自民党総裁選 国内・各界での受け止めは

岸田文雄氏が自民党の新しい総裁に選ばれたことについて、国内・各界の受け止めをまとめました。

地元・広島では期待の声

岸田前政務調査会長の地元の広島市では市民から期待の声が相次いで聞かれました。

このうち、50代の会社員の男性は「地元の人だし、誠実で信頼できる人なので選ばれてよかったと思います。政治と金の問題が指摘されているのでクリーンな政治をしてほしいです。また、被爆地・広島からの総裁として、核兵器の廃絶のために日本がしっかりリードするよう取り組んでほしいです」と話していました。

50代の女性は「岸田さんに期待しています。新型コロナウイルスの感染拡大で医療従事者の方が一生懸命頑張っているので、感染の収束に向けて努力してほしいです」と話していました。

また、70代の男性は「新型コロナウイルスの感染拡大で経済が低迷しているので経済活性化に努力してほしいです。また、政治と金の問題で不信感があるので、こうした問題をただしてほしいです」と話していました。

銀座 バー経営者「営業を前提にしたコロナ対策を」

東京 銀座のバーの経営者からは、新型コロナウイルスの感染が拡大する場合でも営業を続けられる政策を求める声が上がっていました。

銀座社交料飲協会の事務所では、幹部2人がテレビで自民党総裁選挙の様子を見守りました。
岸田氏が新しい総裁に選出されると、先週、要望活動で岸田氏に面会したという保志雄一会長は「真摯(しんし)に要望などにも耳を傾けてくれそうで、大いに期待できる」と話していました。

また、亀島延昌理事長は「最近、感染者数も減り、来月から時短営業ながら営業が再開される見通しとなった。コロナ禍で飲食店は厳しい状況が続いているので、経済的な支援はもちろんだが、今後感染が拡大した場合でも休業を前提とするのではなく、営業を前提にしたコロナ対策などを検討してほしい」と話していました。

小池都知事「課題は山積み 連携を」

東京都の小池知事は都庁で記者団に対し「誠におめでとうございます。岸田氏の誠実な取り組みについてはよく存じ上げており、期待したい」と述べました。

そのうえで「東京都として、日本として、今、抱えている課題はたくさんある。目下のコロナ対策は当然だが、これからの経済の立て直しや成長産業をどのように育てていくのかなど課題は山積みで、首都・東京、そして日本がより活性化していくように連携をとりたい。仲間の1人として本当に頑張っていただきたいと期待を込めて申し上げる」と述べました。

政府の分科会 尾身会長「コロナ対策 強いリーダーシップを」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会の尾身茂会長は、NHKの取材に対し「新政権には、ワクチン接種率のさらなる向上や検査体制の拡充に加え、治療薬に素早くアクセスできるような医療体制の強化、さらにQRコードを生かした感染経路の調査や、換気のための二酸化炭素モニターといった科学技術のフル活用など、新型コロナの『総合的対策』を進めるために強いリーダーシップを発揮していただきたい。そうすれば、感染レベルを低く抑えられ、人々が少しずつ日常生活を取り戻すことができるのではないかと考えている」と話しています。

日本商工会議所 三村会頭「成長戦略の追求も同時に」

自民党の新しい総裁が選出されることについて、日本商工会議所の三村会頭は29日の定例会見で「新しい総裁には、新型コロナの出口戦略を明確にしてほしい。これが中小企業への希望になると思う。ワクチン接種の加速や医療体制の充実など、攻めの感染対策にも取り組んでほしいが、コロナばかりではなく、所得格差や経済の安全保障、東京への人口集中など国の課題も解決し、成長戦略を追求することも同時に必要だと思う」と述べ、新しい総裁には、新型コロナウイルスの対策だけでなく、成長戦略やエネルギー問題など中長期的な政策課題にも積極的に取り組んでほしいと求めました。

経団連 十倉会長「われわれの目指す経済社会の考えに近い」

経団連の十倉会長は記者団に対して「岸田新総裁が掲げる『新しい日本型資本主義』は経団連の『持続可能な資本主義』というコンセプトと軌を一にするもので、非常に期待している。成長と分配の考え方や、中間層の所得を手厚くすることなどはわれわれが目指す経済社会の姿に近い」と述べました。

そのうえで、十倉会長は「デジタル化や脱炭素などに向けて、経済界も政府と一緒になって取り組みたいので、いい関係を築いていきたい。多様性を大事にする社会にあっては対話は非常に大事なので、そういう点でも新総裁にふさわしい方だと思っている」として、コロナ禍の克服と日本経済の再生に向けて経済界も一丸となって取り組むと強調しました。

東日本大震災 被災地「復興推進を」

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市の災害公営住宅では復興を推し進めるよう求める声が聞かれました。

津波で自宅が全壊した70代の男性は「まじめそうな人なので、よかったと思う。震災から10年がたち、地元の基幹産業の水産業で雇用が創出できるよう支援してほしい」と話していました。

同じく自宅を失った70代の男性は「家を再建したかったが、経済的に厳しかった。被災者一人ひとりに手を差し伸べるようなきめ細かい政策を期待する」と話していました。

また、津波で友人を亡くしたという70代の女性は「10年半が過ぎたとはいえ、復興はまだまだ道半ばと思う。新型コロナもあって暮らしが苦しくなった人も大勢いるので、被災地を訪れて現状を見てほしい」と話していました。

広島 被爆者団体「核兵器禁止条約に批准を」

広島県被団協の箕牧智之理事長代行は「広島の総裁として核兵器禁止条約の締約国会議にオブザーバーとして参加し、日本の存在感を示してほしい。いわゆる『黒い雨』を浴びた人への救済については被爆者の立場に立って進めてほしい」と話していました。

また、もう1つの広島県被団協の佐久間邦彦理事長は「世界の国々の橋渡しをするためにも日本政府の立場を明らかにし、核兵器禁止条約に批准してほしい。いわゆる『黒い雨』を浴びた人の高齢化が進む中、救済の基準を決めて被爆者健康手帳の審査や発行を急いでほしい」と話していました。

拉致被害者家族会 飯塚代表「拉致問題解決の意思表示を」

北朝鮮による拉致被害者の家族会代表で、田口八重子さんの兄の飯塚繁雄さん(83)は「お願いしたいのは拉致被害者全員の帰国です。今まで多くの総理大臣や拉致問題担当大臣が対応してきたが、何の成果もなかった。今度こそ、総理大臣として『私の手で拉致問題を解決する』とはっきり意思表示してほしい。いつ被害者が帰国するのか具体的な計画を示して動いてほしい。とにかく被害者を取り返してほしいと願っています」とコメントしています。

北方領土 元島民「返還に道筋を」

北方領土問題をめぐっては「北方墓参」などの交流事業が新型コロナウイルスの感染拡大を受けて去年に続いてことしもすべて中止になっていて、日ロ間の領土交渉も進展が見られていません。

自民党の新しい総裁に岸田前政務調査会長が選出されたことについて、国後島出身の宮谷内亮一さん(78)は「外務大臣の経験を生かし、領土問題を一歩でも前進させてほしいと期待している。プーチン大統領との対面による会談を実現させ、元島民が生きている間に島の返還に道筋をつけてほしい」と話していました。

全国知事会長 平井知事「コロナ乗り越える力強い日本を」

全国知事会の会長を務める鳥取県の平井知事は「岸田新総裁は『誰ひとり取り残さないコロナ対策』という全国知事会のテーマにも向き合おうとしている。辣腕(らつわん)を振るってもらって、そのリーダーシップをもとに新型コロナを乗り越えていける力強い日本をつくってもらえればと考えている」と述べました。

日本学術会議 執行部の1人「任命問題 速やかに解決を」

会員の候補6人が菅総理大臣から任命されなかった日本学術会議の執行部の1人は「会員の任命権者である内閣総理大臣が交代することになるため、新たな総理大臣には6人を任命していただくなど、任命問題を速やかに解決してもらうことを強く望んでいる。岸田氏は総裁選を通じて『人の話を聞く力が誰よりもすぐれている』と強調しているため対話の窓口は開かれていくと期待している。アカデミアと政治の関係を修復するため学術会議としても協力関係を築くための努力を続けていきたい」と話しています。

経済関係 専門家「中間層の復活を」

雇用政策や所得の格差に詳しい一橋大学経済研究所の小塩隆士教授は「安倍政権や菅政権が進めてきた政策である程度の経済成長を実現した点は評価できるが、その成果が生活の向上に十分に結び付いてこなかった。所得分布は全体として低い方にシフトしていて所得が低い層の厚みが増している。貧困に陥るリスクがより身近なものになり、社会保障というセーフティーネットからはずれてしまう可能性が高くなっている」と指摘しています。

そのうえで新しい政権に求められる政策については「一昔前の日本経済は分厚い中間層が形成されていてそれが産業を支えていたが、現在はスリムにそして弱くなっているためこの中間層を復活させる必要がある。そのためには新しい産業の創出など経済成長を促進する政策が必要になると同時に、非正規雇用で働く人などのセーフティーネットの在り方を見直して生活基盤をより強固にする必要がある」と述べています。

政治学 専門家「岸田氏に4つの勝因」

政治学が専門で一橋大学の中北浩爾教授は、今回の総裁選について「候補者4人のうち半数が女性で、多様な主張を持つ候補者によって争われた充実した総裁選だった。全体として世代交代が進んだのではないか」と指摘しました。

そのうえで、岸田氏の勝因について、自民党の中で真ん中に近い政策を意図的に掲げたこと、派閥のリーダーとして安定した政権運営が期待できること、いち早く立候補に名乗りを上げ十分な準備を行っていたこと、課題だったアピール力に磨きをかけたこと、の4つを挙げました。

政権運営の課題については「新型コロナウイルス対策は、これまで首相のことばが国民に届いていないという声があり、森友学園や日本学術会議の問題などでは、透明性の確保や説明責任が十分に果たされていないという指摘もあった。安倍政権や菅政権のもとで行き過ぎとも言われた官邸主導をどうしていくのか。岸田氏には多様な民意を吸い上げていくことや、政治家と官僚の適切な役割分担を再構築していくことが求められる」と指摘しました。

さらに中北教授は、岸田氏の政権が長期政権になるかどうかは、来年夏までに行われる2つの国政選挙の結果にかかっていると分析しています。

中北教授は「2つの選挙のいずれかで大きくつまずくと、岸田氏が短期政権で終わるだけでなく、一気に政権交代モードに突入する可能性も否定できない。向こう半年間は相当大きな局面で、岸田氏が、国民にアピールするしっかりした政策を作れるか、そのために官邸を中心にチーム力のある陣容を整えられるかが鍵になる」と述べました。