学校再開どうすれば?抗原検査って…

学校再開どうすれば?抗原検査って…
夏休みも終わり、学校が再開されています。

子どもたちにも広がる新型コロナの感染。

夏休みを延長したり、登校を選択できるようにしたり、自治体ごとに対応は分かれています。

国は、学校での感染対策強化のため、新型コロナの抗原検査キットを、小中学校にも配布することを決めました。

慌ただしく決まっていく学校現場の新たな対応。

安全に学校生活を送るためには、どうすればいいのでしょうか?

(ネットワーク報道部記者 馬渕安代・藤島新也 SNSリサーチ 三輪衣見子・中藤智晴)

「夏休み明けが不安」

夏休みが終わり、子どもを学校に通わせるかどうか。

保護者からは学校再開についてさまざまな声が上がっています。
「自主休校という形でいこうかなと思います」

こうSNSに投稿したのは、都内に住む30代の母親です。

小学4年生の娘の通うクラスは児童が40人。

机を並べると隙間がなく、教室が密状態になってしまうことがとても心配だといいます。

さらに、娘自身も「学校に行くのが怖い」と話していました。

その後、25日に予定していた始業式は延期になり、緊急事態宣言が出ている間は、曜日ごとに20人ずつ分散して登校すると連絡がありました。

分散学校が始まったら、初日に一度通わせて様子を見るということです。
「子どもの感染が増える中で、夏休み明けをどうするか不安に感じていました。教室は歩く隙間もなかったので、分散登校になって少し安心しました。私も仕事があるので、登校しない日は、子どもだけで家で過ごしてもらおうと思っています」

「休校になると困る」

一方、「学校が休校になると困る」と投稿していたのは、小学2年生の息子がいるシングルマザーです。

休校になれば、仕事を休んで子どもの面倒を見る必要があるといいます。

ただ、生活のことを考えると簡単ではありません。
「近くには頼れる親族はいないので、有給を使って仕事を休むしかないですが、長期化すると全然足りないです。仕事を休めば給料が減って生活ができなくなるので、母子家庭にとっては死活問題です。学校に行かせるのは正直、不安ですが、生活を考えると行かせるしかありません」

学校再開どうなる?

すでに夏休みが終わり、学校が再開された宮崎市。

夏休み明け初日の8月24日は、公立の小中学校で、感染への不安などを理由に1098人が学校を休んだということです。これは児童・生徒の3.4%にあたります。

市の教育委員会は、県独自の緊急事態宣言が出されているあいだは、感染への不安を理由に学校を休むケースについては、欠席扱いにはしないことを決めています。
臨時休校や、夏休みの延長を決める自治体も相次いでいます。

横浜市は、市内の小中学校486校で、8月いっぱいを臨時休校に。

9月1日に学校が再開されたあとも13日まで、クラスを2つのグループに分けて、分散登校を行います。

8月いっぱいの臨時休校や、夏休みの延長を決めた自治体は、8月25日の時点で10以上の県にのぼります。

登校の判断 家庭に委ねる自治体も

登校するかどうかの判断を、家庭に委ねる自治体も出ています。

さいたま市は、緊急事態宣言中は、登校するかどうかを家庭の判断に委ね、登校を控える場合には授業をオンラインで受けられる「ハイブリッド授業」を27日から始めました。

SNSでは「選択登校制」ということばで、こうした対応を求める声もあがっています。

抗原検査キットも配布 対象は教職員が基本

さらに、教育現場は新たな対応を迫られることになりました。

政府は新型コロナウイルス対策の基本的対処方針を変更し、学校現場での子どもの感染が懸念されることを踏まえ、9月上旬から幼稚園や小中学校などに、最大でおよそ80万回分、新型コロナウイルスの抗原検査キットの配布を盛り込みました。
「抗原検査」は、新型コロナウイルスへの感染を30分ほどで調べられる簡易的な検査です。

検査キットの綿棒を使って鼻の奥から検体を採取します。

文部科学省によると、検査の対象は、教職員が基本。

児童生徒については、体調が悪くなったら速やかに帰宅して医療機関を受診するよう指導することが前提です。

ただ、自分で検体を採取できる小学4年生以上で、すぐに帰宅することが難しい事情がある児童生徒については、検査の対象とするとしています。

その場合、教職員立ち会いのもと、児童や生徒が自分で検査を行うことも想定されています。

立ち会いに不安を感じる先生たちも

「あり得ないよこんな仕事」

検査対象がなかなか示されない時に、こうSNSに投稿していたのは、徳島県の中学校に勤務する男性教諭です。

これまでも感染症予防対策として、教室の消毒や部活動での感染予防マニュアル作りなどで仕事が増えていましたが、今回の抗原検査はこれまでよりも負担が重く感じるといいます。
男性教諭
「もし検査に立ち会うことになったら危険が伴うので、教員の仕事の範ちゅうを超えていると思います」
近畿地方の小学校に勤務する養護教諭の女性は、教育現場で検査することで、感染を拡大させてしまわないか心配だといいます。
女性教諭
「養護教諭は学校に1人だけ。もし感染して不在になると、子どものけがやアレルギーなどの初期対応が遅れることも懸念されます。検査キットを配布するなら、医療用コンテナなど検査する場所や、検査する人員を増やしてほしいです」

もし子どもが検査することになったら…

具合が悪くなった子どもがすぐに帰宅できず、学校で抗原検査を行わなければならなくなった場合は、どうすればいいのでしょうか。

注意点について、感染対策や検査方法に詳しい医師に聞きました。
萱場広之センター長
「検査を適切に行うには、綿棒を鼻の奥に入れる必要があるが、慣れない子どもが無理をしてやれば鼻血が出たり、鼻の中で綿棒が折れたりする危険がある。そもそも、きちんとした検体がとれるのか疑問だ。また、採取した検体を、周囲を汚染せず所定の場所に置くように言っても、すべての子どもができるとは限らない。子どもがみずから検体を採取するのは現実的ではないと思う」
萱場医師は、子どもが自分で正しく検査を行うことの難しさについて指摘します。

さらに抗原検査で陰性となった場合でも、安心できないといいます。
萱場広之センター長
「感染しているのに検査結果で陰性になる場合がある。抗原検査が陰性だからと安心して集団に戻すと感染を広げることもあり、陰性は免罪符にならないということを、現場にしっかりと周知すべきだ」
そのうえで、萱場センター長は、子どもの検査に立ち会う必要が出てきた場合、次のような点に注意が必要だといいます。
▽立ち会う教職員は、事前にしっかりとした研修や講習を受講する。

▽綿棒を鼻に入れるのでくしゃみが出やすい。しぶきが半径2メートル以上飛ぶ場合もあるので、立ち会う教職員はマスク、エプロン、アイガード、帽子、手袋などしっかりした装備を身につける。

▽子どもの正面には立たないようにする。

▽検査をする子どもの口をマスクで塞ぐことを徹底する。

▽ほかの子どもが出入りする保健室ではなく、別室を用意する。

子どもの命守るため選択肢を

子どもたちにも感染が広がるなか、慌ただしく決まっていく学校現場の対応。

教育行政の専門家は、学校を再開するときには、さまざまな選択肢を示すことが大切だと言います。
末冨芳教授
「今、教育現場で最も大事なのは、子どもの命を守るために多様な学習に移行することです。子どもを学校に行かせるのが不安な親は、勇気を持って休ませてほしいですし、学校側はそれを尊重することが大事です。『感染が不安で休むんですか?』などと言ってしまうようなケースもあると聞いているので、新型コロナウイルスが収束するまでは、学校での感染をおそれる子どもや親がいるという前提に立つことが必要です」
「今はタブレットなどの端末を生徒が持っているので、命の危険がある中では、登校という形にこだわらず、オンライン授業で対応することなどが必要になると思います」