急増する自宅療養者 当事者の声は

新型コロナウイルスの感染が急激に拡大し、連日、感染確認の発表が過去最多を更新しています。
感染者とともに急増しているのが、自宅療養者です。
実際に療養している人は今どうしているのか。そして、自宅療養者の急増による影響は。

家族に感染を広げないか不安

新型コロナウイルスに感染した福岡県に住む30代の女性は、同居している家族に基礎疾患があるため宿泊療養を希望しましたがかなわず、自宅療養を余儀なくされています。

この女性は、今月1日に発熱し、翌日、陽性と判明。

38度台の熱が出たあと薬を飲んで熱は下がっていますが、今も左胸に刺すような痛みがあり背中や節々も痛いということです。
女性の母親はワクチンをまだ接種できておらず糖尿病の基礎疾患もあるため、女性は保健所に入院やホテルでの宿泊療養を希望しましたが、軽症のため自宅で療養するよう指示されたということです。

女性は自分の部室から出ないように生活していますが、トイレなど共用で使わざるをえない場所もあるため、家族に感染を広げないか、不安に感じているといいます。

外で会食はしておらず、自宅と会社をバスで往復しかしていないため、感染経路は分からないということです。

女性は「常にマスクもしていたので、いつどこで感染したのか全く分かりません。基礎疾患のある母親にうつさないように、一刻も早く宿泊療養などができる状況になってほしい。パルスオキシメーターも届かないので、症状の悪化が客観的に分からず心配です」と話していました。

東京都の自宅療養者 1か月で約14倍に

感染の急拡大が止まらない東京都。新たに確認された感染者は、5日は5042人、6日は4515人になりました。

感染者の急激な増加に伴って、自宅療養者も急増しています。
都によりますと、自宅で療養している人は5日時点で、1万6913人。この1か月でおよそ14倍になりました。

都の専門家は、「今後もさらに増加することが予測される。フォローアップ体制を強化して、自宅療養中の重症化を予防する必要がある」と指摘しています。

ネット注文相次ぐスーパー 自治体からの注文急増も

こうした中、インターネットでは食料品などを買い求める動きが広がり、サービスを提供しているスーパーでは対応に追われています。

感染予防のため外出を控えたり、感染して自宅での療養を余儀なくされたりしている人たちが、インターネットを通じて食料品や日用雑貨を購入するケースが増えているためです。

このうち、埼玉県のスーパーでは、去年春の最初の緊急事態宣言の際に利用者が急増し、その後、しばらく落ち着いていましたが、感染者が急増し始めた先月下旬から再びネットでの注文が増え始めたということです。

埼玉県には今月2日に再び緊急事態宣言が出され、先週と比べるとおよそ2割、増加しました。

鶴ヶ島市の店舗では6日も大半の従業員が出勤し、野菜や冷凍食品などを配送用のケースに詰め合わせる作業に追われていました。

特にカップラーメンなどの保存食品や、ティッシュペーパーなど紙製品の注文が多いということです。
さらに、このスーパーでは感染の急拡大を受けて、思わぬ依頼が相次いでいます。

新型コロナに感染して自宅療養する人には、埼玉県が、缶詰やレトルト食品など1人あたり3日から5日分の食料を無料で配布しています。

感染の急拡大を受け、スーパーでは県からの注文が前の週の3倍の1050件に急増し、その対応にも追われている事態となっています。

埼玉県によりますと、件数が多いために手配が間にあわず、配送が遅れるケースも出ていて、県では1人暮らしの人などを優先して届けるようにしているということです。

このスーパーを運営する会社の移動販売課係長の今井紀江さんは「注文数が急増し、お客様からの注文に必ずしも対応しきれていない部分が出てしまっていると考えられますが、何とか応えられるよう対応を検討したいです」と話していました。

自宅療養者がネットスーパーを利用

SNS上では、自宅で療養する人や感染を懸念する人がネットスーパーを利用して食料を確保したという書き込みが相次いでいます。

ツイッターに「感染者増えて恐々でスーパー行けないから半年ぶりにネットスーパー頼んだ」と投稿した、都内に住む30代の女性に話を聞くことができました。

女性は“第5波”に入って感染が急激に広がっているため、スーパーを訪れて買い物するのを控え、4日、ネットスーパーで野菜や肉などの食品を注文しました。

ことし1月にピークとなった第3波のあと、都内では感染者が減ったため店舗で買い物をしていたということですが、近頃、子どもが通う保育園や夫の職場でも感染者が出たことなどから、予防のため外出をなるべく控え、半年ぶりにネットスーパーを利用したということです。

女性は「身近でも感染が出てきて不安を感じています。ネットスーパーは少し割高ですが感染予防には代えられないと思い、感染者の数が少なくなるまでは利用するつもりです」と話していました。

また、都内に住む50代の女性は夫が新型コロナに感染して自宅での療養となり、自分も濃厚接触者となりました。

保健所の要請で外出はできず、自治体には食料品の配送を希望しましたが、いつになるか分からないと言われたということです。

このため久しぶりにネットスーパーを利用し、療養中に必要な食品などを注文しました。

女性は「注文した翌日には食料品を確保できました。我が家は自宅での療養も食料の確保もうまくいっているほうですが、大変な思いをしている人はもっといるのではないでしょうか」と話していました。

医療従事者が自宅待機になる事態も

一方、病床がひっ迫している医療現場では、新たな課題も出てきています。

東京 文京区の東京医科歯科大学附属病院では、6日の時点で、入院患者は重症が6人、中等症が23人となり、いずれの病床も満床の状態になっています。

さらに、この1週間は容体が重い患者の搬送が多く、入院した半数が酸素の投与が必要で、人工呼吸器や、鼻から高濃度の酸素を大量に投与する「ネーザルハイフロー」という医療機器を準備して対応にあたっています。

医療従事者はワクチンの優先接種を済ませていますが、まだ接種できていない同居家族が感染することで、濃厚接触者とされてしまい、働けなくなるケースが相次いでいます。

これまでに病院で働く医療従事者のうち、およそ30人が自宅待機となり、人手不足が深刻化すると危機感を募らせています。
若林健二病院長補佐は「“第5波”の特徴として勤労者世代の感染が多く、医療従事者も一緒に住む家族が感染すると、濃厚接触者になって休まなくてはいけない状況が多数発生している。患者が増え、重症病床も増やしていこうという中で、医療提供の礎となるスタッフの数が減っていて、非常に危機感を感じる」と話しています。