“発想の転換”で新商品開発 コロナ禍の苦境乗り越える 埼玉

新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込む企業が相次ぐ中、埼玉県入間市の金属加工会社が発想を転換して、コロナ禍のニーズにあわせた新商品を開発し、苦境を乗り越えようとしています。

入間市で金属加工会社を経営する石井勝士さん(43)は、半導体を製造する機械の部品などを作ってきましたが、新型コロナの感染拡大で去年、売り上げは大幅に落ち込みました。

苦境を乗り越えるため発想を転換して、これまでの商品に頼るのではなく、金属加工技術を生かしコロナ禍のニーズにあわせた日用品の開発を進め、ソーシャルディスタンスを促すデザイン入りのマットを販売することにしました。

金属などを加工する機械を使って、色の異なるマットに高圧の水流を当て足や靴の型を切り抜いたあと、はめ絵のように組み合わせます。

できあがったマットを等間隔に並べれば、距離をとるための目印になります。

販売を始めたところ予想以上の反響があり、ホテルや医療機関などから注文が相次いだということです。
このうち神奈川県小田原市のリゾートホテルでは、フロントや宴会場の前に、靴のイラストと「SOCIAL DISTANCE」の文字があしらわれた丸いマットが等間隔に置かれていました。

ホテルの床にはじゅうたんを敷いているところもあり、シールを貼ってもはがれるため何か方法がないか探していたところ、石井さんの会社が売り出した商品を見つけ採用したということです。

「ヒルトン小田原リゾート&スパ」の山本唯人オペレーションズマネージャーは「持ち運びができるので、状況に応じて置く場所を変えることができますし、分かりやすいので混雑の混和や安心感につながる良い商品だと思います」と話していました。

石井さんの会社ではその後、従来の金属加工の注文も徐々に増え始め、今では売り上げがコロナ禍の前の水準まで回復したということです。
こうした中、石井さんはコロナ禍で地域の子どもたちを預かってくれている保育所を応援しようと、市内の10か所にさまざまなデザインをほどこした50センチ四方のマットを合わせて80枚プレゼントしました。

このうち、会社の近くにある二本木保育所に贈ったマットにはオリジナルキャラクターがあしらわれていて、園児たちは気持ちよさそうに歩いたり寝転がったりしていました。

石井さんは「これまで経営の危機は何度もありましたが、とにかく諦めないで考え続けてきたことで乗り越えられました。これからもできることを頑張ってやっていきたい」と話していました。