船の温室効果ガス「2050年までに排出量実質ゼロ」国交省提案へ

貨物の輸出入など、国際海運に携わる船舶の温暖化対策について、国土交通省は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を、IMO=国際海事機関に提案する方針を固めました。
アメリカなどと共同で提案する見通しで、実効性を持たせるための技術開発が課題になります。

日本など各国は2050年までに国内の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を打ち出していますが、貨物の輸出入など国際海運に携わる船舶の温暖化対策については、国連の専門機関、IMO=国際海事機関が取り組むことになっています。

IMOが3年前に採択した戦略では、温室効果ガスの排出量は2050年までに2008年と比べて半分に減らすとしていますが、国土交通省は、11月開かれるIMOの委員会で、2050年までに実質ゼロとする目標を提案する方針を固めました。

国際海運をめぐっては、ことし4月、アメリカも実質ゼロにする目標を提言していて、国土交通省の提案はアメリカなどと共同で行われるということです。

一方で、船の温暖化対策については、現時点で2050年に実質ゼロを達成できる技術は世界的に確立しておらず、目標が採択されても形骸化するおそれもあります。

国は、10年間で350億円規模の技術開発支援を行う予定で、二酸化炭素を排出しないアンモニアや水素によるエンジンの開発などを急ぐことにしています。

国際海運の脱炭素の現状

IEA=国際エネルギー機関によりますと、2018年時点の国際海運からの二酸化炭素の排出量はおよそ7億トンで、世界全体の2.1%にあたり、その量はドイツ一国分に匹敵します。

各国が国内の温室効果ガスの削減を目指す中、国際海運でのさらなる削減を求める声も強まっていて、ことし4月にアメリカが2050年までの脱炭素を目指すべきだと表明したほか、9月にはイギリスも同様の表明を行いました。

また、10月中旬に開かれた国連の「持続可能な交通のための会議」でも、グテーレス国連事務総長が各国に対して、海運の脱炭素への対策を求めたということです。

海運の温暖化対策に詳しい神戸大学大学院の長谷部正道教授は、「地球温暖化対策に取り組んでいかなくてはいけないという強い意識が、特に欧米諸国を中心に覆しがたい大きな潮流になっている。国際海運についても、特別扱いをやめるべきという流れがあり、IMOが社会的要請を踏まえ迅速な対応ができるかが大きなポイントになる」と指摘します。

その上で、日本の役割について「日本には世界的にトップを走る海運会社や造船会社があり、IMOでもここ数年は日本が議論をリードしてまとめてきた。2050年の脱炭素の目標策定の実現に向けて、欧州諸国と協力して、リーダーシップを果たしていくことが求められる」と話していました。

海運業界や国が技術開発進める

日本の海運大手も温暖化対策の目標として、2050年までに▽日本郵船と▽商船三井が温室効果ガスの排出量を実質ゼロに、▽川崎汽船が2008年の半分にするという目標を掲げ、技術開発などの取り組みを進めています。

国も、温暖化対策をリードしようと、二酸化炭素を排出しないアンモニア燃料船などの「次世代船舶」の技術開発を加速し、実用化を進める計画の案を、ことし5月に公表しました。

この中で「次世代船舶」として、▽アンモニア燃料船と▽水素燃料船、それに▽メタンの排出を抑えたLNG燃料船を挙げ、それぞれでエンジンや燃料供給システムなどの開発・実証を進めるとしています。

このうち▽アンモニア燃料船は2028年までのできるだけ早い段階で商業運航を、▽水素燃料船は2030年までに実証運航を完了させることを目標にしています。