな勢いのある国は、なかなかムーブメントが起こりにくいと思うが、少しでもよりよい世界になってほしいというのがWTAの願いであり、私自身の願いでもある」と話していました。