NYのブロードウェイミュージカル 1年半ぶり本格的に再開

新型コロナウイルスの感染拡大で休演が続いていたアメリカ・ニューヨークのブロードウェイミュージカルが、1年半ぶりに本格的に再開しました。
ワクチンの接種証明の提示を義務づけるなどの感染対策が導入され、経済活性化につながると期待されています。

ニューヨークのブロードウェイでは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で去年3月、すべての劇場が閉鎖され、ほとんどのミュージカルは1年半にわたって休演が続いてきました。

アメリカでも、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」などへの警戒が続いていますが、ニューヨーク市では18歳以上の72%が2回のワクチン接種を終え、1週間当たりの感染者数の平均は減少傾向にあります。

こうした中、ブロードウェイでは14日、人気ミュージカルの「ライオンキング」、「ウィキッド」、「ハミルトン」、「シカゴ」の4つの演目が1年半ぶりに再開し、劇場には開演を待ちわびた観客が長い列を作りました。
感染対策として、観客にはワクチンの接種証明の提示や劇場内でのマスク着用が義務づけられ、「ライオンキング」の劇場の入り口では係員がスマートフォンの画面やCDC=疾病対策センターが発行しているカードなどを確認していました。

入場者数は制限されておらず、上演後の舞台あいさつでは満員のおよそ1700人の観客が総立ちになって出演者に惜しみない拍手を送っていました。

ブロードウェイには主要な劇場がおよそ40あり、その多くが来月にかけて順次公演を再開する予定で、周辺の飲食店なども含めた経済活性化につながると期待されています。

観客「待ち遠しかった」「記念すべき夜」

「ライオンキング」の公演には、再開を待ちわびた観客が開演の1時間ほど前から集まり始めました。

2人の子どもと訪れたニューヨークに住む女性は「舞台を見ることはニューヨークに住む人にとって生活の一部なので、とても待ち遠しかったです。子どもたちと一緒に初日に劇場に来ることはブロードウェイの再開を祝うのに最高の方法だと思いました。ワクチンの接種証明の提示やマスクの着用など、必要なことはなんでもやります」と話していました。

女性の9歳の娘は「この作品が大好きなのでとても楽しみにしていました。再開してとてもうれしいです。マスクを着けなくてはいけないけれど、大きな問題ではありません」と話していました。

また、ニューヨークに住む日本人の女性は「待ちに待った再開で、とても楽しみにしていました。子どものころ、日本で初めて見たミュージカルが『ライオンキング』だったので本場で見られるのをとても楽しみにしていました。記念すべき夜です」と話していました。

出演者「夢のよう」「ぜひ見に来て」

「ライオンキング」の出演者はNHKのインタビューに対し、公演の再開に向けた喜びの声を口にしました。

ヒヒの魔術師ラフィキ役を22年間演じているシディ・マイネさんは「夢のようです。楽屋に足を踏み入れたら、まるで前の晩に公演があったかのようにグラスがそのまま置いてあり、最後に公演があった3月11日から時が止まっていたのではないかと感じました。ブロードウェイは私が愛する自宅のような場所です」と舞台の再開を喜んでいました。

また、主人公のライオン、シンバ役を演じるブランドン・マコールさんは「興奮、感謝、そして少しの不安と、さまざまな感情を抱いていますが、自分たちが愛する場所に戻れる喜びを感じています。私たちは皆さんに魔法を届けるのを楽しみにしています。ぜひ見に来てください」と話していました。

公演の再開が決まってから初めて行われた先月のリハーサルは、ミュージカルの冒頭で歌われる、命の循環がテーマの「サークル・オブ・ライフ」の練習から始まり、出演者やスタッフの中には感極まって涙を流す人もいました。

劇場では接種証明の提示が必須

ニューヨークの劇場などでつくる団体は、劇場の再開に当たって、出演者やスタッフなどに加え、観客にも原則として新型コロナワクチンの接種を義務づけています。

劇場に入る際には、アメリカCDC=疾病対策センターが発行した接種証明のカードや、接種を完了したことを示すスマートフォンのアプリなどとともに、本人であることを証明するものを提示することが求められます。

外国からの観光客などは、その国で公式に発行されている接種証明を示せば入場できるということで、翻訳機などを使って内容を確認するとしています。

また、接種の対象となっていない12歳未満の子どもや、宗教上の理由で接種できない人などについては、陰性であることを証明できるウイルス検査の結果を提示する必要があります。

劇場ではチケットの確認をするスタッフとは別に、接種証明の確認をする係員がいて、確認にかかる時間を考慮して開場時間をこれまでより15分ほど早めたということです。

劇場周辺のレストランも期待

ブロードウェイの劇場周辺には多くのレストランが立ち並んでいますが、その多くは、劇場が閉鎖された去年3月ごろから休業を続けています。

このうち、ニューヨークの中心部タイムズスクエアの近くにあるイタリア料理店は、ミュージカルが本格的に再開する14日から営業を再開することを決め、前の日から店の看板を補修するなど準備を進めていました。

14日には、営業再開を祝うセレモニーが行われ、再開を待ちわびた従業員たちが客を迎え入れていました。

ミュージカルを見る前に食事をしに訪れたという女性は「最高の気分です。去年はずっと家にいたので、外出して舞台を見に行けることがとてもうれしいです」と話していました。

レストランのオーナーの男性は「休業したときは苦渋の決断だったし、この1年半はとても大変でしたが、再開がとても楽しみです。街の経済にとって強力な推進力になります」と期待を口にしていました。

終演後の観客「特別な夜」

再開初日「ライオンキング」を見たニューヨークに住む男性は公演のあと「すべての人が一体となったエネルギーを感じ、舞台上の俳優たちの勇気を見てとても感動しました。特別な夜でした」と話していました。

このミュージカルをこれまで10回見たという女性は「休演後、久しぶりにこの作品を見るのはとても楽しみでしたし、観客の熱気を感じられたことは本当に特別でした。劇場に来るのをみんなが楽しみにしていることが伝わってきました」と話していました。

また「ライオンキング」を初めて見たという日本人の男性は「お客さんの熱量がすごかったです。出演者もとても楽しそうで、お客さんも一体になっていると感じました」と話していました。