子どもや親の世代で感染急増 小児医療現場で広がる危機感

新型コロナウイルスの感染の急拡大で、2日から緊急事態宣言の対象地域となった神奈川県では、小さな子どもや、子を持つ親の世代で感染が急増していて、小児医療の現場では危機感が広がっています。

川崎市にある「聖マリアンナ医科大学病院」は、新型コロナに感染した子どもを受け入れる数少ない病院で、小児病棟の60床のうち、部屋を分けて感染対策を徹底したうえで、状況に応じて最大12床をコロナ患者用にあてています。

病院では、防護服を身につけた看護師が子どもをだっこして、おむつをかえたり、ミルクをあげたりしていました。

今のところ、子どもが重症化することはほとんどなく、病床が満床になっていませんが、20代から40代の親の世代の感染が急増していて、それに伴って家庭内で子どもに感染するケースが増えるのではないかと警戒を強めています。

親が入院すると、子どもは症状が軽くても病院で受け入れる必要があるということです。

さらに、生後6か月以下の赤ちゃんなどが感染すると重症化するおそれがある「RSウイルス感染症」の流行もあり、小児医療の現場では危機感が広がっています。

小児科の勝田友博医師は「子どものコロナ患者は軽症であっても受け入れる病院が限られます。子どもの感染は大人からがほとんどで、子どもを守るため、大人には感染予防に努めてほしい」と話していました。

子どもや親の世代の感染が急増

神奈川県内では、6月末から先月にかけて、子どもや親の世代の感染が急増しています。

10歳未満と10代の感染は、6月27日から先月3日の週には、合わせて200人余りでしたが、先月25日の週には5倍以上の1141人になりました。

また、親の世代にあたる20代から40代も、6月27日の週には885人でしたが、先月25日の週にはおよそ5倍の4483人に増えています。

子どもたちへの対応の難しさ

新型コロナに感染した子どもたちへの対応には、大人とは違った難しさがあるといいます。

1つは医療従事者が感染するリスクの高さです。

聖マリアンナ医科大学病院によりますと、小さな子どもはマスクをつけることができないほか、ひとりで食事をとれない場合も多く、看護師が抱きかかえてミルクをあげたり、食事の介助をしたりと、密着する機会が多くなります。

また、医療従事者の防護服やマスク、それにフェイスシールドに興味を持ち、触ったりすることもあるということです。

2つめは心のケアです。

新型コロナの感染拡大以降、小児科病棟では、外に出ることができない子どもの遊び場だったプレイルームを閉鎖し、季節ごとのイベントも中止しています。

看護師も限られた時間しかコロナ病棟には入れず、子どもたちは、さみしさのあまり頻繁にナースコールを鳴らすこともあったということです。

病院では、タブレット型の端末を子どもに貸し出してナースステーションの看護師と会話できるようにしたり、病棟全体をイラストなどで飾りつけ、子どもたちの気持ちが少しでもやわらぐような工夫をしています。

聖マリアンナ医科大学病院小児病棟の沼里貞子看護師長は「親が入院しているケースが多くて面会に来られず、子どもはとてもさみしがっています。病室だけで過ごす子どもたちが少しでも癒やされるように環境を整えています」と話しています。

コロナ病床に空きも 小児医療現場ではひっ迫が

コロナ病床に空きがあっても、小児医療の現場ではひっ迫がすでに始まっています。

背景にあるのが、生後6か月以下の赤ちゃんなどが感染すると重症化するおそれがある「RSウイルス感染症」の流行です。

聖マリアンナ医科大学病院でも、コロナ以外の病床はほぼ満床の状態が続いていて、コロナ対応にさらに人手を割くためには、RSウイルスなどの子どもの患者をほかの病院で受け入れてもらう必要がありますが、受け入れ先でもすでに余裕がなくなってきているということです。

川崎市立多摩病院は、聖マリアンナ医科大学の小児科がコロナ対応のため一般の病床を減らしているため、それ以外の患者の受け入れを担っています。

29床ある小児科の病床は先月以降、9割近くが使われ、およそ半数がRSウイルス感染症の患者だということで、取材した先週も生後1か月未満の乳児が高濃度酸素の治療を受けていました。

川崎市立多摩病院の小児科部長、宮本雄策医師は「子どもの感染症は急に状態が悪くなる場合もあり、空いている病床がいくつあれば安心ということはありません。すでに病床はひっ迫していて、コロナの感染者が増えると、通常受け入れていたお子さんに、十分な医療ができなくなる不安があります」と話していました。

大阪でも強まる危機感

大阪府でも2日から緊急事態宣言が適用される中、府内最大規模で患者を受け入れてきた病院では、中等症の患者が急増し、危機感を強めて対応にあたっています。

大阪・守口市の関西医科大学総合医療センターでは、府内最大規模となる、28の重症病床と24の中等症病床を確保し、新型コロナ患者を受け入れています。

センターには、2日朝の時点で、中等症の患者が17人入院しています。

センターによりますと、このうちの15人が1日までの1週間に入院したということで、患者の急増に、現場は危機感を強めて対応にあたっています。

中等症の患者を担当する看護副師長の光峰登紀子さんは「1週間前までは病床に余裕があったが、今は満床に近い状態まで増えてきている。感染者が増えてきている状態だが、経過観察をしっかり行い、患者の重症化を防ぎたい」と話していました。

一方、2日朝の時点で入院している重症患者は8人で、20床は空いた状態だということです。

ただ、感染者は一定の割合で重症化するおそれがあり、府内の感染者が急増する中、今後、重症患者が増えることへの警戒を強めています。

大阪の新型コロナの医療が破たんの危機に直面した第4波のピーク時には、センターでは重症病床がほぼ満床の状態が続き、重症患者に対応できる看護師を系列の病院や全国の医療機関から派遣してもらうなどして乗り切ったということです。

この経験を踏まえ、センターは重症患者に対応できる看護師を育成するなど備えを進めています。

2日も、中等症の患者の病棟で働いている看護師が研修を受け、ICUに勤務する看護師から人工呼吸器の管理の方法や、患者の心拍数や血中の酸素の値を表示するモニターの見方などを学んでいました。

研修を受けた看護師の辻理美奈さんは「第4波で高齢者のみならず、若い人も重症化するのを間近で見てきた。これから重症患者も増えてくると思うので、少しでも、患者を救えるように頑張りたい」と話していました。