あなたの年収、教えてください

誰もが一度はないでしょうか。

「自分の年収は働きに見合っているのかな?」と考えたこと。

ここにきて、岸田総理大臣が『令和版所得倍増』を掲げるなどお金にまつわる話題が増えています。

先進国の中でも頭打ちになっているという日本の会社員の年収。

ならば、失礼を承知で、街ゆく人にずばり聞いてみました。

「あなたの年収、教えてください!」

(おはよう日本 記者 岡本潤)

「年収」を教えてくれるだろうか…?

私が向かったのは東京・新橋駅前です。

緊急事態宣言が解除され、広場には多くの人たちの姿がありました。

東京で多くの働く人たちに話を聞くならばここかと。

とはいえ、自分の「年収」を教えてもらえるのだろうか。

そんな不安を抱きつつの取材でした。

最初に出会ったのは

しかし、いざ始めてみると、思った以上に多くの人がインタビューに答えてくれました。

最初のうちに出会ったのは自営業の人たち。

用意した年収別のボードを指してもらいました。
年収はというと…

1000万円を超えていました。

(40代女性・特許事務所運営)
「景気に左右されないから安定しています」

(50代男性・不動産業)
「年をとっても稼げるので不安はない。ただ、金持ちといっても海外に比べたらたいしたことないですよ」

1000万円以上でも暮らしぶりは…

1000万円以上というと、民間企業の去年1年間の平均給与が433万円余ですから倍以上。かなり多いという印象です。

しかし、その暮らしぶりはいかがかと尋ねると「そんなに楽ではないですよ」と答えたのが、企業の財務コンサルを手がけている50代の男性です。

3人の子どもがいて、お金の使いみちはほとんど「教育費」だと教えてくれました。

最近子どもが入った私立大学の入学費は100万円。妻もパートで働いていて、家計をやりくりしているそうです。

「まだまだ子どもの教育費はかかります。当面は決してむだづかいはできないです」

“平均収入”前後の人たちは

さらに、取材を進めていくと、目立ってきたのは、平均給与に近い「400万円台」と「500万円台」の人たちです。
(60代・金融業)
「子どもも社会人です。満足な生活が送れています」

(50代・サービス業)
「独身なので、特に問題はないですよ」

(30代・飲食業)
「なかなか貯金する余裕はないです」

同じぐらいの年収でも、年齢や家族構成などで満足度は異なっているようです。

「もう少し給料が上がってくれれば…」

取材した30代の男性は、民間の金融機関に勤めています。

年収は「500万円台」だといいます。
勤続10年ですが、昇給しているという実感はほとんどないという男性。

子どもができ、住宅を購入すれば、今以上にお金がかかるものの、組織の規定で副業が禁止されているため、株式の運用をしているそうです。

男性は「物価は上がっている印象で、生活はますます苦しいばかりです。もう少し給料が上がってくれれば…」と口にしました。

入社2年目若手社員 “諦めに近い感覚”

将来への強い不安を口にしていたのは、入社間もない若手たちでした。

IT企業に勤める入社2年目のシステムエンジニアの男性は年収「200万円台」。

「大企業ではないので、こんなものか」という諦めに近い感覚だといいます。

やりくりが厳しく、食費も節約するなど気をつけているそうです。

まわりには、結婚して子どももいる同僚たちもいるものの、自分にはそんな将来ビジョンが見えないといいます。

「自分のスキルや経験に合わせて、不満を感じないほどに所得が上がってほしい」

スマホプラン見直し、ネイルもやめた

金融関係の営業職だという20代女性も「年収200万円台」です。

生活が苦しく、最近、自分のお金の使い方を見直したといいます。

携帯電話を安いプランに変更。

おしゃれのためのネイルもやめたそうです。

若者たちが口々に将来が不安だと語る姿を見て複雑な気持ちとなりました。

「同じ仕事してるのに…」 埋まらない格差

それでも、正社員はまだ安定していると訴えるのは非正規で働く人たちです。

「同じ仕事をしているのにどうして差がでるんだろう」

こう語るのは15年間、派遣社員として働く40歳の女性です。
現在の年収は300万円台。

待遇は派遣先の企業によってばらばらで、中小企業だと正社員と近い金額になる一方、大企業だと正社員との開きが大きくなるそうです。

残業がない会社だと半分くらいになる年もあるといいます。

昇給もボーナスもなし。

何より心配なのはその働き方。

女性は、先日、突然、雇用の打ち切りを派遣元から伝えられました。

運よく次の仕事は見つかったといいますが、不安は尽きないといいます。
(40代女性・派遣社員)
「正社員と派遣社員の所得の差を少しでも縮めてほしい。そしてなにより、企業が突然派遣社員との契約を打ち切ることができないようにしてもらいたい」

30人に聞いた結果は

今回話を聞いた30人のうち、2割以上に当たる7人が、非正規で働く人たちでした。

取材に応じてくれた30人。結果はこうなりました。
さらに、今の収入が自分の働きに見合っているかどうかも尋ねました。

同じような収入であっても、とらえ方が異なっているのがわかります。

30人なので、もちろん統計学的に正確なものではありませんが、単純に「年収が多い=満足度が高い」ということではなさそうです。

伸び悩む賃金

そもそも、日本の賃金はどうなのか。

国税庁が先月発表した「民間給与実態統計調査」によると、民間企業で働く人の平均給与は去年433万1000円で、おととしと比べて0.8%少なく、2年連続での減少となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、ボーナスの額が大きく減ったことが影響したと見られています。
さらに、こちらはOECD=経済協力開発機構のデータを基に、日本と先進各国の所得の伸びを比較したグラフです。

この30年間で各国の所得は大幅に上昇したのに対し、日本はほぼ横ばいで推移しています。

専門家はどう見る?

今回の取材結果を経済の専門家に分析してもらいました。

まずは慶應義塾大学の小林慶一郎教授です。
今回の結果を伝えると「正規、非正規の間の格差はもちろん、同じ業界内での格差が広がっている」と感じたといいます。

賃上げの重要性は指摘しつつも、それだけでは十分ではないと語りました。

(慶應義塾大学 小林慶一郎教授)
「例えば、所得の低い人には、給付金を配り、高い人には税率を高くする。こうして全体の格差を縮めると一人一人の生活水準が安定し、消費をしやすくなります。それが経済活性化につながり、物価の上昇や、所得の引き上げの循環につながると考えられます」

お金≠幸せ?

もう1人、日本総合研究所の石川智久さんにも話を聞きました。

「今は価値観が多様化していて、必ずしも幸せの基準がお金だけでなくなっている」と指摘。

石川さんによると、子育て世代ではお金、独身だと自由度というふうに、《お金・自由度・環境》が関わってくるといいます。

そのため、賃上げすれば、満足度も上がるわけではないというのです。

一方、これまで賃上げが実現しなかったことにも言及。

(日本総合研究所 マクロ経済研究センター 石川智久所長)
「企業自身が稼ぐ力を作るために、デジタル化の促進や社員教育など、環境作りを後押しすることも重要。さらに、副業・兼業をより広く認めることも必要になる」としています。

本音、もっと聞かせてください

30人が教えてくれたお金にまつわる本音。

ふだんこうした話をする機会がないからなのか、多くの方が、率直に話をしてくださいました。
今回は東京・新橋での取材なので、これが別の場所や地方都市であれば違う結果になるのかもしれません。

皆さんの実情や考えを、ぜひ以下の投稿フォームまで寄せてください。

https://forms.nhk.or.jp/q/OLPBS8UH

あなたの声を手がかりに取材を進めてまいります。

あなたの年収、教えてください!