「お願いだから乳がん検診を受けて」ピンクリボン月間

今月は乳がんの早期発見、早期治療を呼びかける「ピンクリボン月間」です。新型コロナの影響で乳がん検診の受診率は下がる傾向にあり、医師や乳がんの患者からは「検診を怠らないでほしい」「お願いだから検診を受けて」などという声があがっています。

日本対がん協会の調査では、自治体が行っている乳がん検診を受診した人は、去年(2020年)、前の年に比べて30%減少しました。
ことしは新型コロナのワクチン接種が進んだことなどもあり、去年よりは検診の受診率があがっていますが、おととしの同じ時期(1月から6月)と比べると17%少なく、依然として感染拡大前の水準には戻っていません。

東京の「がん研有明病院」の医師で、乳腺外科を専門とする片岡明美医師は最近、がんが進行した状態で見つかる患者が増えていると感じています。

乳がんは病期の進行に応じてステージ0からステージ4まで大きく5つに分類されますが、異変を感じながら新型コロナの影響で検診を受けず、初診で来た時には、がんが進行していたというケースが目立つというのです。
片岡医師は「去年の春ごろから胸のしこりを感じていたのに、コロナの感染拡大で外出が怖く痛くもないから我慢していた。その後痛むようになって来院するとステージが進んでいた、そうした患者が、最近増えているんです」。

検診受けず 乳がんが発覚したあとの後悔

こうした中、自身の経験から検診の大切さを訴えている人もいます。

東京・練馬区で夫とともに園芸店を営む内田潤子さん(54)は、6年前に乳がんと診断されました。
実はそれ以前に、区の乳がん検診を受けた際、気になるところがあるので検診を続けたほうがよいと言われていましたが、体調に変化がなかったことから、3年間、検診を受けていませんでした。

しかし、その後、わきの下にしこりを感じて医療機関を受診すると乳がんだと告げられました。

詳しい検査の結果、ステージは2Aで医師からは「なぜ検診を続けなかったのか、そのためにわきの下のリンパ節に転移した可能性がある」と言われたといいます。
内田さんは「まさか自分がなるとは思っていなかった。検診を受けていれば、もっと早くに見つけられていれば、というのが最大の後悔です」と話していました。
その後、がんを取り除く手術や抗がん剤、放射線治療など、頻繁な通院は1年近く続き、後悔の念は、ふとした瞬間に繰り返し襲ってきたといいます。

一方、つらい治療を支えたのが子どもの存在でした。
乳がんが発覚した当時、長男は中学3年生、長女は中学1年生になったばかりでした。
内田さんは子どもたちの成長を見守りたいという気持ちで治療に向き合いました。

飲み薬による治療は続いていますが、いま、元気に仕事に打ち込めているといいます。こうした経験をへて、内田さんは、ことしの春から、乳がんの検診を呼びかける活動に参加しています。

5月の母の日に花を買いに来た人に、乳がん検診を受けるよう呼びかけるチラシを渡す活動で、練馬区では、およそ30か所の生花店や園芸店が参加し、活動は広がりをみせています。
内田さんは「がんになるかならないかは選べませんが、やれること、やりたいことをするためには、検診を受けて早く治療に取り組めるようにすること大事だと思っています」

「病気は待ってくれないので、とにかく検診を受けてと呼びかけています」と話していました。

後悔する人をなくしたい

練馬区で母の日に乳がんの検診を呼びかける活動を始めたのは、乳がんの患者団体の代表を務めている西貝圭子さん(68)です。

実は西貝さんも、38歳の時に検診で乳がんが見つかりました。

当時長男は3歳、長女は7か月。

子育てに追われていましたが、胸のしこりに気付いてすぐ検診を受けたことで命が救われたと感じています。
西貝さんは「30年前、子育てが一段落してからではなく、すぐに検診に行ったことで命がつながっていると感じています。乳がんは早く見つけると身体的にも経済的にも軽い治療で済む可能性が高い。あのとき、検査に行っておけばと後悔する人がいなくなればと願っています」と話しています。

検診の受診率低下 海外でも

乳がん検診の受診率の低下は海外でも問題になっています。
アメリカでもコロナの感染が拡大する中で検診を受ける人が減り、米国放射線学会で乳房画像委員会の会長を勤めるスタマティア・デストニス医師は
「コロナ禍で仕事を失った女性などは保険も失いなかなか検診に来ることができません。検診の遅れは腫瘍を大きくさせ、治すのがより難しくなります」

「女性たちはまだコロナ禍と感染リスクにおびえています」などと話しています。

お願いだから、お願いだから不安があるなら検査を受けて

イギリスでは感染拡大の影響でがんの検診を先送りし、その後、乳がんになったことを公表していた、イギリスの歌手のサラ・ハーディングさんが先月、闘病生活の末、39歳で亡くなりました。

生前、インスタグラムや出版した自伝で「もっと早く検診を受けていたら、もっとできることがあったかもしれないし、こんなに病気が広がることもなかったのに」などとつらい心境を記すとともに「すべての女の子お願いだから、お願いだから何か不安なことがあるなら検査を受けて。何にもそれを阻ませないで」などどんな時でも検診を受けてほしいという思いをつづっていました。

乳がん検診をしっかりと

乳がんには定期的な検診をきちんと受けること、また自分自身でセルフチェックをすることも大切で、NHKの「健康チャンネル」のサイトでもチェックの方法を紹介しています。
また世界で乳がんの啓発活動をしているNPO法人では乳がんのさまざまな症状を、レモンを乳房に見立てて説明する画像を公開しています。

片岡医師はこうした変化があった場合は、できるだけ早く診察を受けてほしいと話していました。