帰宅か待機か 対応問われた“震度5強” どう判断すれば…

先週、東京と埼玉で震度5強の強い揺れを観測した地震では帰宅困難者が駅などで長時間過ごす事態となりました。国が想定する「首都直下地震」のような大地震ではすぐに移動してはいけないと分かっているものの、今回のような地震のときはどう行動すればよいのでしょうか。

鉄道運休 タクシー乗り場に長蛇の列

千葉県北西部を震源とする地震が発生したのは今月7日の午後10時41分でした。夕方の帰宅ラッシュはすぎていたものの、首都圏では多くの鉄道路線で一時、運転が見合わせとなりました。
JR東京駅や品川駅、それに横浜駅など首都圏の各ターミナル駅を中心に帰宅困難者が発生し、深夜1時をすぎてもタクシー待ちの列が続きました。

また、東京都は一部の自治体に一時滞在施設の開放を要請し、帰れなくなった人が小学校の体育館などに身を寄せましたが、施設が開放されたのは足立区で午前2時半、港区で午前3時25分などと、地震から4~5時間が経過していて、運用に課題が残りました。

都は地震から1時間以上たった8日午前0時すぎになって、品川駅などでタクシー待ちの長い行列が発生していることを報道で知ったということです。

都の担当者は「夜間だったこともあり、駅前の滞留状況を素早く情報収集する体制がとれていなかった。今回の地震の教訓として検討を進めていきたい」と話しています。

会社やホテルに泊まる人も

SNS上では「帰宅途中での地震でしたので引き返して会社泊」とか「電車止まったからきょうは都内のホテル泊」などの投稿も相次ぎました。

帰宅のめどが立たない中で、公共交通機関や徒歩での移動を諦め、職場や宿泊施設で夜を過ごすなど、その場でとどまる選択をした人もいたようです。

あらかじめ対応を示していた企業は

事前に策定した計画であらかじめ地震時の対応を示し、社員の安全を確保した企業もありました。

東京に本社がある損害保険大手の三井住友海上は、震度5強以上の地震が発生した際に社員がとるべき行動をBCPと呼ばれる業務継続計画で詳細に定めています。
【地震直後は】
地震直後は原則として社内で待機するか避難することとしていて、状況が困難でなければ順次、帰宅すると決められています。また、鉄道の運行情報のほか自宅や勤務先までの距離を確認して「帰宅」「帰社」「避難」のいずれかを、個人で判断することとしています。

担当者によると、今回は事前の計画に沿って社員が各自で判断し、駅の混雑などに巻き込まれたという報告はないということです。

【オフィスに備えも】
この会社では社員をオフィスにとどまらせるための備えも進めています。

本社などで勤務する約4500人すべてのデスクに、3日分の保存食などまとめたリュックサックが備え付けられ、地下の倉庫には地震後1週間は会社にとどまれるよう、水や簡易トイレなどを大量に保管しています。

【出社できない場合は】
規模の大きな地震では社員が出社できないことも想定されるため、発生から48時間以内は原則は在宅勤務を指示するよう決めています。

今回は発生2時間半後に危機管理担当者が幹部に対し、交通状況などを確認して安全に出社できるか判断するようメールで呼びかけました。
危機管理を担当する三井住友海上の外之内貴洋課長は「大きなトラブルは無く、事前の計画どおり対応できたと考えているが、さまざまな場面や被害を想定し対策を練っておくことが重要だと改めて認識した。事前の計画や実際の対応が適切だったのか検証し、よりよいものに変えていきたい」と話していました。

専門家「社会全体の足並みそろえた対策必要」

帰宅困難の問題に詳しい東京大学大学院の廣井悠教授は、社会全体の足並みをそろえた対策が必要だと指摘します。

廣井さんは「今回と同じ規模の地震でも天候や気温のほか、夜間に女性が1人で帰宅する際の治安など、さまざまなケースを想定した対策を検討していく必要がある。人々の行動に反映させるには行政だけでなく企業も事前のルール作りをしておくことが重要で、取り組む企業が増えることは大きな意義がある」と話しています。

そのうえで個人が心がけておくこととして「地震が起きたらまずは安全を確保し、行政や企業から帰宅抑制の呼びかけがないか確認する。混雑が予想される駅などにはむやみに行かず、情報収集をして危険性を判断してから帰るかどうか決めてほしい。移動する際のリスクを事前に知っておくことも大切だ」と指摘しています。

【外出先で地震】そのときどうすれば…

会社や学校、あるいは遊びなどで外出中に大地震が発生。強い揺れに見舞われて交通機関もストップ…。そんなときにどうすればいいのでしょうか。

内閣府は、首都圏で地震に見舞われた際の帰宅行動に関するパンフレットをまとめています。

【すぐには動かないで】
パンフレットは首都直下地震を想定して作られていますが、今回のような強い揺れの地震でも最初に取るべき行動の考え方は同じ。まず、求められるのは「むやみに移動を開始しない」、「安全な場所にとどまる」ことです。

むやみに移動すると車道にまで人があふれ、消防車や救急車などの活動に支障をきたして助かるはずの命を危険にさらすおそれがあるほか、その後の地震で建物から物が落下したり、火災が起きたりする危険が予想されます。

また、駅の周辺などに人が殺到すれば群衆雪崩や転倒による事故で大規模な被害につながるおそれもあります。

【一定期間とどまることを前提に準備を】
そして、帰宅できるようになるまでの間は職場や学校、臨時に開設される一時滞在施設などで過ごすことを念頭に置くよう求めています。

職場や学校にいる場合は会議室やホールなど多くの人が滞在できる場所をあらかじめ決めておきます。

そのうえで、3日分の水や食料、毛布、懐中電灯、携帯ラジオなどを備えておくのが重要だとしています。

【徒歩帰宅の想定・準備を】
安全が確認されても交通機関がすぐに再開するとはかぎりません。
その場合、帰宅は「安全に」「自力で」「歩いて」が基本になります。

ふだんから帰宅経路を確認し、歩きやすい靴や地図、携帯トイレなどを準備しておくのが望ましいとしています。

大切な誰かのために

「家族は、家は無事だろうか」

パンフレットの表紙には、こんなことばとともに不安そうな人や焦っている人たちの顔が描かれています。

大切な誰かのため、そして少しでも安心できる「わが家」へ家路を急ぎたい気持ちは分かりますが、むやみに行動することでより多くの人が危ない目にあうかもしれない。

今回の地震で浮き彫りになった都市ならではの災害対応の難しさですが、自分だったらどうするか考えておくことが今後への備えの一歩になりそうです。
※パンフレットは内閣府HPの以下のページに掲載されています。

http://www.bousai.go.jp/jishin/syuto/kitaku/renraku/2/1.pdf