国会 衆院解散前に代表質問 岸田首相の所信表明演説めぐり論戦

国会では、衆議院の解散総選挙を前に、岸田総理大臣の所信表明演説に対する代表質問が行われました。

立憲民主党の枝野代表が、新型コロナウイルス対策をめぐり「自民党政権の失敗と言わざるをえない」とただしたのに対し、岸田総理大臣は、病床や医療人材の確保などの対応策について、近日中に全体像の骨格を示すよう関係閣僚に指示することを明らかにしました。

立民 枝野代表「新型コロナ対策 “自民党政権の失敗”」

立憲民主党の枝野代表は、新型コロナウイルス対策をめぐり「9月上旬には、中等症でも入院できない方が多く出た。自宅などで亡くなる人まで出たことは、自民党政権の失敗と言わざるをえない」とただしました。

岸田総理大臣は「病床と医療人材の確保、在宅療養者に対する対策といった対応策の全体像を早急に国民に示すよう関係する3大臣に指示した。コロナ病床が十分に稼働しなかったことなど、この夏の反省も踏まえ、近日中に全体像の骨格を示すよう指示する」と述べました。

また、枝野氏は経済政策をめぐり「『アベノミクス』の何を引き継ぎ、何を修正するのか。成長の果実を分配するのでは、いつになっても好循環は進まない。好循環の出発点は適正な分配にある」とただしました。
岸田総理大臣は「岸田政権は『成長か分配か』ではなく、『成長も分配も』が基本スタンスだ。アベノミクスは『6重苦』と言われた旧民主党政権の経済苦境から脱し、経済の成長、体質強化に大きな役割を果たした。成長なくして分配なし。それが民主党政権の失敗から学んだことだ」と述べました。

自民 甘利幹事長「都市封鎖を可能にする法整備の必要性は」

自民党の甘利幹事長は、新型コロナウイルス対策で「ロックダウン」=都市封鎖を可能にする法整備の必要性について「政府は、海外の状況を見ても効果は限定的との見解を示してきたが、今後の法制の在り方について意見を聞く」と質問しました。

岸田総理大臣は「欧米諸国で行っているような、高額の罰金を科す厳しい『ロックダウン』は、わが国にはなじまないと考えるが、司令塔機能の強化、人流抑制など危機管理を抜本的に強化していく」と述べました。

また甘利氏は、新型コロナウイルス対策をめぐり「自民・公明の与党は着実な対策を講じ、政府とともにこの未知の感染症に対処し続けてきた。岸田政権における今後の方針と、出口戦略について尋ねる」と質問しました。

岸田総理大臣は「丁寧な説明を行い、常に最悪の事態を想定して対応することを基本とし、対応に万全を期していく。国民の協力を得られるよう、大きな影響を受ける事業者に対し、地域、業種を限定しない形で事業規模に応じた給付金を支給するとともに、子育て世帯などを守るための給付金などの支援も実行していく。一日も早く、通常に近い経済、社会を取り戻していく」と述べました。

さらに甘利氏は、経済政策をめぐり「『アフターコロナ』の経済再生、そして『新しい資本主義』とは何を目指すのかについて考えを聞く」と問いました。

岸田総理大臣は「成長と分配の好循環と、コロナ後の新しい社会の開拓を目指すものだ。新型コロナで経済社会は大きく傷ついたが、急速なデジタル化の進展により地方から変革が起こるなど、社会が変わっていく確かな予感がある。成長も分配も実現するために、あらゆる政策を総動員する」と述べました。

立民 辻元副代表「財務省決済文書改ざん 第三者の再調査は」

立憲民主党の辻元副代表は、財務省の決裁文書の改ざんをめぐり、関与させられて自殺した近畿財務局の男性職員の妻の手紙を読み上げ「どのように受け止めたか。手紙で求めている、第三者による再調査は実行するか」とただしました。

岸田総理大臣は「しっかりと受け止めさせていただきたい。民事訴訟で法的プロセスに委ねられていて、返事などは慎重に対応したい。財務省で事実を徹底的に調査しみずからの非を認めた調査報告書を取りまとめている。検察の捜査も行われ、結論が出ている。今後も必要に応じて説明していく」と述べました。

原子力政策・核兵器禁止条約について

また岸田総理大臣は、原子力政策をめぐり「国民の信頼回復に努め、原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原子力発電所については地元の理解を得ながら再稼働を進めていくことが重要だ」と述べました。

さらに、核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加するか問われ「核兵器国は1か国も参加していない。オブザーバー参加という対応よりも、唯一の戦争被爆国として核兵器国を関与させるよう努力していかなければならず、唯一の同盟国であるアメリカの信頼を得たうえで、核兵器のない世界の実現に向けて、ともに前進していきたい」と述べました。

経済安全保障・コメ政策について

一方、岸田総理大臣は、経済安全保障をめぐり「知的財産や機微技術を守り、国外に意図せざる形で流出することがないようにしなければならない。大学において、国際交流などの際に必要となる審査管理体制を整備するとともに、外国資金の受け入れを開示させるなど、透明性を確保する取り組みを通じて、研究が公正に行われるようにしていく」と述べました。

そして、コメ政策をめぐり「当面の需給の安定に向け、新型コロナによる需要減に対応する15万トンの特別枠を新たに設け、飲食店や子ども食堂などへの販売や提供を支援する」と述べました。

政治とカネの問題・IR誘致計画について

また岸田総理大臣は、かつて検察の捜査対象となった自民党の甘利幹事長の政治とカネの問題をめぐり、野党側が開示を求めた調査報告書について、みずからは見ていないとしたうえで「説明責任の在り方は、それぞれの政治家がみずから判断すべきもので、政治家はその責任を自覚し、国民に疑念を持たれないよう、常に襟を正すべきだ」と述べました。

このほか、カジノを含むIR=統合型リゾート施設の誘致計画について「新型コロナの影響で、国内外の人の往来は制約を受けているが、今後、わが国が観光先進国となる上で、IRは重要な取り組みだ。必要な手続きを適切に進めていく」と述べました。

自民 甘利幹事長「国全体の力を結集し日本を前に」

自民党の甘利幹事長は、党本部で記者団に対し「所信表明演説をしっかり分析し、どこに重点を置いて日本を前に進めていくか、時間軸や時系列に沿って質問したつもりだ。国全体の力を結集して前に進め 国民を1つにして目標を共有していくことで『岸田丸』が進んでいくことを代表質問を通じて示すことができた」と述べました。

立民 枝野代表「“逃げる 説明しない”を引き継いだ」

立憲民主党の枝野代表は、記者団に対し「岸田総理大臣の答弁は『逃げる、説明しない』という『安倍・菅政権』のいちばん悪いところを肥大化させ、引き継いだということが明確になった内容だった」と述べました。

そのうえで経済政策をめぐり「『この9年間、成長している』という認識の岸田氏と『成長できなかったことを前提に変えよう』というわれわれとの違いが明確になった。岸田政権はアベノミクスの恩恵を受けた『既得権層』には負担を求めない姿勢がはっきりしたので、総選挙の選挙戦を通じてしっかり訴えていく」と述べました。