レバノン ベイルート 大規模爆発から1年で追悼式

中東レバノンの首都ベイルートで200人以上が死亡する大規模な爆発が起きてから1年となるのに合わせて、現地で追悼式が開かれました。参加者からは家族や友人を失った悲しみの声とともに、爆発の原因や責任の所在を明らかにしない政府を非難する声が聞かれました。

去年8月、レバノンの首都ベイルートの港で大規模な爆発が起き、遺族の弁護団によりますと212人が死亡、6500人以上がけがをしました。

港の倉庫に大量に保管されていた、爆薬の原料にもなる化学物質「硝酸アンモニウム」が何らかの原因で爆発したとみられていますが、爆発の責任をとる形で内閣が総辞職して以降、各政治勢力の対立で新政権はいまだに発足せず、原因の究明は進んでいません。

爆発が起きてから1年となった4日、現場の港で追悼式が開かれ、犠牲者の家族や友人などおよそ1000人が参加しました。
そして黙とうや祈りをささげ、突然起きた爆発に巻き込まれて命を落とした人々の死を悼んでいました。

参加した女性の1人は「兄とおいが亡くなってから喜びが消えた」と涙ぐみながら話していました。

また、妻を亡くした男性は「1年たっても寂しさは増すばかりだ。政治家たちは何もしない」と話し、いまだに爆発の原因や責任の所在を明らかにしない政府を非難していました。

レバノンでは新型コロナウイルスの感染拡大に大規模な爆発が重なって、経済危機が加速し、市民の不満が高まっていて、この日を含め、政府に抗議するデモが頻繁に行われています。

政治と経済の混迷で市民生活悪化

レバノンは、貿易赤字や公的債務が拡大し続ける中、2019年秋から多発した大規模な反政府デモの影響で経済が急激に悪化し、去年3月には政府が外貨建て国債の返済延期を表明し、事実上のデフォルト=債務不履行に陥りました。

そこに新型コロナウイルスの感染拡大と大規模な爆発が重なったことで、経済危機が加速し、通貨レバノン・ポンドの実質的な価値は当時の10分の1以下まで暴落しています。

それに伴って物価も上昇し、首都ベイルートの市場で買い物をしていた70代の女性は「すべての食材が高くなって何も買えなくなった。今の収入ではやっていけない」と嘆いていたほか、60代の男性は「ここ数か月で物価が急激に高騰した。10倍くらい高くなっている。生きていけない。この国は深刻な問題を抱えている」などと不安を口にしていました。

物価の上昇は爆発で壊れた住宅や商店などの再建費用も高騰させ、ベイルート市内では爆発から1年がたった今も壊れたままで手付かずの建物が多くみられます。

さらに、慢性的な電力不足でベイルートの中心地でも電力の供給が1日数時間にとどまるなど、市民生活は苦しさを増しています。

こうした経済危機から脱することができない原因の一つは、政治の空白が続いていることです。

爆発が起きた責任をとる形で内閣が総辞職して以降、2人の首相候補者が組閣を試みましたが、18の宗教と宗派があるレバノンで各政治勢力との調整がつかず、いずれも断念しています。

先月、元首相のミカティ氏が新たな首相候補に指名され、組閣を進めていますが、新政権を発足させ、1年近く続く政治の空白を終わらせることができるかは不透明な情勢です。

爆発以降 支援続ける国や国際機関 新たに拠出

レバノンへの支援を続けている、フランスなど30以上の国と国際機関は4日、オンラインの会合を開き、新たに日本円でおよそ400億円を拠出すると約束しました。

レバノンをめぐっては、旧宗主国フランスの呼びかけでアメリカやヨーロッパ、中東の30以上の国と国連などの国際機関が、事故の直後から支援を行っていて、4日、3回目となる会合がオンラインで開かれました。

議長を務めたフランスと国連の声明によりますと、会合では、生活に必要な物資が多くの人々に行き渡らない状況になっているとして、食料や公衆衛生、そして教育分野への支援として、3億7000万ドル、日本円でおよそ400億円の拠出を約束したということです。

また、爆発以降、各政治勢力の対立で政権を発足できない状態が続いていることについては「政治的な危機の責任はリーダーたちにある」として、速やかな改革が必要だと指摘しています。

会合の冒頭、マクロン大統領は演説で「最も重要なのは国民のための緊急対策に責任を持つ政府の樹立だ。それによって、国際社会はレバノンをより一層支援できる」と訴えました。