ワクチン“子どもに拡大”申請 専門家「保護者納得し接種を」

ファイザーとビオンテックが新型コロナウイルスのワクチン接種の対象年齢を、5歳から11歳の子どもにも拡大するよう、アメリカのFDA=食品医薬品局に申請すると発表しました。これについて専門家は、学校などでの感染が起きている中、対処する一つの手段ができることには意義があるとしたうえで「保護者がしっかりと理解し、納得して接種を受ける必要があり、ふだんの体調をよく知っているかかりつけ医で行うことが大切だ」と指摘しました。

アメリカの製薬大手ファイザーとドイツの企業ビオンテックは、今は新型コロナウイルスワクチンの接種の対象になっていない、5歳から11歳の子どもについても、ワクチン接種による中和抗体の増加や安全性が確認できたとして、この年齢層の子どもにも接種対象を拡大するよう、近くアメリカのFDA=食品医薬品局に申請すると発表しました。

これについて、小児科の医師でワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫 特任教授は「学校での感染、学童保育での感染、それに習い事での感染が起きている中、対処する一つの手段ができることには意義がある」と述べました。

また「海外の臨床試験でおかしなデータは出ておらず、子どもにとって危険なワクチンということはない。海外のものであっても、データがしっかりしていて、流行が続いているのであれば、国内で無理に臨床試験を行う必要はないのではないか」と話しています。

その一方で、中山特任教授は「アメリカでは社会全体で接種率が伸び悩んでいる中で、学校でのクラスターが増えているので、小学生でも接種できるようにすることが求められているのだろう。日本でも基礎疾患がある子どもたちは接種の優先順位が高いが、健康な子どもは感染してもほとんどが軽症だ。ワクチンの副反応で発熱することもあり、中には発熱によって、けいれんを起こしやすい子どもたちもいる。保護者がしっかりと理解し、納得して接種を受ける必要があり、接種をするときは、ふだんの体調をよく知っているかかりつけ医で行うことが大切だ」と指摘しました。

米では5月に12歳~15歳にも拡大 約3週間のちに日本も

ファイザーとビオンテックが開発した新型コロナウイルスのワクチンは、アメリカでことし5月、接種の対象が12歳から15歳にも拡大され、日本でも、そのおよそ3週間のちに、この年代での接種が始まりました。

ファイザーなどは、ことし3月31日、臨床試験の結果、12歳から15歳への接種の安全性と有効性を確認したと発表し、その後、この年代も接種対象とするようアメリカのFDA=食品医薬品局に申請しました。

これを受けて、5月10日にはFDAが緊急使用の許可の対象を拡大し、5月13日にはアメリカで、この年代の接種が始まりました。

日本でも、ファイザーが厚生労働省に海外での臨床試験のデータを提出したのを受けて、厚生労働省が5月28日に接種が可能な年齢に、12歳から15歳も加えることを決め、専門家部会で報告したあと、5月31日には公的接種の対象となり接種が始まりました。
5歳から11歳までの接種について、ファイザーのプレスリリースによりますと、アメリカなどでの臨床試験で、この年代の2268人を対象に通常の3分の1の量の成分が含まれたワクチンを2回接種し、1か月後にウイルスの働きを抑える中和抗体の値を調べたところ、強い免疫反応が確認されたとしています。

中和抗体の値は、16歳から25歳が通常の量の成分が含まれたワクチンの投与を受けた場合と変わらず、副反応も、おおむね同様だったということで、ファイザーは今後、FDAにデータを提出し、接種対象を5歳から11歳にも拡大するよう申請するとしています。