大学から約2億円流出させたか 日大元理事ら 背任容疑で再逮捕

日本大学の付属病院の建て替え工事をめぐる背任事件で逮捕された、大学の元理事と大阪の医療法人の前理事長が、医療機器の調達に関する取り引きでも大学から医療法人側におよそ2億円を流出させたとして、背任の疑いで東京地検特捜部に再逮捕されました。
特捜部は、元理事らがみずからの利益を得るため、複数のルートで資金を流出させたとみて実態解明を進める方針です。

再逮捕されたのは、日本大学の理事だった井ノ口忠男容疑者(64)と、大阪市に本部がある大手医療法人「錦秀会」の前理事長、籔本雅巳容疑者(61)です。
東京地検特捜部によりますと、2人はことし、日本大学医学部附属板橋病院で使用するMRIなどの画像診断装置や、電子カルテシステムを合わせて23億円余りで調達した際、必要がないのに籔本前理事長が実質的に経営する会社などを介在させることで、大学におよそ2億円の損害を与えたとして背任の疑いが持たれています。

井ノ口元理事は、大学の子会社の「日本大学事業部」の役員として、納入業者の選定や契約に関わっていたということです。

また、特捜部は同じ病院の建て替え工事をめぐって、大学から都内の設計事務所を通じて前理事長側に2億2000万円を流出させたとして27日、背任の罪で2人を起訴しました。

特捜部は、井ノ口元理事らがみずからの利益を得るため、複数のルートで資金を流出させたとみて、不透明な資金の流れの全容解明を進めるものとみられます。

関係者によりますと、井ノ口元理事は再逮捕の容疑について、これまで周囲に、大学には損害を与えておらず背任には当たらないなどと説明しているということです。

日大学関係者 “医療機器調達の経緯 不透明な点”と証言

日本大学医学部附属板橋病院の内部事情に詳しい大学関係者はNHKの取材に対し、医療機器の調達の経緯には、不透明な点があったと証言しています。

この関係者は「井ノ口元理事が、医療コンサルの業者と一緒に高額な医療機器を売り込みに来て、予算化もされていないのに『理事長の了解を得ている』ということで、調達することになったと聞いている。高額な医療機器は1年半とか2年前に本部の財務部に予算申請しないと買えないもので、急いで手続きを進めることは考えられない」と話しています。

「日本大学事業部」資金流出を主導か

特捜部は、いずれの事件も井ノ口元理事が、大学が100%出資する子会社「日本大学事業部」の役員として大学の契約や調達に関わり、資金の流出を主導したとみています。

「日本大学事業部」の業務は、11年前の設立当初は学内の損害保険の代理業務や自動販売機の管理などに限られていました。

しかし、関係者によりますと、井ノ口元理事が経営の実権を握ると、大学の物品の調達や取引先との契約の交渉などにも幅広く関与するようになったということです。

井ノ口元理事は田中英壽理事長と関係が深く、事業部では「理事長付相談役」などの肩書で活動するなどして、社内には逆らえない雰囲気があったということです。

3年前の平成30年には、「日本大学事業部」が随意契約で物品を調達できる上限額が1億から3億円に引き上げられるなど裁量が拡大されました。

この見直しについて、事業部の権限強化を懸念する声が一部からあがっていました。

NHKが入手した音声データによりますと、学内の調達業務の担当者を集めた会議では、日大本部の幹部が「事業部一辺倒で大丈夫なのか。事業部にいろいろお願いしても遅れることが多く、現状より費用が高くなるケースがあるという気持ちが、皆さんあると思う」と述べています。

事業部の運営に詳しい大学関係者はNHKの取材に対し、「途中で井ノ口元理事が事業部に入ってきてから、自分の利益、自分たちの利益ということでいろんなものを利益誘導し始めた。そのあたりが、事業部がおかしくなって行ったきっかけだと思う」と証言しています。

日大内部からも監督責任追及する声

この事件では、日本大学の内部からもチェック機能を疑問視し、監督責任を追及する声が上がっています。

文理学部の紅野謙介学部長は10月12日、学部長のメッセージとしてホームページで学生や卒業生に向けたコメントを公表しました。

この中で紅野学部長は「アメリカンフットボール部の悪質タックル問題のときも、大学は厳しい批判を浴びたが、今回はそれ以上に重大かつ悪質な案件だ。学部の教職員一同を代表して皆さんと今回の事件に対する怒りと嘆きを共有したい」としています。

そのうえで「事件の舞台と指摘される『日大事業部』の評価は地に落ちたと言える。内部の仕組みや監査はどうなっていたのか」として監督責任などの追及を求めています。

NHKの取材に対し、大学関係者の1人は「学校法人は第一に教育を実践する場であり、不正を疑われるような行為はあってはならない。事件をきっかけに、不正に関与するような人はすべて排除し、健全な学校運営をしてほしい」と話しています。

日大「事実関係の調査継続」

井ノ口元理事が再逮捕されたことを受けて日本大学は27日、「誠に遺憾で、改めて深くおわび申し上げます。事態を厳粛に受け止め、学内に設置した外部の弁護士を含めた調査チームによる事実関係の調査を継続し、事件の原因究明と再発防止を図り、信頼回復に努めてまいります」などとするコメントを発表しました。