リニア新幹線“十分な対策で水量の影響抑えられる”中間報告案

水資源に悪影響が出ることへの懸念から静岡県が着工を認めていない「リニア中央新幹線」について国の有識者会議は26日の会合で、十分な対策をとれば影響は抑えられるとした中間報告の案を改めて示しました。
これに対し出席者からは地元の信頼を得ることが重要だという意見が相次ぎ、引き続き議論することになりました。

リニア中央新幹線は東京・品川と名古屋を最短40分で結ぶ次世代の交通の大動脈とされ、JR東海がこの区間での2027年の開業を目指していますが、静岡県はトンネル工事によって地元住民の生活を支える大井川の水量が減るなどの悪影響が出る懸念があるとして、県内での着工を認めていません。

26日は、国土交通省が仲裁に入る形で設けた有識者会議の会合が5か月ぶりに開かれ、十分な対策をとれば水量への影響は抑えられるとした中間報告の案が前回に続いて示されました。

案では現時点での解析結果として、トンネル内に湧き出した地下水の通り道を造り、すべての量を大井川に戻せば、中流や下流の地域での水量は維持されるなどとしています。

そのうえでJR東海に対し、大井川の水を利用する人たちの理解や、静岡県などの自治体の納得を得るよう求めることも盛り込みましたが、出席した委員からは地元の「信頼」を得ることが何より重要だとして、表現を再検討するべきだという意見が相次ぎました。

このため有識者会議は次回の会合でも引き続き議論したうえで、中間報告の取りまとめを目指すことになりました。

静岡県「JRにはしっかりとした説明を求めたい」

会合のあと、静岡県の難波喬司副知事は記者会見で、「JR東海の説明の姿勢はこれまで不十分だったが、およそ1年半の有識者会議を通して質や量が充実してきた」と述べました。

そのうえで、「中間報告の内容は県民にもよく分かるよう説明が必要だ。JR東海の資料には納得できない点もあり、今後、しっかりとした説明を求めたい」と述べ、JR側は県民の信頼を得るための丁寧な対応が必要だという考えを示しました。

JR東海「信頼関係を醸成していきたい」

会合のあと、JR東海の宇野護副社長は記者会見で、「有識者会議の科学的、工学的な検討はまとめるところにきたが、この結論が正しいから理解してくださいという態度ではなく、静岡県や大井川の流域市町の方々とコミュニケーションを重ね、信頼関係を醸成していきたい」と述べました。

これまでの経緯

JR東海が東京 品川と大阪を結んで建設を進めるリニア中央新幹線は、2027年に品川・名古屋間の開業を目指しています。

ただ、静岡県内の工事を巡って県とJR東海の協議が難航し、計画通りの開業は難しくなっています。

静岡県側が指摘しているのが、大井川の地下で行われるトンネル工事です。

工事で川の水が減少し、流域の水資源や生態系に悪影響が出ることを懸念しているのです。

静岡県は、2018年11月、有識者を交えた専門部会を設置。

JR東海に対し、工事によってトンネル内に湧き出す水を川に戻す方法などの説明を求めましたが、協議は進展しませんでした。

国土交通省は、リニアの早期開業の実現と、水資源などへの影響回避を両立する必要があるとして調整に乗り出し、去年4月に有識者会議を設置。トンネル工事で懸念される川の水量の減少を防ぐ対策や、中下流域の地下水への影響を中心に科学的・工学的な議論を進めてきました。

一方、JR東海の金子社長は去年6月に静岡県の川勝知事と初めて会談。

工事の準備作業を早期に始めることに理解を求めましたが、川勝知事の理解を得られず、この時点で、目標とした2027年の開業が難しくなりました。

こうした中、国土交通省の有識者会議は、ことし4月、大井川の地下工事に伴い水の通り道となる別のトンネルを造って湧き水を川に戻すなどの対策をとれば、中下流域の水量は維持され、地下水への影響も極めて小さいという案を示していました。

今月18日には、大井川の流域にある9つの市や町のトップとJR東海の金子社長が会談。

これまで県が窓口となって協議をしていたため、直接、意見交換をするのはこれが初めてで、自治体側からは、水資源への影響について十分な説明を求める住民の声などが伝えられました。

JR東海は、こうした意見交換を今後も続けて不安の払拭に努めたい考えですが、工事の許可の権限を持つ静岡県の理解を得られるかどうかは、依然としてメドが立っていません。