7年前に、のどのがんの手術で声帯を除去したつんく♂さん。取材はリモートで行いました。

聞き手はみずから”モー娘。世代”と語る34歳、NHKの桑子真帆アナウンサーです。

桑子アナ
私、ちょうどモー娘。世代で、辻ちゃん、加護ちゃんと同い年なんです。なのでつんく♂さんにお会いできて本当に嬉しいです！

つんく♂さん
オーディションを受けていただきたかったです（笑）受験勉強でそれどころではなかったよね、きっと。

話はさっそく大ヒット曲となった「ザ☆ピ～ス！」に。
つんく♂さんが作詞・作曲した「恋愛レボリューション21」に続いて2001年にリリースされました。

「好きな人が 優しかった」
「道行く人が 親切だった」
平和な日常の幸せを描いた歌詞の中にその一節はあります。

「選挙の日ってウチじゃなぜか 投票行って外食するんだ」

なぜ突然「選挙」「投票」という言葉が？

桑子アナ
なかなか歌詞の中に「選挙」とか「投票」って聞くことはないと思うんですけど、この歌詞はどうやって生まれたんですか？

つんく♂さん
僕が小学生くらいの時、近所の2歳くらい年下の男の子が嬉しそうに、ちょっといい服着てニコニコしてたのを覚えてるんです。

「いい服着てどこ行くの？」って言うと「今からお父さんたちが選挙に行って、そのあとレストラン行くねん」って言ってました。すごく嬉しそうでした。

それがすごくインパクトとして頭に残ってたのもあるんですね。「選挙に行くのが楽しみなほどの“よき選挙”って素敵だな」って思ったので、そんなフレーズを書いたのだと思います。

「ザ☆ピ～ス！」がリリースされた4日後、2001年7月29日は参議院選挙の投開票日でした。

つんく♂さん
歌詞に選挙とか政治を入れよう！とか、そんなテーマを持ってたわけではないです。ただ曲としてハッピーな曲で、タイトルも「ザ☆ピ～ス！」。

そのちょっと前のシングルに「LOVEマシーン」ってのがあって、その中に「恋はインフレーション」というフレーズを入れていました。ビジネス用語が入ってて少し話題になったりはしました。メンバーたちは意味が分からずに歌ってましたし。

この曲の時もちょうど選挙が近かったように思うんですが…難しい話というより、日本国民の日常の一つとして取り上げただけだと思います。

桑子アナ
当時の日常を歌詞にしたと。それが今でもこうして注目されているんですね。

つんく♂さん
あの時も、家族にとって大事なのは「外食しようね」ってことでした。家族の「ザ☆ピ～ス！」な場面ってそれぞれ色々あると思うんですが、その一場面を書いたんですね。

モーニング娘。のメンバーにとっても、社会が他人事な感じにならないような、そんな気持ちもあったと思います。「歌だけ歌ってればいいでしょ」みたいにならないようにね。

桑子アナ
今でもこうして選挙のたびに注目されていることを、どう受け止めていますか？

つんく♂さん
ほかに選挙にまつわる曲が無いんでしょうねって思いますが（笑）、ただ、なんか光栄です。

当時はメンバーも相当忙しかったと思うので、どこまで歌詞を読み込んでたかわかりませんが、最近になって「あの頃の歌詞の意味が染み込みます」って言われるので。歌詞に入れておいてよかったなって思います。

つんく♂さんへの取材を前に、投票に行きたくなるような「投票行って○○するんだ」のアイデアやエピソードを募集したところ多くの投稿が寄せられました。

その一部をご紹介します。まずは30代の3人から

投票行って 公園行くんだ
「子どもがまだ小さいのですが、一緒に投票に行き、そのまま公園に遊びに行っています。毎回選挙に連れて行くことで選挙に行くことが当たり前という風になってくれたらいいなあ」（ながるさん）

投票行って 思い出話するんだ
「近所の小学校が投票所。自分にとっては地元、妻にとっては馴染みのない土地で、向かう道中で小学生時代の話を思い出しながら伝えた」（けいたぶるさん）

投票行って 買い食いするんだ
「夜、夕食後に期日前投票へ行き、スーパーでカップデザートやアイスを買い食い。ささいなことですが、夕食後に出かける『夜遊びっぽさ』や、夜の投票所の雰囲気もあいまって、妙にうきうきとした気分になります。投票は楽しいです！」（とりねこさん）

その中でつんく♂さんがピックアップしたのは…

つんく♂さん
かわいいですね～、今の時代ならではですね。「SNSにあげるんだ」、「投票割」でアイスとかいいですね。投票所に「映え」する場所を設置するのいいですね。そこで写真撮るのが流行る！みたいな。

でも、まじで、その場で写真撮ってアップすれば商店街で割引とか、友達にも自慢になるようなアイデアってあっていいようには思いますね。

あとはお子さんが行きたくなるようなアイデアですよね。商店街で風船配るのって親を引っ張ってくるためなので。選挙権のないお子さんがそこに行きたがるアイデアを盛り込めると、30代の若い親も参加するのかな？って思います。

ほかにも10代や20代の人たちからこんなメッセージが寄せられました

「小さいときからモーニング娘。が好きで、投票できるようになったら絶対に投票行って外食しようと思っていました。そのおかげか毎回欠かさず選挙に行くようになりました。自分達の世代が投票に行けば何かが変わるのではないかと思っています。つんく♂さんとモーニング娘。には感謝しています」（あべちゃんさん）

「18歳なので今回の選挙が初めての国政選挙です。初めての投票へ行くにあたってこの曲のおかげでワクワク感がすごいです。どうしても選挙には堅苦しいイメージがあるので、ザ☆ピ～ス！の歌詞の様に一つのイベントとして捉えるのもいいかもしれません。投票後はラーメン屋に行きたいと思います！」（あおいさん）

最近の選挙では投票率の低下が指摘されています。どうしたら多くの人が選挙に関心を持てるようになるのでしょうか。

つんく♂さん
投票することの参加意識ですよね。

エンタメ的に考えると、ワクワク感と、ちょっとしたいかがわしさ、なんちゅうか、ドキドキ感。楽しい遊園地でも、何かドキドキ感があるからお金を払うわけで。単に健全ってだけなら公園でいい。ジェットコースターにもドキドキがあるからお金払うし、わざわざ怖いのに幽霊屋敷にお金を払う。ここにはドキドキがあるから。

政治というか、社会にもエンタメ的なワクワクやドキドキを政治家さんがセッティングしてくれたら、アイドルの総選挙より当然盛り上がるはずなんですが（笑）

インタビューの最後に、メッセージをいただきました。

つんく♂さん
僕が今、投票行って何するか、今ならなんて歌詞書くかな～って思ったんですが、「ザ☆ピ～ス！」の曲の本来の意味として「投票行って幸せになるんだ」って思うんです。投票行くことでいきなり幸せになるって意味ではなく、政治家のみなさんに託したと、あとは「幸せにしてよ！」って、そういう気持ちがゴールです。

ただ現状は「投票行って幸せ願うんだ」が今のところの現実かなと。よろしくお願いします！と。やっぱ政治家さんに未来を託してるんですもんね。ただ無責任になってはダメですもんね。託したから終わり、投票行ったから終わり、ではなく、日々の一歩一歩を大事にしたいなって思います。

つんく♂さんが今回のインタビュー、そして「ザ☆ピ～ス！」で描いたように、日常の一つとして「選挙」や「投票」を捉えられたら…

“すてきな未来”が待っている、そんな気がします。

今回の「選挙の日」は10月31日です。
あなたは投票行って、何をしますか？

（ネットワーク報道部 國仲真一郎、選挙プロジェクト 桜田拓弥）