【詳しい経緯は】自宅療養中の妊婦 自宅で出産 新生児死亡

新型コロナウイルスに感染し、千葉県で自宅療養中の妊婦が入院調整が行われたものの受け入れ先が見つからず、そのまま自宅で出産し、赤ちゃんが亡くなったことが分かりました。

感染確認の3日後に保健所が聞き取りを行い妊婦だと分かったことや、その後、優先度の高い患者として受け入れ先を探したものの見つからなかったことなど、詳しい経緯が明らかになってきました。

この問題で柏市保健所は19日午後、記者会見を開き詳しい経緯を説明しました。

それによりますと今月11日、柏市で1人暮らしの妊娠8か月の30代の妊婦が感染していることが分かりました。

この時は軽症の診断で、保健所への届け出には「妊婦」という情報はなく、その3日後の14日、保健所が健康観察として聞き取りを行い「妊婦」だと分かったということです。

女性は「息苦しい、呼吸が苦しい」とも話し、血液中の酸素の数値も91%に低下していたということです。

このため「中等症」の状態で、優先度が高い患者と判断され、翌15日から2日間、保健所が県に入院調整を依頼しましたが、対応できる医療機関は見つからず自宅で療養を続けることになったということです。

そして17日の朝、保健所が再び電話をかけた際、女性が「腹部に張りがあり、出血がある」と話したため、かかりつけの産婦人科や保健所、県の調整本部などで複数の医療機関にあたりましたが受け入れ先が見つからず、午後4時20分ごろ患者から保健所に「腹部に痛みがあり、再度出血があった。陣痛ではないか」と連絡があったということです。

その後も、県や保健所などが探しましたが見つからず、1時間後の午後5時20分、自宅で男の赤ちゃんを出産しました。

早産のため緊急の処置が必要で、女性はみずから救急要請を行い、赤ちゃんは病院に救急搬送されましたが、亡くなったということです。

女性は現在、中等症と診断され入院しているということです。

保健所「コロナ患者受け入れ困難 妊婦対応医療機関にはかぎり」

柏市保健所は「コロナ患者の受け入れが難しい状況なうえ、妊婦にも対応できる医療機関にはかぎりがあり、不幸な事態になった」としてさらに詳しい経緯を調べるとともに、県に対し妊婦の受け入れ態勢の強化に向けた支援などを求めていく考えを示しました。

県や保健所 計10か所に打診も受け入れ先見つからず

千葉県や柏市保健所が明らかにしたところによると、これまでに分かっている範囲で、県の調整本部などでは8か所の医療機関に打診しましたが調整がつかず、保健所も少なくとも2か所に依頼しましたが、対応できるところは見つからなかったということです。

専門家「妊婦は優先的に搬送する必要がある」

日本産婦人科医会常務理事で、日本医科大学の中井章人教授は「出産に関連して緊急度が高い妊婦については都道府県の産科施設が連携して受け入れ先を決める搬送体制が確立されているが、新型コロナに感染した妊婦については、感染対策の課題があり、受け入れ先が限られているのが現状だ。今回のようなケースは全国どこでも起こり得るもので全国的に感染した妊婦の搬送体制の強化が求められる。また、出産に関連した症状ではなくても妊婦は特に妊娠後期に新型コロナに感染すると重症化しやすいとされている。救急搬送体制がひっ迫する中ではあるが、妊婦は優先的に搬送する必要があるのではないか」と話していました。

熊谷知事「産科の医療機関などと連携 サポート検討」

熊谷知事は定例会見で「妊婦の方も含めて感染者がなかなか入院できない状況は重く受け止めている。産科の医療機関などと連携を行い、どのようなサポートができるか検討していく」と述べ、検証を行う考えを示しました。

産婦人科医らのグループ 事前の受け入れ先決定など確認

新型コロナに感染した妊婦の出産は、感染対策で手術時間を短縮するため帝王切開を行う準備が必要だったり、生まれた赤ちゃんをすぐに隔離することが必要だったりして、対応できる病院が限られていて、入院調整に時間がかかるケースがみられています。

こうしたことから、千葉県内の産婦人科医らのグループは緊急のオンライン会議を開き、感染した妊婦の急な出産に備え、事前に受け入れ先を決めておくことなどを確認しました。