コロナ 海外で感染再拡大 日本での可能性は?専門家分析まとめ

「ヨーロッパは再びパンデミックの中心地になった」
WHOヨーロッパ地域事務局は4日、管轄するヨーロッパとロシア、中央アジアなど53か国で先週確認された感染者の数は6%、死者の数は12%、いずれも前の週よりも増加したと発表し、クルーゲ事務局長は、感染再拡大について強い懸念を示しました。

日本での再拡大の可能性はあるのか?予防に向けた動きはどうなっているのか?
専門家の話をまとめました。

ドイツ 1日の新規感染者数が最多に

ドイツで感染症対策にあたる政府の研究機関は5日、ドイツ国内の新型コロナウイルスの新規感染者が3万7120人に上ったと発表しました。

去年春に感染が拡大して以降、1日の感染者数としては最も多く、2日連続で過去最多を更新しました。

亡くなった人の数は154人となっています。
ドイツでワクチンの接種を終えた人の割合は人口の66.9%で、ワクチンの接種に消極的な人もいて、このところ接種率が伸び悩んでいます。

感染が再び拡大するなか、集中治療室で手当てを受ける患者も多くなっていてシュパーン保健相が「第4波が本格的に到来した」と述べるなど、ドイツ政府は危機感を強めています。

ロシア 1日の死者が最多に

ロシアでは、新型コロナウイルスの1日あたりの感染者の数が、政府の発表でこのところおよそ4万人に上っているうえ、4日には1日の死者がこれまでで最も多い1195人となりました。
ロシア政府によりますと、子どもが感染して亡くなるケースも増えているほか、一部の地方都市では病床の使用率が90%以上になるなど医療体制のひっ迫が伝えられているということで、政府内で危機感が広がっています。

ロシアでは新型ウイルスの感染拡大を防ぐため、11月7日までを企業などの休業日に定めていて、プーチン大統領は人口の3割程度にとどまっているワクチンの接種を国民に強く呼びかけています。

日本の感染状況は

一方、日本では、新規感染者数を1週間平均で比較すると、多くの都道府県で減少が続き、全国の感染者数もことしに入って最も少ない水準が続いています。

NHKは各地の自治体で発表された感染者数を元に、1週間平均での新規感染者数の傾向について前の週と比較してまとめました。
全国では、ことし8月末から新規感染者数が減少に転じ、
▽先月7日までの1週間は前の週に比べて0.55倍、
▽先月14日は0.61倍、
▽先月21日は0.62倍、
▽先月28日は0.67倍、
▽4日まででは0.80倍と10週連続で減少しています。

1日当たりの新規感染者数はおよそ212人と、ことしに入って最も少ない水準となっています。

また、新規感染者数は31の都道府県で減少傾向が続く一方、千葉県や岐阜県など16の県では低い水準ではあるものの、下げ止まる傾向が見られています。

日本の感染状況 専門家の分析は

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は現在の感染状況について「緊急事態宣言が解除されたあとも非常にいい形で減少が見られている。感染者数の増加が1週間、2週間続く状況が見られてきたら、リバウンドのリスクが高まっているということで注意していかなければいけないが、いまはまだ下げ止まりのような状態が続いていると考えてよいと思う。この低くなった感染者数をどれだけ維持できるかが大事になる」と話しています。

海外の感染再拡大「あしたの日本の現象だと考えて」

ワクチン接種が進んだ国でも感染者の増加が見られることを踏まえて、舘田教授は「あしたの日本を見ているような現象だと考えておかなければならない。3回目の接種を進めていくのが大事な方向性だ」と指摘しました。

また、初期の段階の患者の治療に使える飲み薬が初めて、イギリスで承認されたことについては「非常に期待される薬の1つだ。ワクチンが出てきて検査も充実してきている。そしてさらに飲み薬が出てくると、まさにインフルエンザの診療と同じようなことが新型コロナでもできるようになってくる。この薬に続くような薬の開発が続いているが、予防と診断と治療がそろって、落ち着いた形で対応できる状況が見えてくるのではないか」と話しています。

“ワクチン3回目接種”“ 飲み薬” 日本の対応は

岸田総理大臣は、今月1日、新型コロナウイルスの対応について「今月前半までに新型コロナ対応の全体像を示す。入院を必要とする方が確実に入院できる体制を今月末までに整備する。すべての自宅・宿泊療養者に対し、陽性判明当日か、遅くともその翌日には医師などの専門家が連絡を取る即応体制を構築する」と述べました。

そして「3回目のワクチン接種を12月から開始するとともに、無料検査の範囲を大幅に拡大する。そして早期治療の切り札である飲み薬について年内の実用化を目指し、承認された薬について必要量を確保する。これまでの新型コロナ対応を徹底的に検証し、感染症危機管理の抜本的強化、司令塔組織の創設にも取り組んでいく」と述べました。

専門家「基本的な感染対策 もうしばらく」

舘田教授は、ワクチン接種が進んだ国でも感染者の増加が見られることについて「ワクチン接種から時間がたって感染防御効果が下がり、ブレイクスルー感染や一定の人での重症化が見られている。また、ワクチンを接種したことと、感染状況が落ち着いてきたことで、気持ちが緩み、マスクをつけないで食事をして騒いでしまうなど、基本的な感染対策が取りにくくなっている状況があると思う」と述べました。

そのうえで、「日本ではまだ、感染状況が落ち着いているが、市中にウイルスは潜んでいると考えられるので、基本的な感染対策はもうしばらく続けなければいけない」と指摘しました。