コロナ支援や 経済再生に向けて その具体的な内容は?

新型コロナで影響を受けた人たちへの支援や経済の再生に向けて、政府は、18歳以下を対象とする1人当たり10万円相当の給付などを含む、新たな経済対策を決定しました。
その具体的な内容をまとめました。

中小企業などへの新たな給付金制度 その中身は

経済対策では、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業などに対して、事業規模に応じ、最大で250万円を支給する新たな給付金制度も盛り込まれました。

給付金は、地域や業種を問わず対象とし、来年3月までの事業継続の見通しを立てられるよう事業規模に応じて支給します。

対象は、一月の売り上げが前年の同じ月などと比べて50%以上減少した事業者だけでなく、30%以上減少した事業者にも支給されます。

これまでの持続化給付金や、飲食店の取引先などに支払う支援金にはなかった要件の緩和です。
このうち、50%以上減少した場合には、年間の売り上げが1億円未満の事業者には最大100万円、1億円以上5億円未満の事業者には最大150万円、5億円以上の事業者には最大250万円とする方針です。

また、30%以上減少した場合には、1億円未満の事業者に最大60万円、1億円以上5億円未満の事業者には最大90万円、5億円以上の事業者には最大150万円とする方針です。

また、フリーランスを含む個人事業主も対象となり、売り上げが50%以上減少した場合には最大50万円、売り上げが30%以上減少した場合には最大30万円とする方針です。

ことし2月まで申請を受け付けた中小企業向けの持続化給付金では、不正受給が相次いだことから、政府は不正防止のため、商工団体や金融機関などによる事前確認を行う方針です。

印刷会社「一時的な支援ではとても足りない」

福岡県久留米市にある従業員が30人の印刷会社は、売り上げの7割を広告チラシやイベントポスターなどが占めていますが、新型コロナの影響で受注が大きく落ち込み、会社全体の売り上げはコロナ禍前と比べて4割減少しました。

ことし9月末で緊急事態宣言が解除されたことで、売り上げは回復しつつありますが、それでもコロナ禍前の水準には戻っていません。

この印刷会社では、90万円の給付金を受け取れる見通しです。

給付金は、印刷機械のリース代などの経費の一部に充てるつもりですが、一時的な支援ではとても足りないといいます。

五味耕太郎社長は「補填(ほてん)という形では全然足らない状況です。中小企業は地元の雇用を守るという義務があると思っていますので、一発で給付金という形よりも地域として中小企業が収益をあげていけるような環境づくりをしてもらいたい」と話しています。

飲食業者「客の戻り十分ではない 継続的な支援を」

東京都内の飲食業者からは歓迎する一方、依然、客の戻りが十分ではないとして継続的な支援を求める声が出ています。

東京・江東区にあるバーでは、緊急事態宣言による時短要請や酒類の提供停止を受けて、一時、店を休業するなど、ことしに入ってからの売り上げが感染拡大前の半分以下に落ち込んでいます。

このバーでは、時短の協力金や雇用調整助成金も活用して店舗を維持し、宣言が解除されたあとは深夜営業を再開しましたが、客数は依然、感染拡大前の7割ほどにとどまっているということで、先行きの見通せない状況が続いています。

今回、政府の経済対策に新たな給付金が盛り込まれたことについて、バーの経営者の伊藤大樹さんは「一時的でも給付金があるのはありがたい」として歓迎する一方、「ことしは忘年会を控える人が多かったり、今後の感染状況も分からなかったりと、不安はとても大きいです」と話し、中小の事業者への継続的な支援を求めました。

原油高で異例の対策

レギュラーガソリンの小売価格の全国平均は、今月15日時点で1リットル当たり168.9円となり、1年半で40円以上値上がりし、2014年以来の高値水準が続いています。

こうした中、経済産業省はガソリン価格の高騰がコロナ禍からの経済回復の妨げになるとして、小売価格の上昇を抑えるため、石油元売り会社に補助金を出す異例の対策に乗り出します。
石油元売り会社は、輸入した原油からガソリンを精製して各地のガソリンスタンドに卸し、最後に消費者のもとに届けられます。

今回の新たな制度では、ガソリンの小売価格の全国平均が1リットル当たり170円を超えた場合、石油元売り会社に協力を求め、ガソリンスタンドへの卸売り価格を引き下げてもらいます。

卸売り価格を引き下げることで小売価格の上昇を抑えるねらいです。

そして、石油元売り会社が卸売り価格を引き下げた分の資金を政府が事後に補助する仕組みです。
具体的には、小売価格の全国平均が1リットル当たり171円になった場合は1円、172円では2円、それぞれ政府が補助します。

また175円以上となった場合の補助額は一律で5円となります。

ただ、小売価格はガソリンスタンドがそれぞれの経営判断に基づいて決定します。

このため、例えば経営環境の厳しいスタンドが卸売価格の引き下げ分を小売り価格に反映させない可能性もあります。

経済産業省は、各地のガソリンスタンドの小売価格をチェックすることにしていて価格が下がっていないケースを確認した場合には「消費者の負担を軽減するという制度の趣旨を説明して理解を求めていく」としています。

対策は年内の早い段階で開始し、来年3月まで続ける方針で、事業費は今年度予算の予備費も活用して数百億円規模を想定しています。

また、灯油や軽油、重油についても同様の仕組みで対策をとる方針で、最大で1リットル当たり5円まで補助することにしています。

「トリガー条項」の発動を求める声も

原油高対策をめぐっては、野党の一部から税制面での負担軽減策として「トリガー条項」の発動を求める声も上がっています。

ガソリンには消費税に加えてガソリン税がかけられています。

ガソリン税のうち、およそ半分、1リットル当たりおよそ25円は本来の税額より上乗せされて課税されています。

ガソリン価格が高騰したときにこの上乗せ部分の課税を停止して小売価格を引き下げるのが「トリガー条項」です。

トリガー条項はガソリン価格が3か月連続で1リットル当たり160円を超えた場合に発動される仕組みです。

しかし、東日本大震災の震災の復興財源を確保するため、2011年のいわゆる、震災特例法によってこの条項の発動は凍結されています。

凍結を解除するには法改正が必要で発動までに時間がかかると政府を説明しています。

介護現場「人手不足解消のためには さらに対策が必要」

介護、保育などの現場で働く人の収入についても、3%程度引き上げるため、必要な措置をとるとしました。

介護現場も処遇改善を歓迎する一方、人手不足を解消するためにはさらに対策が必要だという声も聞かれました。

千葉県柏市の特別養護老人ホームでは75人の高齢者に対し、介護士や看護師など合わせて65人が働いていますが、体制に余裕はないといいます。

中でも、夜間勤務ができる職員は限られていて、多いときには1人が月に7、8回夜勤に入っているということです。

少ない人数で排せつの介助をし、転倒や体調が急変する高齢者がいないか、ひと晩中、気を配るため職員の負担は小さくありません。

有給休暇も、法律で義務づけられた年5日を取得するのが精いっぱいで、施設を運営する社会福祉法人では、新たに3人から6人採用して、休みを増やしたり夜勤の回数を減らしたりしたいと考えています。

しかし、初任給が18万円と、ほかの業種よりも低いことなどから、求人を出してもなかなか希望者が集まらないということです。
運営する社会福祉法人の宇佐見さくら施設長は「排せつや入浴という生活の支援を行い、人の人生に関わる仕事なので大変だということや、それに見合う給料なのかを考えると、就職に二の足を踏んでしまうのではないか。今回の処遇改善はすごくうれしいが、9000円上がって応募が殺到することはないと思うし、まだまだ課題は多いと思う」と話していました。

介護職員の処遇と人手不足の現状は

介護職員の給与は、国から自治体を通じて支払われる「介護報酬」で賄われています。

介護保険制度では、提供するサービスごとに報酬が定められていて、サービスへの対価として介護事業所に支払われます。

事業所は、この報酬の中から人件費や必要経費をやりくりするため、介護報酬が増えないかぎり、職員の給与を大幅に引き上げることは難しくなっています。

介護報酬は3年に1度見直され、職員の処遇改善のための加算も拡充されてきました。

それでも介護分野の職員の平均賃金は全産業の平均より月収換算で6万円近く低く、慢性的な人手不足が課題となっています。

厚生労働省によりますと、仕事を求めている人1人に対して何人の求人があるかを示す有効求人倍率は昨年度、すべての職業の平均が1.01倍だったのに対して、介護職員は3.88倍と大幅に上回っています。

厚生労働省の推計では、高齢化がピークを迎える2040年度には280万人の介護人材が必要となる見通しで、2019年度と比べてさらに69万人を確保しなければなりません。

深刻な人手不足の解消には処遇の改善が急務だと指摘され続けてきました。

保育士や保育所を運営する事業者からは歓迎の声

収入を3%程度、月額およそ9000円引き上げるとする対策について、保育士や保育所を運営する事業者からは歓迎の声が上がっています。

今週、保育士を対象にした転職や就職を支援するイベントが開かれました。

保育所を運営する15の事業者などがブースを設け、およそ90人が訪れて仕事の内容や福利厚生などの説明を聞いていました。

今は別の仕事をしているものの、保育士に復職する予定だという20代の男性は、処遇改善について「保育士は子どもと遊んでいればいいと思われているかもしれないが、子どもが帰ったあとの事務作業もあり、体力勝負でもある。保育の仕事への評価の表れとして賃上げをしてくれるのは本当にありがたいと思うし、モチベーションが上がるのではないか」と話していました。
また、認可保育所で働いている50代の女性は「子どもの家庭も多様化していて対応が難しく、保育の質の向上も求められるので、限られた時間の中ですべてやろうとするとひずみが起き、離職していく人もいる。今回の処遇改善は微々たる額ではあるが、社会が保育の仕事を理解し業務の重さを考えてくれている証しだと感じる」と話していました。

保育所を運営する側からも「ほかの業種と比べると保育の仕事は賃金が低めで、少しでもいい給与設定をしたいと考えているので、今回の公定価格のアップはありがたい話だ」と歓迎する声が多かった一方で「月9000円という数字が1人歩きしている」という懸念も聞かれました。

ある事業者は「みんな賃金が9000円上がると思っているだろうが、月給が上がると事業者が負担する厚生年金や健康保険といった社会保険料の額も増えるのでその事情を職員に理解してもらわないといけない。国にも9000円の詳細を説明してほしい」と話していました。

保育士の処遇は

認可保育所や認定こども園などで働く保育士の給与は、国や自治体からの補助金や保護者が負担する保育料からなる「運営費」で賄われています。

運営費は、国が定める「公定価格」に基づいて決められていて、定員数や子どもの年齢、それに所在地などによって、それぞれの施設に決まった額が配分されます。

これまで、リーダー的な役割を担う中堅の保育士に加算するなど、さまざまな処遇改善が行われてきましたが、去年の保育士の平均賃金は月収換算で30万3000円と、全産業の平均と比べて5万円近く低くなっています。

厚生労働省によりますと、保育士の資格を持っている人は2019年時点で160万人余りいますが、実際に保育士として働いているのは62万人余りにとどまっているということです。

Go Toイートは

経済対策では、外食需要を喚起するGo Toイートについて、利用期限を延長できるようにします。

去年10月に始まったGo Toイート。

都道府県ごとのプレミアム付き食事券と、予約サイトを通じて飲食店を利用した消費者へのポイント還元があり、食事券の利用と、たまったポイントを使った予約の期限は最長でことし12月までとなっていました。

一部の自治体では、新型コロナウイルスの影響で食事券の販売を停止しています。

このため、農林水産省は今回の経済対策で地域の状況に応じて利用期限を延長できるようにします。

具体的には、都道府県ごとのプレミアム食事券については、販売を再開してから、3か月程度利用できるようにします。
また、オンライン予約でたまったポイントを使って予約できる期限についても、最後に食事券の販売を再開した自治体の利用期限に合わせる形で、全国一律で延長できるようにするとしています。

実際に、いつまで延長するかは都道府県やオンライン予約サイトの事業者によって異なるということで、農林水産省は、それぞれのホームページなどを確認してほしいとしています。

そして、これらの期間延長に伴う必要な費用を、経済対策として補正予算に盛り込む方針です。

農林水産省によりますと、19日の時点で東京・神奈川・滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良の7つの都府県では食事券の販売を停止しています。

また、東京・大阪・奈良では、すでに販売した食事券や、付与されたポイントについて利用しないよう呼びかけています。