きょうASEAN首脳会議 ミャンマー情勢や南シナ海問題など議論へ

ASEAN=東南アジア諸国連合と、日本、アメリカ、中国などが参加する、一連の首脳会議が26日から始まり、クーデター以降混迷を深めるミャンマー情勢や、中国が海洋進出の動きを強める南シナ海の問題などについて意見が交わされる見通しです。

一連の会議は、3日間の日程でオンラインで開かれます。

ことしは、ASEANが、加盟国のミャンマーについて、クーデターで実権を握った軍のトップを招かない、異例の措置をとったのに対し、ミャンマー軍は、代わりに招かれた外務省の高官の出席には応じられないとして、会議を欠席する可能性も示唆しています。

初日の26日開かれるASEAN加盟国の首脳会議では、ミャンマー情勢をめぐって、軍と民主派勢力との対話を仲介する特使の派遣など、平和的な解決を探るための議論が行われます。

中国が海洋進出の動きを強める南シナ海の問題については、紛争を防ぐためのルール作りの進捗を確認するとともに、アメリカが中国包囲網づくりともいえる動きを進めていることへの対応についても、意見が交わされる見通しです。

3日間の日程では、ASEANと、日本、アメリカ、中国など各国との首脳会議が個別に開かれるほか、27日にはオーストラリアやインド、それにロシアなども加えた18か国が参加する東アジアサミットが予定されています。

安全保障や貿易などの問題を幅広く議論するなかで、アメリカと中国が地域への影響力の拡大とASEAN各国の取り込みをねらって、せめぎ合うことが予想されます。

南シナ海めぐる中国の最近の動き

中国は、南シナ海のほぼ全域の権益を主張し、ASEANに加盟している国々とも領有権を争っています。

造成した人工島に滑走路やレーダー設備、兵舎とみられる建物を建設するなど、軍事拠点化を進めているほか、石油や天然ガスなどの海洋資源それに漁業資源をめぐって、ほかの国や地域との摩擦が続いています。

最近の事例としては、ことし3月、フィリピンの排他的経済水域に中国の漁船およそ220隻が集結して停泊し、フィリピン政府が再三にわたり中国に引きあげるよう要求したにもかかわらず一部はその後も海域におよそ2か月とどまり続けました。

これを受けてフィリピンの外相が怒りをあらわにし「中国よ、消え失せろ」などとSNS上に投稿した結果、中国から非難され、謝罪に追い込まれるという事態も起きています。

またマレーシアではことし5月、中国の軍用機16機がボルネオ島沖の南シナ海の領空に侵入したとして、マレーシア空軍の戦闘機が緊急発進しました。

このほか10月には、中国の調査船がボルネオ島沖のマレーシアの排他的経済水域に侵入し、活動を行ったとして、マレーシア政府が国内に駐在する中国の大使を呼び抗議したことを明らかにしています。

南シナ海で中国をけん制する欧米の艦艇の動き

南シナ海では、欧米の艦艇が相次いで展開し、南シナ海のほぼすべての権益を主張して人工島などの軍事拠点化を進める中国へのけん制を続けています。

アメリカは、中国が主権を主張する南シナ海の海域で、アメリカ海軍の艦艇を航行させる「航行の自由」作戦を続けていて、9月も駆逐艦を航行させたほか、ことし4月には、空母「セオドア・ルーズベルト」を中心とする空母打撃群が南シナ海に入って訓練を実施しました。

また、アフガニスタンからの軍の撤退に合わせて、周辺に展開していた空母「ロナルド・レーガン」を移動させ、9月から、一時、南シナ海の海域に展開させました。

イギリスはアメリカと歩調を合わせ、最新鋭の空母「クイーン・エリザベス」を中心とする打撃群を、ことし7月と10月、南シナ海の海域で数日かけて航行させました。

フランスも、ことし2月、攻撃型の原子力潜水艦を南シナ海で巡回させたほか、5月には、揚陸艦とフリゲート艦がオーストラリアのフリゲート艦と3隻で南シナ海を航行しながら訓練を行いました。

さらに、ドイツも、ことし8月、フリゲート艦「バイエルン」をドイツ北西部からインド太平洋地域に向けて航行させ、ことし12月には、南シナ海を通過させる計画です。

中国は、こうした欧米の艦艇の動きに神経をとがらせていて、中国海軍が南シナ海で軍事訓練を実施したなどと発表して、欧米をけん制しています。

ASEAN各国の間では、世界各国から南シナ海に艦艇が集まることは、南シナ海が中国のものではないというメッセージになると好意的に受け止める声がある一方で、中国を過度に刺激する行動は慎むべきだとして緊張の高まりを懸念する声も上がっています。

ASEAN 経済面では中国が圧倒的な存在感

ASEANでは、中国が各国との間で貿易や投資を拡大し、経済面で圧倒的な存在感を示しています。

ASEANにとって中国は最大の貿易相手国で、JETRO=日本貿易振興機構のまとめによりますと、去年1年間の中国との貿易の総額は5200億ドルあまりに上っています。

これは10年前と比べて2倍あまりに増え、ASEANの貿易総額全体の19%を占めるまでに拡大しています。

地理的に近い上、FTA=自由貿易協定があることで貿易が拡大しています。

国別で見ると中国との貿易額が全体に占める割合は▼ミャンマーが31%、▼ラオスは28%、▼カンボジアは26%で、貿易の多くを中国に依存する国が少なくありません。

また、中国はASEAN各国への投資も加速させています。

タイでは、工場進出など中国からの直接投資の金額が去年1年間で557億バーツ、日本円にしておよそ1900億円となり、5年前と比べて2倍近くに増えました。

中国のタイへの直接投資の金額は、トップの日本に迫る規模に拡大しています。

さらに中国は、ASEAN各国が参加するRCEP=東アジアを中心とする地域的な包括的経済連携に参加することを決めていて、ASEANとの経済的な結びつきは一段と深まることが予想されています。

ASEANを舞台に米中の「綱引き」活発化

対立を深めるアメリカと中国はそれぞれの国が政権幹部をASEANの加盟国に相次いで派遣し、ASEANを舞台にした米中の「綱引き」が活発化しています。

アメリカからはことし7月、オースティン国防長官がシンガポールとベトナム、それにフィリピンを訪問したほか8月には、ハリス副大統領もシンガポールとベトナムを訪問しました。

南シナ海で中国が軍事的な活動を活発化させていることに警戒を強めるアメリカとしては、ASEAN加盟国との連携を強化する姿勢を示して中国をけん制する狙いがあるものとみられます。

これに対し、中国からは、9月、王毅外相がベトナムとカンボジア、それにシンガポールを訪問しました。

王外相は、ベトナムでは共産党トップと会談して、両国の強固な関係をアピールしたほか、来年、ASEANの議長国を務めるカンボジアでも関係の強化を確認しました。

中国としてはアメリカがこの地域への関与を強める動きに対抗する狙いがあるとみられます。

米中がせめぎ合う状況に対してASEANの加盟国の間では▼アメリカの介入が海洋進出を強める中国へのけん制になるという期待がある一方で、▼経済的な結びつきから中国との良好な関係を保ちたいという思いもあり、両大国の対立が深まることに懸念を強めています。

ミャンマー情勢 専門家「ASEANは軍への圧力強めるべき」

今回の首脳会議でASEANは、ミャンマー軍と民主派勢力の対話を仲介するASEANの特使の受け入れに、軍が協力的な姿勢を示さなかったとして、軍のトップを招かないことを決めました。

ASEANは、内政不干渉と全会一致を原則としていることから、ミャンマー国内の暴力を止める手立てをなかなか打てず、加盟国の間には焦りが広がっていました。

今回の決定について、インドネシアの元外交官で、現在はインドネシア戦略国際問題研究所の上級研究員を務めるリザール・スクマ氏は「ASEANがみずからの信頼を回復するためであり、ミャンマー軍からの協力を引き出すための圧力だ。ASEANとしては、ある種の制裁に相当する、初めての措置と言える」と指摘しました。

その上で「それでもミャンマー軍の対応が不十分な場合は、ASEAN加盟国としての資格を凍結し、民主派の政治指導者らでつくる国民統一政府をミャンマーの代表として認めることも検討すべきだ」と述べ、ミャンマー軍が非協力的な姿勢をとり続ける限りASEANはさらに圧力を強めるべきだと強調しています。

また、インド太平洋地域でアメリカやオーストラリアなどが安全保障面での連携を加速させ、中国が反発していることについてスクマ氏は「ASEANは、アメリカや中国にこの地域を競争の場として利用されないよう、ASEANの自治の重要性について共通の立ち位置を見いだす必要がある」と述べ、国際情勢の変化に対応した地域の共同体としての役割を改めて検討する必要があると訴えています。