東京都のモニタリング会議 “人流急激に増え 陽性者再増加も”

東京都のモニタリング会議で、専門家は、都内の感染状況について、依然として極めて高い値が続いているとしたうえで、お盆明けから人の流れが急激に増えていることから、新規陽性者数が再び増加に転じることが危惧されると指摘しました。また、医療提供は、入院患者数や重症患者数が過去最多を更新し、深刻な機能不全が続いているとして、強い危機感を示しました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者の7日間平均は、9月1日時点ではおよそ3290人と1週間前の8月25日から1098人減少したものの、極めて高い値が続いていると説明しました。

そのうえで「お盆休みによる人流の減少の影響を受けて、一時的に減少した可能性がある」としたうえで「お盆明けから繁華街でレジャー目的の夜間の人流が急激に増加していて、新規陽性者数が再び増加に転じることが危惧される」と指摘しました。

そして「災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態が数週間続いている」として感染防止対策の徹底を呼びかけました。

一方、医療提供体制について、専門家は、入院患者が8月31日時点で4303人と過去最多を更新し、新規陽性者数が減少しているにもかかわらず増加傾向が続いているほか、重症の患者は8月28日時点で297人と過去最多を更新したと報告しました。

そして、自宅療養中に容体が悪化した患者の救急搬送や、入院の受け入れが困難になっているなどと説明し「現在の感染状況が大きく改善しなければ、医療提供体制の限界を超え、救える命が救えない事態が続くと思われる」と強い危機感を示しました。

新学期迎え「社会全体で子どもを守るという意識の啓発必要」

2日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は、1日時点で7日間平均が3290人となりました。

前回、先月25日時点の4388.4人よりおよそ1098人少なく、2週連続で減少しています。

ただ、専門家は「今週はお盆休みによる人流減少の影響を受けて新規陽性者が一時的に減少した可能性がある」としたうえで「いまだに第3波のピーク時の1.8倍に相当する1日当たり3200人を超える新規陽性者が発生していて、極めて高い値が継続している」と指摘し、今後の推移に厳重に警戒する必要があるという認識を示しました。

また、新規陽性者の増加比は今回は前の週のおよそ75%でした。

専門家は「繁華街の夜間の人出がお盆明けから増加に転じたと報告があり、新規陽性者数が再び増加に転じることが危惧される。最大限の警戒心を持って、一人ひとりが感染しない、させないための行動を心がけることが重要だ」と呼びかけました。

また「ワクチン接種後の陽性者が確認されていて、2回接種したあとも感染して周囲の人に感染させるリスクがある。接種したあとも感染予防対策をより念入りに徹底するよう啓発する必要がある」と指摘しました。

先月30日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、20代が28.2%と最も多く、次いで30代が19.6%、40代が16.4%、50代が11.1%、10代が10.6%、10歳未満が7.1%、60代が3.3%、70代が2.2%、80代が1.2%、90代以上が0.3%でした。

6月中旬以降、50代以下の割合が全体の90%以上を占めています。

今週は10歳未満が1.4ポイント、10代が0.5ポイント増え、4週連続の上昇となりました。

専門家は「新学期を迎えた学校生活での感染防止対策の徹底が求められる。社会全体で『子どもを守る』という意識の啓発が必要だ」と指摘しています。

一方、65歳以上の高齢者の感染者数は前の週まで6週連続で増加していましたが、今週は1231人で、1377人だった前の週から146人減りました。

ただ、新規陽性者に占める割合は前の週から0.6ポイント上昇しました。

専門家は「割合は4週連続で上昇傾向にある。医療機関や高齢者施設などでの発生が引き続き報告されている。高齢者への感染を防ぐためには家庭の外で活動する家族、医療機関や高齢者施設の職員が感染しないことが最も重要だ」と指摘しています。

感染経路がわかっている人では、同居する人からの感染が67.7%と最も多く、次いで職場が13.1%、保育園や学校、それに高齢者施設や病院といった施設での感染が6.2%、会食は2.7%でした。

特に、施設での感染は10代と10歳未満が多く、専門家は「学校生活や学習塾などでの感染防止対策の徹底が必要だ。特に、新学期が始まったことから、通学による人との接触の増加を契機とした家庭などへの感染拡大が危惧される」としています。

さらに、職場での感染も極めて高い水準で推移しているとして「事業主に対して従業員が体調不良の場合に受診や休暇取得を積極的に勧めることが最も重要だ。テレワーク、時差通勤、オンライン会議の推進など3密を回避する環境整備に積極的な取り組みが求められる」と指摘しました。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路がわからない人の7日間平均は、1日時点で1885.7人で、前の週から729人減りました。

増加比は1日時点で72.1%と前の週から18.8ポイント低下しました。

ただ専門家は「感染経路がわからない人の数は依然として高い水準で推移している。今後の推移に注意が必要だ」と指摘しました。

そのうえで「職場や施設の外における第三者からの感染による、感染経路が追えない潜在的な感染が懸念される。これ以上の感染拡大を防ぐためには徹底的に人流を減少させる必要がある」と呼びかけました。

感染経路がわからない人の割合は、およそ58%で前の週から2ポイント下がりましたが、高い水準で推移しています。

感染経路がわからない人の割合は20代から50代で60%を超え、特に行動が活発な20代ではおよそ68%と高い割合になっています。

「新学期開始後の感染拡大可能性踏まえた病床確保必要」

検査の陽性率の7日間平均は1日時点で17.1%となり、前の週の8月25日時点の20.7%から3.6ポイント下がりました。

専門家は「依然として高い水準で推移している。検査を迅速に受けられないことで多数の感染者が潜在している可能性がある。検査体制のさらなる強化が必要だ」と指摘しました。

入院患者は1日時点で4271人で、8月25日より117人増加し、8月31日には4303人と過去最多を更新しました。

専門家は「新規陽性者数が減少しているにもかかわらず、増加傾向が続いている。自宅療養中に容体が悪化した患者の救急搬送、入院の受け入れが困難になっている。緊急を要するけがや病気の患者の救急搬送や受け入れにも大きな支障が生じている」と指摘しました。

保健所が都の入院調整本部に入院先を探すよう求めた依頼件数の7日間平均は、1日時点で414件で、8月25日時点より181件減りました。

ただ、専門家は「非常に高い水準で推移している。調整が難航し、翌日以降への繰り越しや自宅での待機を余儀なくされる事例が多数生じ、きのうは115人が翌日に繰り越しになった」と指摘しました。

1日時点の入院患者4271人のうち、60代以下は全体のおよそ82%と高い水準が続いていて、年代別では、50代が最も多く全体のおよそ24%、次いで40代がおよそ20%となっています。

30代以下でもおよそ27%を占めています。

専門家は、子どもの感染が増えていることを踏まえ「新学期が始まったあとの感染拡大の可能性を踏まえた病床確保が必要だ」と指摘しました。

また「7月以降、妊婦の感染が急増していて、周産期医療体制を充実する必要がある」と述べました。

都の基準で集計した1日時点の重症患者は286人で、8月25日時点から9人増えました。

専門家は「極めて高い水準で推移している。新規の陽性者数が現状から大きく減少しないと、さらに重症患者が増加し、救える可能性がある命を救えない事態が続くと思われる」と指摘しました。

1日時点の重症患者286人の男女別は、男性219人、女性67人です。

年代別では、▼50代が最も多く119人、次いで▼60代が57人、▼70代が42人、▼40代が36人、▼30代が22人、▼20代と80代がそれぞれ5人でした。

専門家は「40代から60代で重症患者全体の74%を占めている。この年代に対してワクチン接種は重症化の予防効果と死亡率の低下が期待されていることを啓発する必要がある」と指摘しています。

このほか、人工呼吸器かECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は1日時点で524人で、過去最多だった8月25日時点より47人減りました。

1日時点で陽性となった人の療養状況を8月25日時点と比べると、自宅で療養している人は5372人減って1万9797人、都が確保したホテルなどで療養している人は161人増えて2180人でした。また、医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は、3156人減って6870人となりました。

入院患者を含めた「療養が必要な人」全体の数は3万3118人で、8月25日時点より8250人減りました。

全療養者に占める入院患者の割合は前の週から3ポイント増えておよそ13%、宿泊療養者の割合は2ポイント増えておよそ7%で、専門家は「極めて低い水準だ」と指摘しています。

一方で、自宅療養者と、入院するかホテルや自宅で療養するか調整中の人は「依然として著しく多い」と説明しました。

また、8月30日までの一週間で自宅療養中の死亡が10人報告されたと説明し「深刻な事態が続いている。自宅療養者のフォローアップ体制のさらなる強化が必要だ」と指摘しました。

一方、8月30日までの一週間で新型コロナウイルスに感染した94人が亡くなりました。

このうち、40代以下は10人、50代が22人、60代が10人、70以上が52人でした。

小池知事「『誰かがやるだろう』ではなく」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は記者団に対し「現在の感染状況は、何度も申し上げているが災害レベルであり、残念ながら状況は変わっていない。『医療非常事態』という現実を受け止めながら総力戦で対応しなければならず、皆さんと共有したい」と述べました。

また、繁華街の夜間の滞留人口がお盆明けから増加に転じていることについて「このままだと皆さんに努力いただいていることがまた水泡に帰して、いつものパターンに入ってしまう」と述べ、危機感を示しました。

そのうえで小池知事は「命を守るために強い危機感を共有して、みんなで日々の行動を変えていく。コロナとのたたかいは『誰かがやるだろう』ではなく、結局のところ、自分がやらなければ終わらない。体調がおかしいと思ったら早期に医療機関を受診し、積極的にワクチンの接種も進めて、人の流れを徹底的に抑えていく。あなたがその流れをつくるか否かに関わってくるので、皆さんの協力を改めてお願い申し上げる」と呼びかけました。

専門家「滞留人口増続くと新規陽性者数は必ず反転」

会議のあと、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「人流を非常に気にしている。繁華街の夜間の滞留人口がまた増えてきていて、過去の経験からも、これが続くと新規陽性者数は必ずや反転してくると考えている。この状況は非常に注意しなければならず、リスクだ」と述べました。

専門家「非常時体制続くと われわれの体力続かない」

会議のあと、東京都医師会の猪口正孝副会長は「医療提供体制の深刻な機能不全が継続している。それに対して『総力戦』で非常時体制をとっているが、これがずっと続くと、われわれの体力も続かないと思うし、通常の医療もかなりの影響を受ける。とにかく感染者を減らしていくことが大事だ」と述べました。