五輪初のトランスジェンダー選手が出場 ウエイトリフティング

東京オリンピック、ウエイトリフティングの女子87キロを超えるクラスで、心と体の性が一致しないトランスジェンダーの選手として初めてオリンピックに出場したニュージーランド代表のローレル・ハッバード選手は、前半のスナッチを3回とも失敗し、記録なしで終わりました。

43歳のハッバード選手は、2013年にトランスジェンダーであることを公表して、性別適合手術を受けたうえで女子の種目に出場し始め、ことし6月に国際ウエイトリフティング連盟が発表した東京オリンピックの出場権についてのランキングで7位に入って出場権を獲得しました。

そして、2日に行われた女子87キロを超えるクラスに、トランスジェンダーの選手として初めてオリンピックに出場しました。

ハッバード選手は、バーベルを一気に頭上に挙げる前半の「スナッチ」の1回目、多くのカメラのシャッター音のなか、120キロに挑戦しましたがバランスを保てず失敗しました。

2回目は重量を上げて125キロに挑戦し、およそ5秒かけてバーベルを頭上まで挙げ、笑顔でガッツポーズを見せましたが、失敗の判定となり、再び125キロに挑戦した3回目も失敗に終わりました。

この結果、バーベルをいったん肩まで持ち上げたあと、頭の上に上げる後半の「ジャーク」には進めず、初めてのオリンピックは記録なしに終わりました。

会場では選手の取材を行うミックスゾーンにこの競技では異例ともいえる多数のメディアが詰めかけ、急きょ、選手の導線を確保するためのパーティションが特別に設置されるなど、注目度の高さをうかがわせました。

ハッバード選手は、試技の終了後、会場にいる関係者からの拍手に手をあげて応えていましたが、ミックスゾーンでは各国のテレビ局がインタビューを求める中、無言でカメラの前を通りすぎ、母国・ニュージーランドのテレビ局の取材にだけ応じていました。

ハッバード選手のこれまでは

ニュージーランドのローレル・ハッバード選手は43歳。35歳のときにトランスジェンダーであることを公表しましたが、10代から20代の前半の間はニュージーランド国内で男子種目に出場していました。

2013年に性別適合手術を受けたあと女子種目に出場し始め、世界選手権では、2017年に90キロを超えるクラスで銀メダルを獲得し、2019年には新たに設定された87キロを超えるクラスで6位に入りました。

ことし6月に国際ウエイトリフティング連盟が発表した東京オリンピックの出場権についてのランキングで87キロを超えるクラスで7位に入って出場権を獲得し、2日にトランスジェンダーの選手として初めてオリンピックに出場しました。

トランスジェンダーの選手が女子の競技に参加することについて、IOC=国際オリンピック委員会は2015年、男性ホルモンのテストステロンの値が12か月間にわたって一定以下であれば認めるとするガイドラインを策定しています。

IOC広報責任者「彼女は選考会のルールをクリア」

ハッバード選手がトランスジェンダーの選手として初めてオリンピックに出場することについて、IOC=国際オリンピック委員会のマーク・アダムス広報責任者は2日午前中の記者会見で「選考会のルールは明らかにされている。そして、彼女はそのルールをクリアしているからこそ競技に参加できるわけなので、IOCとしてはサポートをしていきたい。すべての選手が競技に参加するということで、彼女、そしてこのクラスに出場する選手の成功を願いたい」と述べました。

海外では さまざまな反応

トランスジェンダーのローレル・ハッバード選手がオリンピックに出場したことについて、海外ではさまざまな反応が出ています。

このうち、ハッバード選手の母国、ニュージーランドのオリンピック委員会のケイレン・スミスCEOは委員会のホームページの中で「ハッバード選手は、世界のトップレベルの選手であるだけでなく、トランスジェンダーの選手のためのガイドラインに基づく基準を含めた資格基準を満たしている。スポーツにおける性同一性は、非常に繊細で複雑な問題であり、競技における人権と公平性のバランスが必要であるということも認識しているが、資格のあるすべてのニュージーランド選手をサポートしていきたい」とコメントしています。

一方、イギリスの公共放送BBCは、ハッバード選手が2013年にトランスジェンダーであることを公表するまで男子の競技に出場していたことに触れたうえで、「批評家たちは、男性として思春期を過ごした人が持っている骨や筋肉の密度が高まるという生物学的な利点を指摘し、彼女がオリンピックに参加することは女性に生まれたアスリートにとって不公平だと言っている」と伝えています。

また、イギリスのスポーツジャーナリストたちが記事を掲載をしているウェブサイト「インサイド ザ ゲームス」は、IOC=国際オリンピック委員会が2015年にトランスジェンダーの選手の出場を認めるにあたって策定したガイドラインを踏まえた指摘を行っています。

ガイドラインでは、男性ホルモンの「テストステロン」の値が12か月間にわたって「1リットルあたり10ナノモル以下」であれば、女性の競技に出場できるとしていますが、記事では「女性のエリート選手のテストステロンの平均は『1リットルあたり0.26から1.73ナノモル』となっている。トランスジェンダーの女性は、そのおよそ5倍のテストステロンを持っていてもよい、というのがIOCの方針だ」と皮肉を込めた表現で競技面での不公平感について報じていて、参加するすべての選手が公平な競技の方式を探していくべきだとしています。

参加選手の反応は

ハッバード選手が出場したことについて、競技に参加した選手に受け止めを聞きました。

ベルギーのファンベリンヘン選手は「ちょっとフェアではないと思う。ただ、彼女は国際連盟の要件を満たしていまこの場にいる。私の意見は変わらないが、ハッバード選手には悪意は持っていない。次のオリンピックまでに現行のルールを見直すべきなのかもしれない」と話していました。

一方、銀メダルを獲得したイギリスのキャンベル選手は「きょうは自分のことだけを話したい。答えたくない」と明言を避けました。