米大統領 英・豪と新たな安全保障の枠組み設置へ 中国を念頭に

アメリカのバイデン大統領は、海洋進出を続ける中国を念頭にイギリス、オーストラリアとの3か国による安全保障の枠組みを新たに設け、オーストラリアの原子力潜水艦の配備を技術面などで支援する考えを示しました。

アメリカのバイデン大統領は15日、イギリスのジョンソン首相、オーストラリアのモリソン首相とオンラインで結んだ会見を開き、インド太平洋地域の平和と安定のため3か国による「AUKUS」と呼ばれる新たな安全保障の枠組みを創設すると発表しました。

そのうえで、海洋進出を続ける中国を念頭に「急速に高まる脅威に対抗するため、各国が最新鋭の能力を持つ必要がある」と述べ、オーストラリアが初の原子力潜水艦を配備するにあたり、技術面などで支援する考えを示しました。

一方、バイデン大統領は「潜水艦に核兵器を搭載することはない」と述べ、核の拡散の懸念はないと理解を求めました。

アメリカ政府高官は、「過去にアメリカが原子力推進の技術を提供したのは1958年のイギリスだけだ」として、異例の支援であることを強調したうえで、航続距離が長く、能力の高い原子力潜水艦の配備は、インド太平洋地域での抑止力につながると説明しています。

中国に対抗する枠組みとしてバイデン大統領は、日本、オーストラリア、インドを合わせた4か国による「クアッド」についても、来週、首脳会合を開催する予定で、多国間の連携を一層強化していきたい考えです。

米英豪 IAEAに事前通知

IAEA=国際原子力機関は、アメリカとイギリス、それにオーストラリアの安全保障の枠組みによる原子力潜水艦の配備について、3か国から事前に通知を受けていたことを16日、明らかにしました。

3か国は目的について「核不拡散体制を維持するため」と説明し、オーストラリアによる核兵器の保有にはつながらないと強調しているということです。

オーストラリア首相「国民の安全を守るもの」

オーストラリアのモリソン首相は、首都キャンベラで記者会見を開き、アメリカとイギリスとの3か国間の新たな安全保障の枠組みについて「もっとも歴史が長く信頼し合った友人たちとの間で永遠に続くパートナーシップであり、オーストラリアの安全保障、そして国民の安全を守るものだ」と強調しました。

モリソン首相は、記者から「オーストラリアは中国に対する軍事行動を活発化させるのか」と問われると「新たな枠組みは地域の安全を確保するもので、南シナ海であっても、どこであっても、さらに自由で開かれたインド太平洋の実現につながるだろう」と述べ、中国への言及は避けつつも、海洋進出を続ける中国を念頭に、アメリカやイギリスなど価値観を共有する各国との連携が重要だとの認識を示しました。

また原子力潜水艦の配備に関連してモリソン首相は「核兵器の獲得を目指すのではなく核の不拡散を順守する」と強調しました。

一方、国を挙げて核廃絶に取り組む隣国ニュージーランドのアーダーン首相は会見で「原子力を動力とするいかなる船舶もニュージーランドには入ることはできない」と述べました。

オーストラリアのねらいは

オーストラリアは、海洋進出を続ける中国に対して安全保障面での危機感を強めていて防衛能力を強化する方針を示しています。

その一環として現在保有している潜水艦の老朽化が進んでいることから、フランスと共同で5年前から新たな潜水艦の開発計画を進めていました。

しかし今回、アメリカとイギリスの支援で原子力潜水艦が配備されるのに伴ってフランスとの間ですでに決まっていた共同開発計画は破棄されます。

原子力潜水艦が配備されればオーストラリアでは初めてとなり、核兵器を保有しない国で導入されるのは極めて異例ですが、モリソン首相は16日の会見で「オーストラリアは核兵器を保有する意思はない」と強調しました。

一方、地元メディアは国内に原子力産業がなく、専門知識を持つ人材も乏しい中で原子力潜水艦の製造や運用をどう進めていくのか疑問視する声などを伝えています。

オーストラリアは、インド太平洋地域で中国に対抗するうえで、日本とアメリカ、それにインドとの「クアッド」と呼ばれる4か国の枠組みに加え、今回、アメリカとイギリスとの新たな安全保障の枠組みをつくることで多国間の連携を一層強化していきたい考えです。

加藤官房長官「インド太平洋地域の平和と安全にとっても重要」

加藤官房長官は、16日午前の記者会見で「米英豪間の安全保障や防衛協力の強化は、インド太平洋地域の平和と安全にとっても重要だ。日本として、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、日米豪印による『クアッド』や、ASEAN=東南アジア諸国連合、欧州との連携など、さまざまな取り組みを行ってきているが、引き続き、同盟国や同志国などと緊密に連携していきたい」と述べました。

中国 外務省報道官「地域の平和と安定を著しく傷つける」

これについて中国外務省の趙立堅報道官は16日の記者会見で「地域の平和と安定を著しく傷つけ、軍備競争を加速させ、国際的な核不拡散の努力を損なうものだ。閉鎖的で排他的なグループを作ることは、時代の流れに反し、支持は得られない」と述べ、反発しました。