3歳男児殺害 大阪府 行政の対応を外部有識者らの部会で検証へ

大阪 摂津市で、3歳の男の子に熱湯をかけて殺害したとして、母親の交際相手が逮捕された事件を受けて、大阪府の吉村知事は、外部の有識者らでつくる検証部会にはかり、行政の対応などに問題がなかったか検証する方針を明らかにしました。

大阪府の吉村知事は24日午後、記者団に対し「亡くなった3歳の男の子のことを思うと胸が痛いし、ことばがない」と述べました。

そのうえで「摂津市で相談を受けていたということだが、府の児童相談所も情報共有していた案件でもある。悲惨な事件を防ぐことができなかったのか、大人や行政が命を守ることができなかったのか、検証する必要がある」と述べ、外部の有識者らでつくる検証部会にはかり、事実関係の確認や、行政の対応などに問題がなかったか検証する方針を明らかにしました。

吉村知事は「検証部会には、どこかで防ぐことができなかったのか、仕組みを変えるべきところはないかも、しっかり検証してもらいたい」と述べ、来週にも部会での検証を開始したいという考えを示しました。

事件までの経緯

摂津市などによりますと、亡くなった新村桜利斗(おりと)くんは、母親とともに3年前の平成30年10月に別の自治体から転入してきました。

この際、周囲に子育てを支援する人がいないことなどから「要保護世帯」として引き継がれたということです。

このため児童相談所の「吹田子ども家庭センター」とともに会議を開き、面談などの定期的な見守り支援が始まりました。

そうしたなか、母親は去年10月に松原容疑者と知り合って交際を始め、ことし5月からは現場のマンションで同居していました。

そのころから、市には虐待を疑わせる情報が相次いで寄せられました。

ことし5月には母親が市役所に面談に来た際「交際相手が子どもをたたいた」と話し、担当者はその後、桜利斗くんの耳にあざがあることを確認しました。

このため、6日後に市の担当者が自宅を訪れ、松原容疑者とみられる人物に対し「たたくことはだめだ」と伝えると、相手はうなずいて「わかった」と答えたということです。

このころ、母親が交際相手について「週末来るだけで同居はしていない」と話したことなどから、市は「同居の実態はない」と判断していました。

6月には母親の知人らから「両ほほがあざになっている」「放っておいたら子どもが殺される」などと情報提供がありました。

市の担当者はその日のうちに電話しましたが、母親が「特に変わったことはない」と答えたことや、翌日にあった桜利斗くんの健診でけがが確認されなかったことなどから、緊急性は高くないと判断したということです。

事件の2週間前には、母親と桜利斗くんは市の親子教室に参加し、担当者が面談を行いましたが、その際も特に変化はないと判断していました。

摂津市によりますと、この家庭について、市などの関係機関が集まる会議で児童相談所にも情報を共有し、そのうえで市が中心となって支援することを確認していたということです。

摂津市 “緊急性は高くないと判断”

今回のケースについて、摂津市はその都度リスクを検討し、緊急性は高くないと判断したとしています。

摂津市によりますと、ことし5月と6月に桜利斗くんへの暴力の情報を受け、その後開かれた児童相談所の「吹田子ども家庭センター」などとの会議で情報を共有したということです。

この際、桜利斗くんのけがが軽かったことや、交際相手からの継続的な暴力が確認されなかったこと、6月に、6回にわたって母親と行った面談でも異常は確認できなかったことなどから、緊急性は高くないと判断したということです。

このため児童相談所に所管を移す手続きは行わず、継続して市が対応すると決めたということです。

摂津市教育委員会事務局の橋本英樹次世代育成部長は「継続的に支援を行い、虐待の情報提供にも適切に対応してきた。幼い子どもが亡くなられたことを重く受け止め、二度と同じようなことを起こさないために、今後、関係機関と協力し原因や背景の検証を行いたい」と話していました。

児童相談所 “介入必要だと認識せず”

大阪府の児童相談所「吹田子ども家庭センター」は、今回の事件について、緊急性は低く介入が必要だと認識していなかったとしています。

児童相談所によりますと、桜利斗くんと母親が摂津市に転入して以降、支援内容を検討する会議で市から情報が共有されていて、桜利斗くんへの暴力の情報についても把握していたということです。

しかし、市の担当者が母子と面会を行うなど十分な見守りの体制ができているとして、緊急性は低く、児童相談所の介入が必要なケースだと認識していませんでした。

摂津市との間では市が中心となって対応していくことをたびたび確認し、子どもの一時保護などができる児童相談所に、市から所管を移す手続きは取られなかったということです。

こうしたことから、児童相談所では虐待などとして扱われることはありませんでした。

大阪府では今年度から、児童相談所が虐待などとして扱った場合、例外なくすべてのケースを警察に共有することになっていますが、今回はその対象にならなかったということです。

児童相談所は今回の対応について、桜利斗くんの安全が確認できていたことなどから、問題はなかったとしています。

大阪府吹田子ども家庭センターの阪本秀樹次長は「市の対応状況をみて、われわれが介入する必要はなく、市が継続して対応することで問題ないと判断していた。事件に至ったのは想定外だった。このような結果となり、市との連携の在り方を検討していきたい」と話していました。

専門家「警察など含め多機関で情報共有を」

警察庁OBの弁護士で、児童虐待防止に取り組むNPO法人「シンクキッズ」の後藤啓二代表理事は、多くの機関が情報を共有して対応する重要性を強調しました。

今回の事件をめぐる摂津市の対応について、後藤代表理事は「判断が甘かったのではないか。ことし6月に知人から『殺されてしまうかも』という危険性を示す情報提供があり、以前に寄せられた保育所からのけがの連絡も踏まえると、かなり危険な状態だと判断すべきだった」と指摘しました。

情報共有を受けていた児童相談所の対応についても「警察に連絡しなかったのは大きな問題だ」としたうえで「市と児童相談所と警察が連携して、もっと家庭訪問したり母親や同居する交際相手に注意や指導をしていくべきだった」と指摘しました。

そのうえで「親は虐待を隠す傾向にあり、子どもは被害を訴えられず、児童虐待の正確なリスクや緊急性を判断するのは非常に難しい。だからこそ、警察などを含めたできるだけ多くの機関に共有し、多くの目と足で見守るという体制づくりが重要だ」と話していました。