G20共同声明 「インフレ圧力を察知し 必要に応じて行動する」

アメリカで開かれていたG20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議は共同声明を採択し、各国の中央銀行が「一時的なインフレ圧力を察知し、必要に応じて行動する」として、物価上昇が景気に与える影響を抑えるため中央銀行が機動的に対応する姿勢を示しました。

G20の財務相・中央銀行総裁会議は、日本から日銀の黒田総裁と財務省の神田財務官が出席して、13日、アメリカのワシントンで開かれました。

そして日本時間の14日午前4時前に、共同声明を採択しました。

この中では、世界経済について「回復は強固なペースで継続している」としつつ、ワクチンの接種ペースの違いなどの下方リスクにさらされているとして、今後数か月間で低・中所得国への支援に努めるとしています。

一方、原油をはじめとする資源価格の上昇などを背景に「各国の中央銀行は物価の変動を緊密に監視する。そして一時的なインフレ圧力を察知し、必要に応じて行動する」として、物価の上昇による景気への影響を抑えるため中央銀行が機動的に対応する姿勢を示しました。

また、OECD=経済協力開発機構の加盟国など136の国と地域が、
▽法人税の最低税率を15%に定めたり、
▽「GAFA」に代表される巨大グローバル企業に適切に課税できるようにしたりする新たな国際ルールで
最終合意に達したことを「支持する」としました。

そのうえで各国に対して、目標とする再来年の発効に向けて、多国間の条約策定などの作業を計画どおり進めるよう求めています。

日銀 黒田総裁「物価上昇は一時的」

会議のあと、日銀の黒田総裁と財務省の神田財務官は現地で記者会見しました。

この中で日銀の黒田総裁は、欧米で高まるインフレ懸念について「欧米諸国では消費者物価の上昇率が物価安定目標の2%を超えているのは事実だが、あくまでサプライチェーンの混乱など、一時的な要因が関係している。中央銀行にとって物価安定が最大の使命なので、状況が変われば金融政策の対応はありえるが、各国の中央銀行とも今の物価上昇は一時的だと考えている」と述べ、物価の上昇は次第に落ち着いていくとの認識を示しました。

また、今回の会合で新たな国際課税ルールが支持されたことについて、黒田総裁は「国際課税の基本的なルールの一部を根本的に修正するという意味では100年に1度の大改正で、歴史的合意だ」と述べ、意義を強調しました。

また神田財務官も「国際課税の議論は日本が一貫して主導してきた分野だ。アメリカの巨大IT企業のGAFAなどが適正に税金を払っていないのではないかという議論など、いろいろなことが重なって100年ぶりの成果が得られた」と述べました。

国際課税ルールは大きな転換点に

今回、最終合意が支持された新たな国際課税ルールによって、およそ100年前に整備された国際課税のルールは大きな転換点を迎えます。

これまでのルールは、製造業中心の考え方に基づき、法人税の課税の根拠として工場やオフィスなど物理的な拠点があることを原則にしていました。

このため、インターネットを通じた動画や音楽の配信など国境を越えたビジネスを行っている「GAFA」に代表される巨大なIT企業は、その国に拠点があるかどうかにかかわらずサービスを提供できるため、消費者が利用料を払っていても、これまでは適正に課税ができませんでした。

それが新たなルールでは、サービスの提供を受けている国や地域は、企業の拠点がなくても利益の一部に対して課税ができるようになります。

OECD=経済協力開発機構は、グローバル企業への新たな課税のルールで、利用者がいる国や地域には毎年、合計1250億ドル、日本円にして14兆円を超える利益が課税の対象として配分されると推計しています。

一方、法人税の最低税率に関する合意は、長年続いてきた法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけることになります。

大企業は、国や地域ごとに法人税の税率が大きく異なることを利用して、税率の低い国や地域に設けた子会社などに利益を移すことで、課税逃れを進めてきたという指摘もあります。

今回、15%の最低税率を設けることで、大企業は、どんなに税率が低い国や地域に子会社などを置いても少なくとも15%は税負担を求められることになります。

OECDは、最低税率が15%となったことで世界全体で年間およそ1500億ドル、日本円で16兆円余りの税収が新たに得られると見込んでいて、新型コロナ対策として各国が巨額の財政出動を行う中、財政状況の改善につながることも期待されます。

松野官房長官「歴史的な合意を強く歓迎」

松野官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で「経済のデジタル化に伴う国際課税上の対応について歴史的な合意が支持されたことを強く歓迎する。今般の合意では、2022年に多国間条約の作成や国内法の整備を行い、2023年以降の適用開始を目指している。国際合意で示された目標を踏まえ、合意内容の実施に向け、引き続き、各国と協調して取り組んでいきたい」と述べました。

鈴木財務相「G20でも支持されたことを歓迎」

G20=主要20か国の財務相・中央銀行総裁会議で、新たな国際課税ルールが支持されたことについて、鈴木財務大臣は「歴史的な合意が実現し、G20でも支持されたことを歓迎する。日本政府はプロジェクトの立ち上げから国際課税の議論を一貫して主導してきた。100年来続いてきた国際課税の原則の見直しが、今回、グローバルな枠組みで合意したことを高く評価する」と意義を強調したうえで、今後、合意内容の実施に向けて各国と協調して取り組む考えを示しました。