アフガニスタン 米軍撤退から1か月 安定は見通せず

イスラム主義勢力タリバンが再び権力を握ったアフガニスタンからアメリカ軍が撤退を完了して9月30日で1か月となります。

タリバンの統治が進む一方、過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織によるとみられる攻撃が相次ぎ、市民が犠牲になるなどアフガニスタンの安定は見通せない状況です。

アフガニスタンでは8月30日、アメリカ軍の撤退が完了し「アメリカ史上、最も長い戦争」とも言われた20年におよぶ軍事作戦に終止符が打たれました。

再び権力を握ったタリバンは治安の確保に力を入れる一方、誘拐事件の容疑者とされる男らの遺体を、見せしめだとして公衆の前でクレーンでつるすなど、かつて人々をおそれさせた統治をほうふつとさせる行為も見せていて国内外から懸念の声が出ています。

一方、東部のジャララバードではタリバンと対立するISの地域組織によるとみられる攻撃が相次ぎ、タリバンの車両が爆発し子どもを含む市民も巻き込まれ犠牲が出ています。

また、タリバンの強硬派のグループは国際テロ組織アルカイダとの結び付きがあるとされ、アフガニスタンが再びテロの温床になるのではないかという国際社会の懸念にもつながっていて、アフガニスタンの安定は見通せない状況です。

アメリカ軍の撤退完了から1か月となった30日、首都カブールの中心部ではタリバンの戦闘員がパトロールする中、多くの人が行き交う姿が見られました。

50歳の男性は「アメリカは私たちを裏切り置き去りにした。今は支援もなく現金も銀行に凍結されている。人々は貧しく仕事もない」と不満を訴えました。

また57歳の男性は「タリバンが統治を始めてまだ1か月余りしかたっていないので、国内でのアルカイダやISの状況は把握できていないと思われ心配だ。統治の体制が整い平和になることを望んでいる」と話していました。

専門家「妥協や譲歩の姿勢見られない」

アフガニスタン情勢に詳しい中東調査会の青木健太研究員は、現在のタリバンの統治について「軍事的な勝利を収めたあと、これまで目標としてきたイスラム的統治を実現しようとしていて妥協や譲歩の姿勢は見られない」と述べました。

その理由として「タリバンは数万から十万単位の構成員からなる大きな組織で、イスラムの教えに反する問題には末端の構成員からの強い反発が予想される。さらに軍事部門が政治部門に対して強硬な姿勢を貫くよう圧力をかけているとみられ、タリバンが融和的な姿勢を示すことが難しいという構造的な問題がある」と指摘しました。
今後については「タリバンとしては一部の親しい国からの協力が得られれば、前政権への権力の分与などで妥協する必要はないと判断してもおかしくない。タリバンが強硬な姿勢を貫き国際社会と平行線が続く可能性が高い」と分析しました。

また、過激派組織IS=イスラミックステートの地域組織によるとみられる攻撃が相次いでいることについては「ISの地域組織はタリバンと敵対関係にあり、今後も攻撃を散発的に起こす可能性はある。一方で、すでに国内の支配領域を失っているとも見られていて軍事的に大規模な攻撃を連続して引き起こすような能力はないだろう」と分析しました。

そして「タリバンとアメリカはISに対する脅威の認識が共通している。今後両者が何らかの形で協力するということも想定される」と述べ、ISの排除に向けてアメリカとタリバンが協力する可能性にも言及しました。

そのうえで「20年前と比べて活動が低迷しているとはいえ、国際テロ組織アルカイダとの関係についても疑わしいと言わざるをえない。アフガニスタン国内に潜伏し国外に対して脅威を与えるという懸念はぬぐえず、引き続き十分な警戒が必要だ」と述べました。

国連支援団前代表 人道支援継続の必要性訴える

アフガニスタンの和平や人道支援などにあたるUNAMA=国連アフガニスタン支援団で去年までおよそ4年間トップを務めた山本忠通氏は、30日、日本記者クラブで記者会見を開きました。

この中で「もともとタリバンは統率がとれた組織だったが、今は軍事指導者と政治委員会との間で、どちらが重要な役割を果たしたかという議論があり、まとまる様相を見せていない」とタリバン内部の対立を指摘しました。

また「アルカイダの要人が入国し、タリバンの関係者が迎えに行ったという情報や、ISがタリバンの中でも特に過激な不満分子を勧誘し始めたという情報もある」と懸念を示しました。

一方「アフガニスタンの内外で『今のような混乱した時期には、タリバンにチャンスを与えるべきではないか』という意見もある」と指摘しました。

そのうえで「タリバンの勝利をそのまま認めることは難しいが、アフガニスタンの安定は地域全体の安定のために重要だ。放っておけばテロ組織が復活するおそれもあり、アフガニスタンのことを第一に考えて何をすべきかを見極めなければならない」と述べ、アフガニスタンの安定に向けて国際社会が足並みをそろえ、特に人道支援の分野では今後も支援を継続していく必要性を訴えました。