「オミクロン株」 外国人の新規入国、原則停止 受け入れ現場は

新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染が各国に広がっているのを受けて、政府は30日から世界のすべての国や地域を対象に、外国人の新規入国を原則停止しました。8日から入国制限が一時、緩和されたことを受けて、受け入れ準備を進めてきた国内各地の現場では、対応に追われています。

“日本の玄関口” 国際空港ターミナル 閑散

羽田空港の国際線が発着する第3ターミナルでは、29日までは仕事で来日する外国人の姿がみられましたが、30日は日本に家族がいたり、日本で働いたりしている外国人が行き来する程度で、閑散としています。

軍で働いているアメリカ人の男性は「空港や機内ではマスクをつけるなどふだんと変わらない様子でした。観光などで少しの期間、日本に入れないのは知っていましたが、新しい変異ウイルスの状況はよく分かりません。日本に住んでいる人たちの安全のために政府が行うのは仕方がないと思います」と話していました。

アメリカに在住し、一時的に帰国した日本人の男性は「機内には日本人が多く、外国人はほとんどいなかったです。コロナの影響でアメリカに戻れない時があったので、そういった状況にならなければ良いなと思います」と話していました。

また、成田空港では対象の最初の便となるマニラからの便が午前11時半ごろ到着しましたが、新規に入国する外国人の姿は見られませんでした。

空港の検疫では帰国する日本人などに「オミクロン株」が確認された南アフリカやイギリスなどの滞在歴がないか聞き取りを行っていました。

“貴重な戦力” 技能実習生 入国できず派遣会社に相談

茨城県稲敷市にある農業機械の部品メーカーは、8年ほど前からベトナムからの技能実習生を受け入れています。

11月、外国人の新規入国が一部、再開されたことから、会社では技能実習生のためのビザなどの手続きを進め、12月下旬に新たに12人が入国する予定でしたが、入国する時期が見通せなくなったということです。

会社によりますと、技能実習生は現場での貴重な戦力にもなっていて、入国予定の12人の担当業務もすでに決めていたことから、派遣会社に相談するなど代わりの人材の確保に追われています。

農業機械の部品メーカーSTNで人事を担当をしている佐藤力崇 部長は「新たな変異ウイルスを持ち込ませないという政府の方針は理解できるので従うしかありません。人の往来が可能になる時が来ることを願っています」と話していました。

人手不足の介護施設 「待ちながら頑張るしか…」

さいたま市の介護施設では12月、受け入れる予定となっていた「特定技能」の在留資格のある外国人の来日の見通しが立たなくなり、対応に追われています。

さいたま市岩槻区にある特別養護老人ホームでは、8日から入国制限が一時、緩和されたことを受けて、「特定技能」の在留資格のあるモンゴル人女性1人を12月下旬に受け入れる予定で、準備を進めていました。

施設では飛行機のチケットを確保したり、ビザを申請したりしたほか、施設内に入国後の待機期間中に過ごす部屋を用意していましたが、来日の見通しが立たなくなったということです。

女性は12月の来日にあわせて、すでに現地での仕事を退職していたということで、施設の担当者は、女性にSNS上でメッセージを送り、来日ができなくなったことなどを伝えていました。

この施設では来年春までに、この女性と技能実習生の合わせて4人を受け入れる計画で、外国人の入国停止による影響を懸念しています。

「特別養護老人ホームしらさぎ」の新井浩二 統括事務長は「振り出しに戻ったので残念な気持ちです。人手不足の業界ですが、待ちながら頑張るしかない。来日する予定だった女性の生活面と精神面のサポートも考えたい」と話していました。

留学生「やる気がなくなる」 各地の大学では…

横浜市立大学ではことし、学部や大学院に入学するなどした中国や韓国などからの留学生8人が、入国できないまま、いまもオンラインで授業を受けているということです。

8日に条件付きで留学生の新規入国が認められたことを受けて、大学は先週、8人を対象にオンラインでオリエンテーションを開き、来年以降の受け入れに向けたスケジュールなどについて説明したばかりでした。

大学は今後の留学生の受け入れの見通しが立たず、戸惑っています。

また、交換留学の協定を結ぶ海外の大学にことし8月以降、22人の学生が留学しましたが、留学生を受け入れられない状態が続いているため、協定への影響も懸念しています。

横浜市立大学グローバル推進室の森谷章子 課長は「受け入れを再開できると思ったやさきの入国停止で残念だが、水際対策のためにはしかたない。できる範囲で準備を進め、協定先の大学との関係維持にも努めたい」と話していました。

また東洋大学も、留学生の受け入れが再開されたことを受け、日本に入国出来ないまま過ごしてきた留学生およそ80人の申請を進めていました。

外国人の新規入国が原則として停止になったことから大学は30日、来年1月から3月にかけて入国を予定しているロシアやインドネシアなどからの留学生とオンラインでつなぎ、今後の方針はわかりしだい連絡するとして改めて支援の継続を約束していました。

これに対し留学生からは「受け入れ再開を進めている国もあり、非常に不利に感じています。毎日PCR検査も受けるし、望む書類はすべて出すので、日本で勉強させてほしい。私たちの人生は日本政府にかかっています」とか、「3回フライトを予約して3回ともキャンセルした。やる気がなくなってしまう」などと訴えていました。

国内外のスポーツ大会は

JOCの山下会長は30日、都内で開いた定例会見の中で、12月9日に大阪府で開幕するフィギュアスケートのグランプリファイナルなど今後、国内で予定されている国際大会の対応については「大会自体がどうなるのか。現段階で選手がどう対応するのかなどについての情報を持ち合わせていない」と述べるにとどまりました。

さらに、来年2月の北京オリンピック・パラリンピックへの影響についても「選手や競技団体と情報を共有しながら連携していく」と述べて情報収集を急いだうえで、JOCとして得た情報を共有しながら対応する考えを示しました。