北朝鮮 弾道ミサイル発射か EEZには飛来していないと推定

28日朝、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるもの1発が東の方向に発射されました。

これまでのところ日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されておらず、防衛省は、飛んだ距離や落下地点などについて詳しい分析を進めています。

「日本のEEZには飛来していないと推定」

防衛省によりますと、28日午前6時38分ごろ、北朝鮮内陸部から弾道ミサイルの可能性があるもの1発が東の方向に発射されたということです。

防衛省関係者によりますと、日本の領域や排他的経済水域には飛来していないと推定されるということで、これまでのところ、日本の航空機や船舶の被害などの情報は確認されていません。

防衛省は、発射されたものが弾道ミサイルかどうか、また、飛んだ距離や落下地点などについて詳しい分析を進めています。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したとすれば変則的な軌道で飛行した後、日本の排他的経済水域の内側に落下したと推定されている今月15日の発射以来です。

水産庁「日本の漁船に被害の情報なし」

北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたことを受けて、水産庁は関係団体を通じ日本の漁船に被害がないか確認を進めています。

水産庁によりますと午前9時時点で、被害の情報は入っていないということです。

菅首相「発射の状況について現在分析中」

菅総理大臣は午前9時ごろ、総理大臣官邸で記者団に対し「本日早朝、北朝鮮が弾道ミサイルの可能性のあるものを発射した」と述べ、情報収集や分析に全力を挙げ、国民に対し、迅速・的確な情報提供を行うこと、航空機や船舶などの安全を確認すること、不測の事態に備えて万全の態勢をとることを指示したと明らかにしました。
そのうえで「政府としては、これまで以上に警戒、監視を強め、発射の状況について現在分析中だ」と述べました。

中山防衛副大臣「落下地点など 現在分析中」

中山防衛副大臣は、防衛省で記者団に対し「弾道ミサイルであるか否かも含め、情報をもとに総合的、専門的な分析を行う必要があり、現時点で確たることを申し上げることは差し控える。速度、飛しょう距離、高度、変則軌道の可能性、落下地点も現在分析中だ」と述べました。

また、記者団が「情報の発信が遅いのではないか」と質問したのに対し「情報収集は非常に専門的な角度から行わなければならず、各方面との連携作業も必要だ。充実した内容を、適宜、国民にお知らせすべき時が来たら、お知らせすることに変わりはないので、一定程度の時間、分析を要していることはご理解いただきたい」と述べました。

一方、岸防衛大臣が体調不良で公務を取りやめていることの影響について「随時、連絡を取れる状況にあり、北朝鮮のミサイルの件も含め、必要な指示は大臣から出されている。問題があるという指摘はあたらない」と述べました。

韓国軍 “ミサイル 新型の可能性も”

北朝鮮が発射したミサイルについて、韓国軍の関係者は、高度や速度などにこれまでと異なる特性がみられるとして、新型の可能性もあるとする見方を示しており、韓国軍がアメリカ軍とともに詳しい分析を進めています。

韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が28日午前6時40分ごろ、北部チャガン(慈江)道のムピョンリ(舞坪里)付近から、東に向けて短距離ミサイル1発を発射したことを明らかにしました。

韓国軍はこれまでのところ飛行距離や高度などを明らかにしていませんが、韓国の通信社、連合ニュースは、韓国軍による初期の分析結果として、飛行距離は200キロに満たず、高度は30キロ程度だったと伝えています。

今回のミサイルについて、韓国軍の関係者はNHKの取材に対し、高度や速度などにこれまでと異なる特性がみられるとして、新型の可能性もあるとする見方を示しており、韓国軍がアメリカ軍とともに詳しい分析を進めています。

北朝鮮は今月に入って、長距離巡航ミサイルや短距離弾道ミサイルを相次いで発射する一方で、今回の発射に先だって、キム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹のキム・ヨジョン(金与正)氏が、条件付きで南北首脳会談を再び行う可能性にも言及していました。

韓国メディアは、北朝鮮のねらいについて、南北の連絡ルートの再開を求めている韓国側の出方を見極めようとしているなどと報じています。

米国務省「周辺国や国際社会を脅威にさらす」

アメリカ国務省の報道担当者は「北朝鮮のミサイル発射は、国連安保理の一連の決議に違反しており、周辺国や国際社会を脅威にさらすものだ」として厳しく非難しました。

そのうえで「われわれは北朝鮮への外交的なアプローチを続け、対話に取り組むよう求めていく。日本と韓国の防衛に対するアメリカの関与は揺るぎないものだ」としています。

米軍「日韓の防衛への関与は断固たるもの」

アメリカのインド太平洋軍は27日、声明を発表し「我々はミサイルの発射を把握しており、同盟国などと緊密に協議している。今回の発射はアメリカの人々や領土、あるいは同盟国への差し迫った脅威ではないと判断しているが、北朝鮮の不正な兵器の計画が事態を不安定化させることを浮き彫りにするものだ」としています。

そのうえで「日本と韓国の防衛に対するアメリカの関与は断固たるものだ」として日韓両国と連携する姿勢を強調しました。

北朝鮮 国連大使 核・ミサイル開発を改めて正当化

北朝鮮の国連大使が国連総会で演説し、核・ミサイル開発を推し進めていることについて「アメリカが核で脅しているからだ」と述べ自衛のための措置だと改めて正当化しました。

ニューヨークに駐在する北朝鮮のキム・ソン国連大使は27日、国連総会で演説しました。このなかでキム大使は「朝鮮半島で恒常的な緊張の激化と対立の悪循環を抜け出せない根本的な原因は、われわれに対する敵視政策のためだ」と述べ、先月アメリカ軍と韓国軍が合同軍事演習を行ったことなどを強く非難しました。
キム大使は、北朝鮮が核・ミサイル開発を推し進めていることについて、「世界最大の核保有国であるアメリカがわれわれを敵視して核で脅しているからだ」として自衛のための措置だと改めて正当化しました。
一方で、こう着状態となっているアメリカとの交渉について「アメリカが行動で敵視政策を撤回する決断をみせるならば、われわれもいつでも喜んで応える準備ができている」と述べ、アメリカが先に譲歩することを条件に交渉の再開に応じる姿勢も示しました。
韓国軍によりますと、北朝鮮は28日午前6時40分ごろ飛しょう体を発射していて、キム大使の演説はこの直後に行われました。

茂木外相「国際社会に深刻な脅威」

茂木外務大臣は閣議のあとの記者会見で「詳細は現在分析中だが、これまでの弾道ミサイルなどのたび重なる発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、日本と地域の平和と安全を脅かすものであり、日本を含む国際社会全体にとって深刻な脅威だ」と述べました。

そのうえで、茂木大臣は「先週、ニューヨークで日米韓外相会談に出席し、北朝鮮の完全な非核化に向けた外交的な取り組みの強化、安保理決議の完全な履行、地域の抑止力強化といった観点から、日米韓の連携を一層進めていくことを確認した。今後もアメリカをはじめとする関係国と引き続き緊密に連携していきたい」と述べました。

弾道ミサイルを発射ならば今月15日以来

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したとすれば今月15日以来です。

防衛省によりますと、前回は、北朝鮮内陸部から2発の弾道ミサイルが発射され、変則的な軌道でおよそ750キロ飛行し、石川県能登半島沖の舳倉島の北、およそ300キロの排他的経済水域に落下したと推定されています。

北朝鮮はおととし、13回、合わせて25発の弾道ミサイルなどを発射し、去年は3月の1か月間で4回、合わせて8発の発射が確認されていました。

最近の北朝鮮のミサイル発射

北朝鮮は、ミサイルの発射を繰り返すことで能力の向上を図って来ました。

北朝鮮はおととし、短距離弾道ミサイルなど合わせて25発を発射し、去年は短距離弾道ミサイルを合わせて8発発射しました。

そしてことしは3月21日に西部のピョンアン(平安)南道オンチョン(温泉)付近から巡航ミサイルと推定される2発を発射したのに続き、同じ月の25日には東部のハムギョン(咸鏡)南道ハムジュ(咸州)付近から日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射しました。

さらに今月は11日と12日に新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したとしているほか、15日に西部のピョンアン(平安)南道ヤンドク(陽徳)付近から日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射し、日本の排他的経済水域の内側に落下したと推定されています。

北朝鮮のミサイル発射 多様化も

北朝鮮は、場所や方法などを変えてさまざまなミサイルの発射実験を繰り返しながら、関係国による探知や対応が難しいミサイル技術の向上を図っていると指摘されています。

キム・ジョンウン総書記は、ことし1月、朝鮮労働党大会での演説で「核兵器の小型化、軽量化を発展させ、戦術核兵器を開発し、超大型核弾頭の生産も持続的に推し進める」などと述べ、核・ミサイル開発を一層強化していく方針を表明しました。

すると北朝鮮は3月、西部のピョンアン(平安)南道から巡航ミサイルと推定される2発を発射したのに続き、東部のハムギョン(咸鏡)南道から日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射しました。

韓国軍によりますと、いずれも飛行距離はおよそ450キロ、高度はおよそ60キロで、防衛省は、これまでより低い軌道で飛行していて新型の弾道ミサイルだったとしています。

さらに今月に入って、北朝鮮は、11日と12日に新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したと発表。「わが国の領土と領海の上空に設定されただ円や8の字の軌道に沿って2時間6分20秒飛行し、1500キロ先の目標に命中した」と主張しました。

巡航ミサイルは一般的に、敵に見つかりにくいよう地形にまぎれて低い高度で飛行するため、レーダーで捉えるのが難しいとされています。

また、今月15日には、ピョンアン南道で線路上の列車から日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発が発射され、日本の排他的経済水域の内側に落下したと推定されています。

国営メディアは翌日、新たに組織された「鉄道機動ミサイル連隊」が山岳地帯で射撃訓練を行い、立ち会った党の幹部が「同時多発的に甚大な攻撃を加えられる効果的な手段になると評価した」と伝えました。

防衛省は、このミサイルが低空を変則的な軌道で飛行したため、落下地点の見極めが難しかったとしています。

専門家からは「巡航ミサイルと弾道ミサイルが一緒に飛んでくるような事態も考えなければいけなくなる」などとして、総合的なミサイル防衛を強化する必要性を指摘する声が出ています。

中国 “互いの懸念を解決する方法 模索求める”

北朝鮮が9月に入って相次いでミサイルを発射していることについて、中国外務省の華春瑩報道官は28日の記者会見で「各国は歩み寄り、互いの懸念をバランスよく解決する方法を模索し、ともに朝鮮半島問題の政治的な解決のプロセスを推し進めるよう求める」と述べ、改めて関係各国に自制と対話を呼びかけました。

専門家「国防力強化に基づく措置」

北朝鮮情勢に詳しい南山大学の平岩俊司教授は、北朝鮮が9月に入ってミサイルの発射を繰り返している意図について「いろいろな種類のミサイルの発射実験を行って実戦配備を進めるのは、国防力を強化するとした、ことし1月の朝鮮労働党大会の決定に基づく措置だ」と述べました。

そのうえで「アメリカとの合意に沿って、核実験やICBM=大陸間弾道ミサイルの発射実験は封印しつつ、自衛の範囲だとして韓国軍や在韓・在日アメリカ軍が射程に入る兵器の開発は続け、体系的な国防力を作ろうとしている」と分析しました。

また、キム・ジョンウン総書記の妹のキム・ヨジョン氏が条件付きで南北首脳会談を再び行う可能性にも言及した談話の発表から3日後の発射というタイミングについては「対話の可能性を示しながら、もう一つの可能性として軍事力の強化を示す意味もあった」と指摘しました。

さらに平岩教授は「米韓両国が敵視政策を改めれば、対話の可能性は十分ありうるとする、北朝鮮の主張の表れではないか。アメリカをどう動かすかが最重要課題であり、北朝鮮が思うような形で韓国がアメリカに働きかけるよう望んでいる」として、アメリカの同盟国で、南北関係の改善を目指す韓国に、揺さぶりをかけるねらいもあるという見方を示しました。