東京都 自治体の間でワクチンを融通する動き広がる

新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、東京都内の自治体の間でワクチンを融通する動きが広がっています。このうち新宿区では、渋谷区から受け取った1万回分余りのワクチンを活用し、22日から夜間の接種を始めました。

新宿区では、国からのワクチンの供給量が減ったことなどを受けて、ことし7月の時点で17あった集団接種会場を10に減らしています。

希望しても接種を受けられない人もいたということで、21日の時点で2回の接種を終えた人は40代で43%、30代で40.4%、20代で31%にとどまっていました。

このため新宿区が都内の複数の自治体にワクチンの提供を依頼したところ、隣の渋谷区から1万1700回分のワクチンを融通してもらうことになりました。

このワクチンの活用で、新宿区戸山の集団接種会場では、これまで午後5時までだった接種時間を、22日から午後8時までに3時間延長し、夜間の接種を始めることにつながりました。

接種に訪れた女子大学生は「キャンセル待ちでようやく予約が取れたので、こうした融通が広がって、より多くの人が打てるのはいいことだと思います」と話していました。

新宿区の楠原裕式ワクチン接種担当課長は「渋谷区から融通いただいたおかげで区民への接種を進めることができ、非常に助かりました。夜間の接種ができるので、若い人や働く世代の接種につながればと思っています」と話していました。

一方、渋谷区はワクチン接種の予約に空きがある状態で「接種を希望する区民に影響はない」としています。

自治体の間でワクチンを融通する動きはほかの自治体にも広がっていて、港区は、異物の混入でワクチンが使用できなくなり、台東区と板橋区から合わせて5000回分を受け取ったほか、狛江市は、接種枠の一部を世田谷区民に提供しました。

東京都 融通可能か調査

東京都は、都内で、新型コロナウイルスのワクチンに余裕がある自治体が、ほかの自治体に融通できるかどうかなどを調査しています。

調査は、都内の一部の自治体でワクチンが足りずに予約を制限するなどの影響が出ていることを受けて、自治体間でワクチンの融通ができないか調べるために、すべての区市町村を対象に行われています。

接種が完了する時期や接種率の見通しのほか、ワクチンがどのくらい不足しているのかや、余分があるかどうかなどを聞いています。

都は、調査で全体状況を把握し、ニーズを見ながら自治体の間でワクチンの融通を行い、ことし11月中に希望者全員への接種を完了させたいとしています。

専門家「今後に備えるべく 仕組み作りが必要」

自治体の間でワクチンを融通し合う動きが広がっていることについて、国際医療福祉大学の松本哲哉教授は「自治体によってワクチンの在庫に差が出ているので、情報共有をしながら、多少であっても余裕があるところから、ないところへ供給する動きは大事だと思う。一方で、自治体どうしの融通は限定的でしかないので、全体をふかんして調整するやり方を導入していく必要があり、国や都も今までのノウハウを生かして今後のプランを作っていかないといけない。いま新たな感染者数が多少落ち着いているのであれば、今後の感染の波に備えるべく、ワクチン接種の仕組み作りを進めることが必要になる」と話していました。