北朝鮮 弾道ミサイル その後の分析でEEZ内側に落下と推定

15日午後、北朝鮮から発射された弾道ミサイルは、日本の排他的経済水域の内側の日本海に落下したと推定されることが防衛省関係者への取材で分かりました。

防衛省によりますと、北朝鮮は15日午後0時32分ごろと午後0時37分ごろ、内陸部から少なくとも2発の弾道ミサイルを東方向に発射したもようです。

このミサイルについて、政府は発射直後の情報に基づいて日本の排他的経済水域の外に落下したと推定されると発表していましたが、防衛省関係者によりますと、その後の分析によって100キロ未満の低い高度を、変則的な軌道でおよそ750キロ飛しょうし、排他的経済水域の内側の日本海に落下したとみられることがわかったということです。

北朝鮮の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域の内側に落下したとみられるのは、おととし10月2日以来です。

防衛省は、今回発射されたミサイルの性能や飛しょうしたコースなどについて引き続き、詳しい分析を進めています。

EEZ内側に落下はおととし以来

北朝鮮の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域に落下したとみられるのは、おととし10月2日以来です。

防衛省によりますと、このときは日本海に面する東部のウォンサン(元山)から発射されたミサイル1発がおよそ450キロ飛行して、島根県島後沖の排他的経済水域に落下しました。

このとき発射されたミサイルについて、防衛省は、新型のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルで、射程が2000キロ程度となる可能性があると分析しています。

「北朝鮮版イスカンデル」か 韓国メディア

北朝鮮が発射した弾道ミサイルの種類について韓国の通信社・連合ニュースは「北朝鮮版イスカンデル」という見方を伝えています。

このミサイルは、低空で飛行して変則的な軌道で落下するロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」に形が似ているのが特徴です。

連合ニュースは複数の韓国政府消息筋の話として「高度を下げたあとに再び上昇する『プルアップ』と呼ばれる変則的な動きが捉えられた」として、「ことし3月25日に日本海に向けて発射されたものと同じ種類とみられる」と報じています。

3月に発射されたミサイルについて韓国国防省は飛行距離がおよそ600キロ、高度がおよそ60キロだったとしていて、北朝鮮は発射の翌日に「新型戦術誘導弾」の発射実験と発表していました。

菅首相 豪首相と会談 連携して対応で一致

菅総理大臣は、今夜、オーストラリアのモリソン首相とテレビ会議方式で会談し、北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けて、引き続き、連携して対応していくことで一致しました。

菅総理大臣は、今夜、オーストラリアのモリソン首相と、およそ25分間、テレビ会議方式で会談しました。

この中では、今月24日にワシントンで開かれる、日豪両国とアメリカ、インドの4か国でつくる「クアッド」と呼ばれる枠組みで初めてとなる対面での首脳会合が開かれるのに先立ち、両国の協力について意見を交わしました。

また、両首脳は、15日の弾道ミサイルの発射を受けて、北朝鮮をめぐっても意見交換を行い、引き続き、連携して対応していくことで一致しました。

韓国政府 NSC開いて対応協議

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを受けて、韓国政府は、15日夕方、1時間あまりにわたって、NSC=国家安全保障会議を開いて対応を協議しました。

このなかで、北朝鮮の相次ぐミサイル発射による挑発に深い憂慮を示し、アメリカをはじめとする関係国と意図や背景を詳しく分析しながら、緊密に協議していくことを確認しました。

今後、北朝鮮の内部や軍事的な動向を注視しながら、必要な措置を講じていくとしています。

礒崎敦仁教授「党大会での大号令を有言実行」

北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことについて、北朝鮮情勢に詳しい慶應義塾大学の礒崎敦仁教授は「ことし1月の朝鮮労働党の党大会で、キム・ジョンウン(金正恩)総書記みずからが国防力強化、『核・ミサイル開発を進めよ』と大号令を出していて、発射はそれを有言実行した形だ」という見方を示しました。

そして「北朝鮮は、バイデン政権との交渉が当分進まず、アメリカが譲歩してくることはないと読んでいて、この間に多様な兵器開発を進め、交渉に使えるカードを用意したいということだ」と分析しました。

また礒崎教授は、15日韓国がSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験を行ったことに触れ「韓国は国防予算を増やし続けてSLBM実験に踏み切り、バックには8月合同軍事演習を行ったアメリカもついている。北朝鮮としては、米韓に対抗するため、核・ミサイル開発をしていくという意思を鮮明にしている」と指摘しました。

そのうえで今後については「キム・ジョンウン政権が発足してからの大きな流れを見ると、兵器を開発するときは一気に開発し、対話をするときはできるだけ一気にやりたいという傾向がある。ことし1月に予告していた原子力潜水艦の開発も含めて兵器開発が進む可能性が高い。今後はSLBMの発射実験などに注視していかなければならない」という見方を示しました。

放物線ではなく「変則的な軌道」で飛しょう

弾道ミサイルは、通常、放物線を描くように飛行します。

ただ、北朝鮮がおととし以降、発射を繰り返してきた少なくとも3種類の新型短距離弾道ミサイルのうち2種類について、防衛省は、落下中に再び上昇するといった変則的な軌道で飛ぶことが可能なものもあるとみられると分析していました。

さらに、これらのミサイルは通常より低い高度で飛ぶことも可能だと分析されていて、防衛省は、防御を難しくする狙いがあると見ています。

防衛省が、北朝鮮のミサイルが変則的な軌道で飛んだと公表したのは今回が初めてで、こうした軌道で飛んだことで日本側としては当初、飛行距離を正確に見積もるのが難しかったとみられます。

専門家「日本にとって新たな課題」

北朝鮮がおよそ半年ぶりに弾道ミサイルを発射したことについて、海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは、「北朝鮮にとってはミサイル技術の進展を定期的に国際社会に示す必要があり、日米韓の高官協議にあわせて発射することでアメリカの関心を引き、交渉を前に進めたいという思惑があるのではないか」と話しています。

そのうえで、今回のミサイルが変則的な軌道で飛んだとみられることについて、香田さんは、「変則的な軌道とは飛行中に高度や方向を変えることで、日本やアメリカの迎撃システムを常に警戒している北朝鮮としては、ミサイルの落下地点や軌道の予測を難しくする狙いがあると考えられる。今後、1000キロや2000キロといったより長距離を飛ぶミサイルにもこうした技術が使われる可能性があり、日本にとって新たな課題が突きつけられたと言えるのではないか」と話していました。