オリンピック 文田健一郎が銀メダル グレコローマン60キロ級

東京オリンピック、レスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級の文田健一郎選手が銀メダルを獲得しました。

文田選手は、1日に行われた1回戦と2回戦、それに準決勝を勝ち上がり、2日の決勝でキューバのルイス アルベルト・オルタ サンチェス選手と対戦しました。

文田選手は前半、相手に場外に出されたり、寝技を決められるなどして、4ポイントを奪われました。

後半に入って1ポイントを返したものの、相手の徹底して頭をつけて胸を合わせないようにする戦い方に苦しみ、最後まで得意の投げ技などを決めることができませんでした。

文田選手は1対5で敗れ、銀メダルでした。

試合後、マットを降りた文田選手は、涙を流しながら悔しそうな表情を見せていました。

金メダルは、キューバのルイス アルベルト・オルタ サンチェス選手、銅メダルは中国の瓦里汗賽里克選手と、ロシアオリンピック委員会のセルゲイ・エミリン選手でした。

涙止まらず「やっぱり金がよかったですが誇らしい」

文田選手が表彰式に臨み、銀メダルを受け取りみずから首にかけました。

文田選手は試合直後、涙が止まりませんでしたが、表彰式ではメダルを見つめ時折、笑顔を見せました。

このあとインタビューに応じた文田選手は、再び悔しさが込み上げてきた様子で涙が止まらず、「やっぱり金がよかったですが誇らしいです。このオリンピックを目指してやってきた5年間の重みを感じました。本来なら、金メダルを取って応援の恩返しという形で見てもらいたいかったですが、銀メダルになってしまいました。それでも応援してくれたすべての人に、このメダルを見てもらいたいです」とことばを絞り出しました。

今後については「オリンピックでの借りはオリンピックでしか返せない。パリでの金を目指してまた一からやっていきたい」と話していました。

得意の「そり投げ」で勝ち抜いてきた文田 大きな成長ぶり示す

得意の「そり投げ」を徹底的に警戒された文田選手。頂点まであと一歩のところで相手の対策を上回ることができませんでした。

「そり投げで勝つのが一番の理想。でもすごく警戒されると思う」

大会前、そう話していた文田選手。これまで、一貫して「そり投げ」にこだわってきました。「“投げ”こそグレコローマンスタイルの真骨頂」というのが信念。

特に背中を大きく反らせ、後方に投げる「そり投げ」は「世界一の切れ味」と言われ、レスリングの指導者である父・敏郎さんに中学生の頃からたたき込まれてきました。反面、その得意技は海外勢にも広く知られていて、文田選手と戦う際に「そり投げ対策」を取るのはもはや常識となっています。

文田選手との対戦で不用意に前に出ると投げられる確率が高くなるため、腰を大きく引き間隔を取って、投げを封じる作戦に出る選手が多く見られました。
2017年ごろから「自分のスタイルに限界を感じていた」という文田選手。その殻を破るためそり投げ以外の攻め方を磨き始めました。

1つが、ウエイトトレーニングに取り組み「前に出る力」を付けることです。相手を上回るパワーで押し込んでいけば、相手を場外に出すことができ、対抗して押し返してくればそり投げでしとめられるからです。

さらに寝技にも力を入れました。相手を押し続ければ相手が消極的な姿勢と判断されて「パーテレポジション」と呼ばれる寝技の体勢に入ることができる可能性が高くなります。引き付ける力が強い文田選手だけに相手を回転させる寝技「ローリング」は非常に強烈で、そり投げに次ぐ「第二の必殺技」と言えるまでに磨き上げました。

「自分のすべてを出して金メダルを獲得したい」と臨んだ今大会。予想どおりほとんどの相手が徹底してそり投げを出させないよう腕を取って腰を引き、警戒してきましたが、文田選手は「想定どおり」と慌てず寝技に持ち込み、ローリングでポイントを奪って勝ち上がりました。

「そり投げ」のイメージがあるだけに技を出さなくても相手には大きなプレッシャーになり、積極的なレスリングをさせませんでした。

しかし決勝は逆に相手に寝技でポイントを奪われ、ローリングも決めることができませんでした。

「相手の対策を乗り越えられなかった」と涙を流した文田選手。周囲に警戒される中で頂点を極める難しさを実感する銀メダルとなりました。