ワクチン3回目接種 2回目から“6か月以降”も 前倒し可能に

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について、厚生労働省は2回目の接種から8か月以上間隔を空けることを標準としつつ、6か月たった人も、自治体の判断で対象とすることを決めました。

標準は“8か月以上間隔”

厚生労働省は、15日開いた専門家でつくる分科会で、現時点で国内で唯一3回目の接種が承認されているファイザーのワクチンについて、2回目の接種から8か月以上間隔を空けることを標準としつつ、6か月たった人も自治体の判断で対象にする案を示しました。
これまで厚生労働省は、欧米の多くの国が2回目の接種から8か月以上たって3回目の接種を始めていたことなどから、間隔をおおむね8か月以上とする方針を示していました。

しかし、ファイザーのワクチンの感染予防効果が、2回目の接種から半年後までに半減したという海外のデータがあることや、国内でも11日、間隔を少なくとも6か月とすることを条件に3回目の接種への使用が承認されたことなどから前倒しの接種を可能にすることにしたということです。
自治体関係の委員からは、「8か月以上の間隔を想定して準備をしてきた自治体では、住民から『6か月たっても接種券が届かない』と不満も出るのではないか」といった懸念も示されましたが、提案は了承されました。

また、3回目の接種を特に推奨する対象として、
▼高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクの高い人、
▼医療従事者
▼高齢者施設の職員などとすることも決まりました。

なぜ8か月以上から6か月以上に?

3回目の接種について、これまで厚生労働省は、欧米で2回目の接種から8か月以上たって3回目の接種を始める国が多かったことに加え、3回目の接種を行う体制を確保できていない自治体も少なくないことなどから、間隔をおおむね8か月とする方針を示していました。

一方、先月、ファイザーのワクチンの3回目の接種をめぐって、海外で新たなデータが相次いで報告されました。

2回目の接種から1か月以内と、5か月後以降を比べたアメリカの研究では、感染を予防する効果が▽16歳から44歳では89%が39%に、▽45歳から64歳では87%が50%に、▽65歳以上では80%が43%に低下したとされています。
一方、3回目の接種の効果を示す新たなデータも報告されました。

イスラエルで、3回の接種をしたグループと、2回接種をしたグループの入院した割合を比較したところ、接種したグループでは10万人当たり14.4人が入院したのに対し、接種していないグループは220.8人で、3回目の接種によって入院する割合が93%減少したとされています。

また重症化と死亡を予防する効果についても、
カタールでの研究で、
2回目の接種から1か月後は96%でしたが、
6か月後には88.9%、
7か月後以降には55.6%に減少したというデータも報告されました。

さらに今月11日には、ファイザーが提出した海外の治験のデータなどをもとに2回目の接種から少なくとも6か月以上間隔を空ければ、国内で3回目の接種に使用することが承認されました。

こうした状況から、厚生労働省は、3回目を接種できる体制が整った自治体では、感染状況などに応じて接種を行えるよう方針を改めることにしました。

3回目 種類異なるワクチン使用も了承

さらに3回目の接種の際に、2回目までと種類が異なるワクチンの使用を認めている国があり、一定の有効性や安全性も確認されているなどと報告されました。

これを受け、分科会は、2回目までにモデルナやアストラゼネカのワクチンを接種した人が、3回目にファイザーのワクチンを接種できるようにすることも了承しました。

自治体からは“準備への影響大きい”

厚生労働省は、2回目の接種から8か月以上間隔を空けることを標準としつつ、6か月たった人も、自治体の判断で対象とすることを決め、自治体からは準備業務への影響が大きいといった声が出ています。

東京 目黒区では2回目の接種からの間隔が8か月以上になることを基準に3回目の接種について対象者への案内や接種会場に必要な人員の確保などの準備を進めてきました。

ただ、接種の間隔が6か月たった人も対象とすることになれば、来年以降に始まる予定だった高齢者の3回目の接種が年内にも始まるスケジュールとなり、区では、来月の接種対象者が当初の予定の10倍以上に増えるとしています。

目黒区新型コロナ予防接種課の吉田武広課長は「準備が非常に厳しくなります。きょうも区の医師会に電話して接種に携わる人員が前倒しで必要になるかもしれないことについて協力をお願いしました。関係機関と調整しながら対応していきますが国にはもっと早く方針を知らせてほしいです」と話していました。

区では区民からの問い合わせに答えるコールセンターの人員を2倍近くに増やすなどして3回目の接種に関わる業務に対応していきたいとしています。

また大阪 堺市は、2回目の接種から8か月以上間隔を空けることを前提とした場合、来年3月ごろに高齢者の接種のピークを迎えると想定して、会場の確保や接種券の発送作業を計画していました。

堺市では引き続き、高齢者への接種を来年1月以降、始めることにしていますが、こうした準備を前倒しで進める必要があるということです。

ワクチン接種の準備を進めている堺市感染症対策課の稲葉和紀参事は、「接種対象の時期が早まったことで、年明けすぐから多くの高齢者などを対象にした接種が始まることになる。国からの説明を踏まえて、接種券の準備だけでなく、現在、規模を縮小している集団接種会場の新たな開設など準備を急ぎたい」と困惑した様子で話していました。