【詳しく】“ミュー株”とは コロナ変異株 最新情報まとめ

【詳しく】“ミュー株”とは コロナ変異株 最新情報まとめ
新型コロナウイルスの変異ウイルス「ミュー株」に国内で初めて、2人が感染していたことが分かりました。
次々に現れる変異ウイルス。これまでにどのような種類が報告され、どのような特徴があるのかまとめました。

「ミュー株」とは

WHO=世界保健機関は、2021年8月30日付けで新型コロナウイルスの変異ウイルス「ミュー株」を「VOI=注目すべき変異株」に位置づけました。

ギリシャ文字で「ラムダ」に続く文字として今回、「ミュー株」とされました。

WHOによりますとミュー株は、2021年1月に南米のコロンビアで初めて確認されて以降、南米やヨーロッパで感染が確認されていて、特にコロンビアとエクアドルで増加傾向にあるということです。

新型コロナウイルスの遺伝子配列を登録するウェブサイト「GISAID」によりますと9月2日の時点で42の国や地域で報告されいます。

また、変異ウイルスの情報を集約している研究機関のウェブサイトによりますとミュー株は、ウイルスの「スパイクたんぱく質」の遺伝子に「N501Y」という変異や抗体の攻撃から逃れる「E484K」という変異などが含まれていて、この2つの変異は南アフリカで確認され、WHOが「VOC=懸念される変異株」に位置づけている「ベータ株」にもみられるということです。

WHOによりますと予備的なデータでは「ベータ株」と同様にワクチンなどで得られた免疫の働きが下がるという報告があるということですが、詳しい性質を確定するにはさらに研究が必要だということです。

このためWHOでは特に「デルタ株」と同時に流行する場合などミュー株の状況を注視していくとしています。
WHO=世界保健機関は
▽感染力が強まる
▽感染した際の重症度が上がる
それに
▽ワクチンの効果が下がる
などの性質の変化が起こったとみられる変異ウイルスを「懸念される変異株=VOC」として国際的に警戒するよう呼びかけています。

また、
▽感染力やワクチンの効果などに影響を与える可能性がある変異ウイルスや
▽国や地域を越えて見つかっている変異ウイルスなどを
「注意すべき変異株=VOI」としていてます。

WHOは特定の国への差別的な扱いを防ぐため変異ウイルスをギリシャ文字で呼ぶよう提唱していてます。

2021年9月2日現在、「VOC」と「VOI」として合わせて9種類の変異ウイルスを挙げています。

「懸念される変異株=VOC」は4種類

WHOが「VOC」としている変異ウイルスは4種類あります。

「アルファ株」

イギリスで見つかった変異ウイルスの「アルファ株」は2020年12月上旬に初めて報告され、その後、世界中に広がりました。

このウイルスには「スパイクたんぱく質」に「N501Y」と呼ばれる変異があることが分かっています。

これは「スパイクたんぱく質」の501番目のアミノ酸がアスパラギン(略号N)からチロシン(略号Y)に置き換わっているという意味です。

WHOがまとめた情報によりますと、この変異ウイルスは従来のウイルスに比べて感染力が強く、入院や重症それに亡くなるリスクも高くなっているということです。

一方で、ワクチンの効果についてファイザーやモデルナ、それにアストラゼネカのワクチンでは大きな影響はないとしています。

「ベータ株」

南アフリカで最初に見つかった変異ウイルスは「ベータ株」と呼ばれています。

2020年5月には発生していたとされ、11月中旬に南アフリカで行われた解析ではほとんどがこの変異ウイルスだったとみられています。

「N501Y」の変異に加えて抗体の攻撃から逃れる「E484K」という変異もあることから、ワクチンの効果への影響が懸念されています。

WHOのまとめによりますと、ファイザーのワクチンとモデルナのワクチンについては影響は「最小限にとどまる」とする研究から、「相当程度低下する」とした研究まで幅があるとしています。

「ガンマ株」

ブラジルで広がった変異ウイルスは「ガンマ株」と呼ばれています。2021年1月6日、ブラジルから日本に到着した人で最初に検出されました。

ブラジルでは2020年11月のサンプルで確認されていて、WHOによりますと2021年3月・4月の時点ではブラジルで遺伝子を詳しく調べた検体のうち83%に上ったとしています。

南アフリカで確認された「ベータ株」と同様に「N501Y」に加えて抗体の攻撃から逃れる「E484K」の変異もあることが分かっています。

WHOのまとめによりますと、ファイザーとモデルナ、アストラゼネカそれぞれのワクチンについては、影響は「少なかった」とする研究から「中程度あった」とする研究まで報告されているとしています。

「デルタ株」

WHOはインドで見つかった「L452R」という変異が入った3種類の変異ウイルスのうち、最も感染が拡大したタイプを「デルタ株」と呼んでVOCとしています。

感染力は強まっているとされ、感染した場合に入院に至るリスクも高まっている可能性が指摘されています。

ワクチンの効果について、WHOのまとめではファイザーのワクチンではウイルスを中和する効果への影響は、無いかもしくは最小限だったという研究結果が示されています。

「注意すべき変異株=VOI」は5種類

WHOが「VOI」に位置づけている変異ウイルスは「ミュー株」を含めて5種類あります。

「イータ株」

▽「イータ株」
2020年12月にイギリスで最初に確認された変異ウイルスです。

「イオタ株」

▽「イオタ株」
アメリカ ニューヨークで見つかった変異ウイルスです。

「カッパ株」

▽「カッパ株」
インドで見つかった変異ウイルスで「デルタ株」と同様に「L452R」の変異が起こっています。

「ラムダ株」

▽「ラムダ株」
ペルーで最初に報告された変異ウイルスで、WHOによりますと、2021年6月15日時点で29の国や地域から報告されていて、特にペルーやチリなど南米で多く報告されているということです。感染力やワクチンの効果への影響などについてはまだよく分かっていないということです。

その他の変異ウイルス

それぞれの国では各地の実情に合わせて独自に「VOC」や「VOI」となる変異ウイルスを決めています。

日本でも国立感染症研究所が2021年9月2日時点でWHOの「VOC」となっている4種類の変異ウイルスをすべて「VOC」に指定しているほか「VOI」として「カッパ株」を指定しています。

いずれも海外から入ってきたとみられていますが、詳しい起源は不明で、感染力は変わらないと考えられています。

また、これらの変異ウイルスがワクチンの効果を完全に無効化するとは考えにくいものの、効果を低下させる可能性を考えると、感染状況を注視する必要があるとしています。

世界では新型コロナウイルスの遺伝子配列がデータベースに公開されていて新たな変異ウイルスが次々と報告されています。

WHOは各国に対し、ウイルスの広がりを見る調査や戦略的な検査、ゲノム解析などを通じて、対策を強化し続けてほしいとしています。