菅首相 自民党総裁選に立候補せず 各界や海外の反応は

菅総理大臣は、今月行われる自民党総裁選挙に立候補しないことを表明しました。各界や海外の反応です。

新型コロナ 政府分科会 尾身会長「空白期間おかず対策強化を」

新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会の尾身茂会長は、NHKの取材に対し「菅総理にはときどきお会いする機会があったが、日々、総理としてなんとか状況を改善しようと、コロナ対策に真剣に取り組んでいる気持ちはひしひしと感じていた。今後、新しいリーダーが選ばれるということだと思うが、新型コロナウイルスの対策はこれから特に重要な時期にさしかかるので、空白期間をおかず対策の強化を続けていただきたい。長い間、お疲れさまでしたという気持ちだ」と話しました。

拉致被害者家族会 飯塚代表「進展した印象ない」

北朝鮮による拉致被害者の家族会代表で田口八重子さんの兄の飯塚繁雄さん(83)は「新型コロナウイルスやオリンピックなどの対応で、拉致問題が進展した印象はない。菅総理大臣は『拉致問題は最重要課題』と言っていたが、行動は伴わなかった。総理大臣が動かないと北朝鮮は動かない」とコメントしています。

横田めぐみさんの母親の早紀江さん(85)は「拉致問題について答えを待っていただけに残念です。今回の判断は菅総理大臣の考えがあってのことなんだと思う」と話しています。

拉致被害者 地村さん夫妻「政権変わっても一丸となり解決を」

北朝鮮による拉致被害者で福井県小浜市に暮らす地村保志さんと富貴恵さんの夫妻が、コメントを発表しました。

地村さん夫妻は「突然の辞任の意向表明に大変驚いています。菅総理には総理になられる前から拉致問題担当大臣として大変ご尽力いただきまた総理になったあとも拉致問題を政権の最重要課題として先頭に立って取り組んでいただき心より感謝申し上げます」とコメントしています。

そのうえで「今後政権が変わっても政府と国民が一丸となりわれわれの世代で拉致問題が解決されるよう心より願っています」としています。

日本学術会議「任命問題解決されないまま 大変残念」

6人の会員の候補が菅総理大臣から任命されなかった日本学術会議の執行部の1人は「菅総理大臣のもとで起きた任命問題をめぐり、学術会議は6人の任命と任命しなかった理由を示すよう何度も求めてきた。しかし、こちらの求めに応じることは一切無く、任命問題が解決されないまま今日に至ってしまい大変残念な思いだ」と話しています。

そのうえで「本来、科学界と政府は対立する関係ではなく、互いに協力し合う関係であるべきだ。学術会議としてはよりよい組織の在り方を模索していく一方で、次の総理大臣に対しても6人の任命などを引き続き求めていくだろう。次の総理大臣には任命問題を速やかに解決してもらい、協力関係を築いていきたい」と語りました。

また、任命されなかった6人の研究者のうちの1人、早稲田大学の岡田正則教授はNHKの取材に対し「総理大臣が任命を拒否したという行為は、総理大臣がかわっても残る。このあとの政権が6人を任命する義務を果たし、任命拒否の理由や経緯をきちんと説明することが大事だ」と述べました。

そのうえで「菅総理大臣は人事によって組織を支配するという政治手法を学術会議に対しても用いたのだと思うが、これによって失われた信頼は非常に大きかったと思う。人事で恐怖心をあおるといったやり方ではなく、たとえば新型コロナの危機対応についても、状況をきちんと説明し、聞く耳を持ち、専門家の英知を結集するような政治になっていってほしい」と話していました。

経団連 十倉会長「課題山積 強いリーダーシップ発揮を」

経団連の十倉会長は夕方、記者団に対して「驚きのひと言に尽きる。コロナ対策に不眠不休であたられ、ワクチン接種のスピードは総理のリーダーシップがなければ実現しなかった。コロナ対策に全力を注ぎたいということなので、その決断を尊重したい」と述べました。

また、次の政権を担うリーダーについては「ウィズコロナに向けて強い社会経済体制をいかに築くかが課題で、国際情勢も緊迫化、複雑化し、課題は山積している。カーボンニュートラルについても、強いリーダーシップを発揮できる人を求めている」としたうえで、政治空白が生まれるのは許されないと強調しました。

三井物産 安永会長「グリーンとデジタル 次の政権でも」

大手商社「三井物産」の安永竜夫会長はNHKの取材に応じ、「コロナ対策についてはいろいろと批判的な意見があったが、国全体で取り組む非常に難しい課題で、ワクチン接種を加速させる道半ばでの交代は残念だと思う」と述べました。

そのうえで「菅政権はグリーンとデジタルで野心的な目標を掲げ、ようやく実現に向けて踏み出そうとしていた。次の政権でもこの2つの政策をしっかりやってほしい。日本は課題先進国でもあるので官民が総力をあげて進めていきたい」と述べ、次の政権にも脱炭素社会の実現とデジタル化を重点政策として取り組むよう求めました。

海外メディアはどう伝えたか

AP通信は「菅総理大臣は新型コロナウイルス対策で後れを取ったほか、国民の健康への懸念があるなかでオリンピックを開催したことで批判を受け、支持率が急降下した」と伝えています。

また「今回の衝撃的な発表はパンデミックへの対応をめぐり菅政権の支持率が過去最低となっているなかで行われた」と伝えています。

そのうえで「菅総理大臣は新型コロナウイルスへの対策に苦慮し、日本はワクチン接種が遅れたため記録的な第5波に苦しめられている」としています。
アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは「菅総理大臣は歴史的に不人気な政権を救おうと何日も費やしたあと、急な判断をくだした。新型コロナウイルスの症例が過去最高を記録し、ワクチンの供給が不安定となって入院も難しくなるなか、これ以上続けられないと判断したとみられる」と伝えています。

また、アメリカのメディア、ブルームバーグは「東京オリンピック後の数週間、日本では感染者が急増し、菅総理大臣の支持率は急落していた。さらに先月は菅総理大臣が政治家としてのキャリアをスタートさせた横浜市の市長選挙で支援していた候補が敗れるなど、打撃が続いていた」と伝えています。

そのうえで「安倍前総理大臣が日本で最も長く総理大臣を務めたあと、日本を再び短命なリーダーの時代に戻さないようにしようと考えていた。しかし、新型コロナウイルス対策や汚職スキャンダル、オリンピックをめぐる論争などすべてが影響を及ぼした」と指摘しています。

アメリカのCNNテレビは東京から中継で、菅総理大臣の表明の背景について「安倍前総理大臣が健康上の理由で退いたあと、延期されたオリンピックと進行中の新型コロナウイルスの大流行という非常に困難な状況を引き継いでいた」と伝えています。

国営の中国中央テレビは、ニュース番組で「菅総理大臣が、自民党の臨時役員会で総裁選挙に立候補しないことを表明した。今月末に総裁の任期が満了するのに伴い総理大臣を退任することになる」と伝えました。そして「このところ新型コロナウイルスの影響で、支持率がずっとよくなかった」と伝えました。

また、韓国の連合ニュースも「立候補の見送りにより菅総理大臣が総裁の任期満了にあわせて総理大臣を辞任するという見通しが出てきている」と伝えています。

米バイデン政権は

菅総理大臣が退任する見通しとなったことについて、アメリカ、ホワイトハウスの報道官は菅総理大臣の指導力に感謝の意を示すともに、強固な日米同盟は今後も変わらないなどとする声明を発表しました。

声明では「菅総理大臣はバイデン大統領がホワイトハウスでの対面での首脳会談を申し入れた最初の外国の首脳だ。新型コロナウイルス対策、気候変動、北朝鮮、中国、そして台湾海峡での平和と安定の維持などインド太平洋地域や世界で直面する共通の課題における菅総理大臣の指導力に感謝する」としています。

そのうえで「菅総理大臣の今後の成功を祈る。日米同盟は両政府の間だけでなく、両国の国民の間でも強固なものであり続ける」として、総理大臣がかわっても両国の関係は変わらないと強調しています。

中国外務省報道官「日本の内政なので評価しない」

中国外務省の汪文斌報道官は記者会見で「報道は承知しているが、日本の内政なので評価しない」と述べ、論評を避けました。

そのうえで、汪報道官は「両国関係が健全で安定的に発展するよう願っている」と述べました。