感染確認最多に 自宅療養めぐる厳しい状況 どう乗り越える?

大阪府、初の2000人超え。愛知県は初の1000人超え。そして東京都はこれまでで2番目に多い5386人。新型コロナウイルスの感染確認の発表は全国で2万3000人を超え、1日の発表としてはこれまでで最も多くなりました。

自宅療養者が急増する中、東京都内では感染した親子3人全員が自宅で療養し、40代の母親が死亡したことが明らかに。

こうした厳しい状況を何とか乗り越えようと、「緊急性の高い症状」などをツイッターで発信したり、現役を引退した古い救急車を活用したりといった取り組みも始まっています。

各地で新規感染者が過去最多に

18日は午後6時半現在、全国で23917人の感染が発表され、1日の発表としては過去最多となりました。このうち27の府県が過去最多、または最多に並んでいます。
東京都ではこれまでで2番目に多い5386人が新たに感染していることが確認されました。
水曜日としてはこれまでで最も多く、感染の急速な拡大が続いています。
また、都は、感染が確認された6人が死亡したことを明らかにしました。

止まらない感染拡大

18日行われた厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、新規感染者数は17日までの1週間では、前の週と比べて全国では1.31倍と感染の拡大が続いています。
緊急事態宣言が出されている地域では、
▽東京都と神奈川県で1.14倍、
▽埼玉県で1.25倍、
▽千葉県で1.29倍、
▽大阪府で1.46倍、
▽沖縄県で1.26倍と、
拡大傾向に歯止めがかかっていません。

今月20日から宣言の対象地域に追加されることが決まった地域でも、
▽茨城県で1.06倍、
▽栃木県で1.18倍、
▽群馬県で1.38倍、
▽静岡県で1.74倍、
▽京都府で1.48倍、
▽兵庫県で1.57倍、
▽福岡県で1.18倍と、
過去最多を更新する中で拡大が続いています。

自宅療養 「親子3人全員感染 母親が死亡」

感染拡大が続く中、医療現場のひっ迫とともに自宅療養者も増えています。

東京都は17日、新型コロナウイルスに感染した親子3人全員が自宅で療養し、このうち40代の母親が死亡したことを明らかにしました。

都によりますと、亡くなった40代の女性は家庭内感染で、今月10日に陽性がわかったということです。

夫と子どもも陽性となり、3人で自宅療養をしていたということです。

女性は、陽性がわかった翌日に保健所が行った健康観察では、発熱とせきの症状があったということです。

都には保健所から入院の調整依頼がなかったということで、都は軽症だったとみています。

その翌日の12日に自宅で倒れているのを夫が見つけましたが、すでに亡くなっていたということです。

現時点で、女性の死因は不明だということです。

女性や家族が入院を希望したかどうかなど詳しい経緯は、都は、保健所から聞き取っていないためわからないとしています。

女性は糖尿病の基礎疾患があり、ワクチンの接種歴はなかったということです。

第5波で都が把握した自宅療養中に死亡した人は、7人になりました。

自宅療養中「注意すべきポイント」まとめてツイッター発信

こうした中、感染拡大による厳しい状況を乗り越えようという取り組みも。

新型コロナウイルスの対策に携わる医療や公衆衛生の専門家でつくる「有志の会」は、自宅療養中に注意すべきポイントをまとめてツイッターで発信しました。

この中では、療養中に救急車を呼ぶ目安となる「緊急性の高い症状」として13項目を示し、患者自身でチェックすることとして、
▽唇が紫色になっている
呼吸などについて
▽息が荒くなった
▽急に息苦しくなった
▽生活をしていて少し動くと息苦しい
▽胸の痛みがある
▽横になれない座らないと息ができない
▽肩で息をしている
▽突然ゼーゼーし始めた
意識について
▽脈のリズムが乱れる感じがする
といった点を挙げています。

また、家族や同居者には
▽顔色が明らかに悪い
▽いつもと違う、様子がおかしい
▽反応が弱く、ぼんやりしている
▽返事がなく、もうろうとしている
といった点を注意するよう求めています。
地域によっては救急車を要請しても搬送までに長い時間がかかるため、体調の変化が不安なときには、かかりつけ医や診断した医師、保健所や自治体の相談窓口に相談するよう呼びかけています。

専門家有志の会は「保健所からの連絡や診療所から自宅療養についての指導がないまま、自宅療養に入る人が増えているため、必要な情報を届けなくてはいけないと思い発信した」としています。

“救急車も足りない” 引退した古い救急車 再活用

自宅療養中の患者を病院に搬送しようとしても受け入れ先が見つからず、救急車が出払ってしまう事態が増えていることから、千葉県習志野市は現役を引退した古い救急車を再び活用する取り組みを始めました。

習志野市消防本部では6台の救急車を運用していますが、新型コロナウイルスの感染者の急増で救急車が出払ってしまう事態が先月から17日までに19回発生し、例年の同じ時期のおよそ4倍にのぼっているということです。

千葉県内の新型コロナの専用病床がほぼ満床となっていて、自宅療養中の患者を病院に搬送しようとしても受け入れ先が見つからず、救急車が長時間、現場で待機せざるをえないケースが増えているのが原因だということです。

消防本部ではこのままではいざという時、救急車が出動できなくなるおそれがあるとして、おととし現役を引退して廃車する予定だった古い救急車を再び活用することになりました。

習志野市消防本部警防課の中田敏明主幹は「このような事態は初めてですが古い救急車を活用することで、市民の安心と安全を守っていきたい」と話していました。

保健所に代わり医師が自宅療養者の健康観察

急速な感染拡大で入院調整に追われる保健所の代わりに、自宅療養者の体調の変化をフォローする業務を地域のかかりつけ医や訪問看護師が協力して支える取り組みも、東京都内で始まっています。

大田区のクリニックの鈴木央医師は、朝から11人の自宅療養者に電話をかけ、その日の体温や、血液中の酸素の値、呼吸が苦しくないかなどを丁寧に聞き取っていました。

自宅で「酸素濃縮装置」を使いながら入院を待っている50代の男性患者との会話では、酸素を投与したことで数値が改善していて、鈴木医師は「悪い方向にいっていないので希望を持って頑張りましょう」と励ましていました。

また、30代の女性は、前日に血液中の酸素の値が「中等症2」の状態に低下したものの、酸素を投与する装置が見つからず、投薬治療を続けたところ持ち直したということで、医師は「不安な中でよく頑張ったね」と声をかけていました。
鈴木医師は「保健所はいちばん重要な役割として入院調整をしていただく。かかりつけ医は診断した患者の健康観察や、往診を担う。訪問看護ステーションは在宅での患者の生活を改善させていくと。大田区では保健所や病院、訪問看護との連携が、ある程度うまくいっているが、それでも支えきれないほどの患者が出ているのが現実です。マンパワーをできるだけ集め、みんなで協力して取り組んでいくしかない」と話していました。

専門家会合 脇田座長「当面は接触減らして」

早急な対策が求められる中、政府や専門家は現状や今後の取り組みを次のように語っています。

18日、厚生労働省の専門家会合のあと会見した脇田隆字座長は、現在の感染状況と対策について「首都圏や沖縄では感染状況が『踊り場』になっているように見えているが、ほかの地域では急速な拡大が続いていて、東京でもかなり多い感染者数が報告されているので、今後も増加が続くという見込みが話し合われた。これまでの感染対策を徹底するのに加えて当面は接触を減らしてもらうしかない。政府の分科会から提言があったように、外出の機会を半分にしてもらうことが中心になる。現在、医療の状況は『災害レベル』としきりに言われているが、一般の医療が制限されるような状況だということを認識して行動してほしい」と話しました。

田村厚生労働相「抗体カクテル療法 全国展開 早急に進める」

田村厚生労働大臣は専門家会合の冒頭「全体に感染が広がり、重症者の数も急激に増加していて、医療の体制をしっかりと確保していかなければならない。抗体カクテル療法を全国で展開できるよう早急に進め、十分な供給量の確保にも努めていく。また、自宅で療養している人のために、緊急の場合は、酸素濃縮機を自宅でも対応できるよう、メーカーにも増産をお願いし、国がある程度、管理しながら計画的な配布を考えていきたい」と述べました。

また「コロナ患者の治療を行っていない医療機関にも治療を担ってもらえるよう、感染症法の規定を活用して、早急に対応を進めたい」と述べました。

日本医師会 中川会長「臨時医療施設に大規模会場活用を」

日本医師会の中川会長は18日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大による病床のひっ迫を受け、臨時の医療施設として大規模なイベント会場や運動施設などを活用するよう、厚生労働省に要請していると説明しました。

そのうえで臨時の医療施設について「自宅療養に比べて非常に効率的に患者の急変などを察知できる利点がある。緊急的な有事であり、できるだけ病床を増やすという意味でいろいろなことを考えたい」と述べ、医師の派遣などに協力していく考えを示しました。

また、経団連と連携し、全国にある企業の研修施設を感染者が療養する宿泊施設などとして、活用する方向で検討を進めていることを明らかにしました。

一方、中川会長は、子どもの感染が増えていることから、部活動や夏休み明けの学校での集団感染を防ぐ具体的な対策を早急に示すよう、文部科学省に要請する考えも示しました。