大学の後期授業 7割以上対面は8割超 コロナ禍で学生支援進む

新型コロナの感染者数が減少する中、全国の大学では後期は授業の7割以上を対面で行うと答えたところが8割を超えたことが国の調査でわかりました。
一方、長引くコロナ禍の影響で中途退学や休学をした学生は増加しており、各大学で支援の取り組みが進められています。

文部科学省は、10月上旬に全国の大学や短期大学などを対象に、後期の授業の実施方針を尋ね合わせて1158校が回答しました。

対面授業の割合をみると、
▽「全面的」が36%、
▽「ほとんど対面」が29%、
▽「7割程度」が18%、
▽「半分程度」が14%などとなっていて、
授業の7割以上を対面で行うと答えた大学は全体の83%に上りました。

昨年度の後期授業の調査では45%だったのに比べ、40ポイント近く増えており、国は感染状況が落ち着いていることなどを受け、対面授業を再開する動きが広がっているとみています。

一方で、新型コロナの影響を理由にことし4月から8月までに中途退学や休学をした学生の数は5119人に上り、前の年度の同じ時期の1.6倍以上に増えています。

各大学では、経済面や精神面での支援も進められていて、97%の大学で後期の授業料の納付を猶予する措置をとるとしているほか、
▽修学意欲を支える支援員を配置したり、
▽SNSの相談窓口を開設したりする動きも出ています。

文部科学省では「オンライン授業と併用を続ける大学のうち6割が学部や学年により対面授業の割合に差があると回答しており、キャンパスに通う機会が極端に少なくならないよう、学生1人1人の立場に立って丁寧に対応してもらいたい」としています。

相談員増や部活動・サークル活動再開 100円弁当で支援

長期化したコロナ禍が、いまも学生の精神面や経済面に影を落としているとして、大学では支援の取り組みが進められています。

東京・府中市の東京外国語大学では、ことし春から授業の65%を対面形式に戻していますが、学内の相談窓口を訪れる学生が増加し、予約待ちの状況が続いたため、2人の相談員を3人に増員する日を設けて対応しています。

相談では、「コロナ禍で生活が困窮している」とか、「留学などの活動ができず将来への不安を感じる」という内容のほか、「人と関わる機会が減り孤立感が増している」という声も多いということです。

こうした状況を受けて大学では、学生同士の結びつきを強めてもらおうと、感染対策を講じた上で部活動やサークル活動の再開を進めていて、
▽密にならないよう活動スペースを拡充したほか、
▽団体には検温や消毒、換気の徹底、それに会食をしないことなどを義務づけています。

現在は67%の団体が対面で活動を再開していて、このうち28人の学生が所属する競技ダンス部では、体温チェックや窓を開けての換気など対策をした上で活動を楽しんでいました。

2年生の男子学生は「私たちの学年はオンライン授業が多く、友達を作るのが大変だったので部活動が対面でできるのは非常に大きいです。勉強だけでなく楽しい大学生活がやっとできると感じています」と話していました。

主将を務める3年生の男子学生は「部活は楽しいものですが、感染リスクも伴い1人でも感染者が出れば大会にも影響するので部全体で気をつけています」と話していました。
また、大学が行ったアンケートでは、「経済的不安を感じる」と答えた学生が54%に上っていて、大学では10月から食堂で作った弁当を100円で販売しています。
同窓会の寄付で朝食80食分、夕食120食分が週4日提供されていて、夕食の時間になると販売前から多くの学生が列を作って買い求め、食堂で「黙食」をしながら仲間との時間を楽しむ姿も見られました。

3年生の男子学生は「アルバイトしていた飲食店も時短になって客も来なくなり、収入が減ったのでありがたく思います」と話していたほか、友人と弁当を食べていた3年生の男子学生は「話せなくても誰かと一緒に食べられるのはありがたいです。同じ場所で共有する時間はオンラインの画面越しとは違います」と話していました。

東京外国語大学の武田千香副学長は「留学ができなくなるなど学生生活の計画が狂い、人との関わりを長らく持てなかったことで、漠然とした不安に包まれている印象です。大学は学問の場ですが、人とのつながりや経験の中での学びや成長も大きい。それが1年半出来なかった影響は今も残っているので、関わりを回復できる場を作り、悩みを抱える学生に寄り添って解決方法を一緒に探っていきたいです」と話していました。

学生つなぐ動き

学生同士のつながりで孤立を防ごうという動きは各地の大学で出ています。

この秋から対面授業を増やした山梨県立大学では、ゲームなどのイベントを通じて、学年や学部を超えた学生同士の交流の場を設けています。

サークルの中には、入学から1年半にわたりオンライン授業が中心となった2年生のために、この時期に体験入部を行う動きもあるということです。

また明治大学では、サークル活動の際に学内の施設が使えなかったり、密を避けるために広い場所を借りたりするなど、新型コロナの影響が生じた際に、活動費用の一部を助成する取り組みを始めることにしています。