新学期 子どもの感染懸念 学校の対策と学び どう両立する?

新型コロナウイルスの感染急拡大で子どもの感染も増える中、夏休み明けの学校での感染が懸念されています。学校現場では感染対策と子どもたちの学びの両立を図ろうと苦心しています。
こうした中、文部科学省は学校で感染者が出た場合に備えて学級閉鎖などを判断するための基準を初めて示しました。

新学期前に専門家と対策点検<東京 大田区>

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、来週から新学期が始まる東京 大田区は専門家を招いて小学校の感染症対策を点検しました。
大田区では来月1日から新学期が始まる予定で、子どもたちが安心して登校できるよう学校の感染症対策を進めています。

27日は新型コロナウイルス対策にあたる政府の分科会のメンバーでもある東邦大学の舘田一博教授が区内の小学校を訪れ、校長や区の教育委員会の職員と一緒に校内の対策ができているかを点検しました。

【教室】“家族の体調もチェック 給食は黙食”

このうち、1年生の教室では舘田教授が担任の先生に「子どもたち自身に加え家族の体調の情報もチェックしてほしい。給食を黙って食べる時もなぜするのかを子どもに理解してやってもらえるように指導してください」などとアドバイスしていました。

【音楽室】“換気 授業後は消毒徹底”

また、笛の演奏などでマスクをとる可能性がある音楽室では、机に取り付けた感染予防のパネルや窓を開けて換気をしているかなどを点検し、授業のあとは消毒を徹底するように要望していました。

大田区は今後、27日の点検の様子を撮影した動画を区のホームページなどで公開し、ほかの学校でも対策に役立ててもらえるようにするということです。
舘田教授は「先生が苦労しながら新学期の準備をしていると感じた。学校の外の行き帰りや休憩時間にも感染が広がるリスクがあるので、なぜ対策をするのか子どもたちに伝えていく教育が大事だ」と話していました。

大森第三小学校の吉成美紀校長は「これまでの対策の方向性が間違っていなくて安心した。学びを止めないよう工夫してやっていきたい」と話していました。

「ハイブリッド授業」で2学期開始<さいたま>

さいたま市の公立の小中学校などでは、登校を控える場合にはオンラインで自宅からも参加できる形式で2学期の授業が始まりました。

さいたま市は27日から2学期の授業が始まった公立の小中学校などについて、緊急事態宣言の期間中は登校するかどうかを家庭の判断に委ね、登校を控える場合には自宅からもオンラインで教室での授業に参加できる「ハイブリッド授業」をするとしています。
浦和区にある本太小学校の5年生のクラスでも黒板が映り込むように画面を共有し、教員が自宅にいる児童にも質問しながら授業を進めていました。
オンラインで授業に参加した並木優汰さんは「画面の黒板が少し見えにくい時にも先生が端末を近づけてくれたのでわかりやすかった」と話していました。

小田桐武蔵教諭は「離れていても1つの場で授業ができていると感じられるよう工夫した。私たち自身が慣れていくことが課題だ」と話していました。

この学校では全校児童の18%余りに当たる161人がオンライン授業を希望したということですが、各学校に市の方針が伝えられたのは今月24日だったため初日の27日、一部の学校では準備が間に合わずオンライン授業ができなかったということです。

学級閉鎖などの判断基準 初めて示す 文科省

こうした中、文部科学省は学級閉鎖などを判断するための基準を初めて示しました。

児童生徒や教職員の感染が確認された場合の学級閉鎖や休校をめぐっては、これまでは教育委員会などが保健所による調査や濃厚接触者の特定を受け、助言を得たうえで必要性を判断してきました。

しかし、感染が急拡大している緊急事態宣言が出ている地域などで保健所の業務がひっ迫し調査が遅れるおそれがあるとして、文部科学省は厚生労働省と協議のうえ初めて具体的な判断基準を作成しました。

この中では、濃厚接触者や検査対象者の候補のリストを学校などが作成する際の具体例が示され、検査の候補者の特定が難しい場合は感染者が1人でも学級全員を検査の対象とできるとしています。

学級閉鎖の基準は?

そのうえで学級閉鎖については
▽同じ学級の中で複数の児童や生徒の感染が判明した場合や
▽感染者が1人でも
・複数がかぜなどの症状を訴えていたり
・複数の濃厚接触者がいたりするなど
学級内で感染が広がるおそれが高い場合に
実施を検討するとしています。

期間については5日から7日程度を目安として示しています。

学年閉鎖・臨時休校の基準は?

また
▽学年閉鎖は複数の学級を閉鎖するなど学年で感染が広がっている可能性が高い場合に実施し
▽学校全体での臨時休校は複数の学年閉鎖などが発生した場合に実施するとしています。

文部科学省はこの基準を27日、全国の教育委員会などに通知することにしています。

萩生田文科相「学びをとめないよう取り組んでほしい」

萩生田文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で「緊急事態宣言の対象地域などでは保健所の業務のひっ迫により調査が遅れるおそれがあり、感染が拡大している可能性が高い場合の臨時休校の考え方を示すことにした。ガイドラインを参照し、非常時でも児童や生徒の学びをとめないよう確実に取り組んでほしい」と述べました。

保育所などの全面休園は最多に

一方、新型コロナウイルスに子どもや職員が感染し全面休園となった保育所などは26日の時点で14の都道府県の179か所に上り、これまでで最も多くなりました。

厚生労働省が全国の市区町村からの報告をまとめたところによりますと、施設内で子どもや職員が感染したため全面休園となった保育所やこども園は26日の時点で14の都道府県の179か所に上っています。

これは1回目の緊急事態宣言が出されていた去年4月の168か所を上回り、これまでで最も多くなっています。また、1か月前の先月29日時点の62か所と比べて3倍近くに増えています。

専門家「休園基準 保護者に分かりやすく説明を」

保護者などでつくる団体「保育園を考える親の会」の代表をつとめる普光院亜紀さんは「保育所が全面休園すると子どもを預けることができずほかにみてくれる人がいない保護者もいる。仕事を休むことができる職場もあるが、立場の弱い非正規雇用の場合は契約を更新されないなど仕事を失うことにつながってしまう可能性もある」と指摘しています。

そのうえで「保育所の休園は大きな影響があるので地域の実情合わせてある程度、柔軟に判断する必要はあるが、休園の判断基準が示されていないケースもある。また保育所の休園や再開の判断基準がわかりにくく保護者の不安につながっている現状がある。どのような状況であれば休園となるのか、また保育所が再開されるのか保護者に分かりやすく説明することが大切だ」と話していました。