地域住民から暮らしに関する幅広い相談を受け付けている横須賀市の社会福祉士の玉井秀直さんのもとには、市が80歳以上のワクチン接種の予約の受付を始めた5月上旬以降、高齢者を中心に接種の内容や予約の方法に関する相談が相次ぎました。
これまでにおよそ200人について本人の意思を確認し、予約の手続きを一緒にしたということです。
一方で、相談してきた高齢者の中には認知症や認知症の疑いがある人もいて、ワクチン接種の意思確認が難しい人もいたということです。
このため9人については、その場で予約の手続きは行わず、本人の意向をくみ取るため身近な人を探すことにしました。
このうち、県営団地に1人で住む認知症の77歳の女性の場合、玉井さんが知っていた長女から連絡してもらい、先月までに2回の接種を終えたということです。
77歳の女性は「娘と玉井さんがいないとワクチンを打てなかった。ありがたかった」と話していました。
一方、本人と意思疎通がしづらく身近な人をたどることができなかったり、身近な人を見つけることができても意向をくみ取ることができなかったりするケースもあり、玉井さんは定期的な訪問活動などを通じて模索を続けています。
県営団地に1人で住む認知症の疑いがある高齢女性の場合、玉井さんは遠方に住む親族に連絡を取りましたが、接種の支援を行うのは難しいと伝えられたということです。
その後もこの女性を尋ねていますが会えておらず、ワクチン接種の状況は分からないままだといいます。
玉井さんは「親族はいても疎遠で依頼するのが難しく、こうした状況になっている。その後も足を運んだが不在が続いていて、どうなったか心配です」と話していました。
また、同じ地区の認知症の疑いがある高齢者の夫婦もワクチンを接種したか聞いたものの「ワクチンって何だっけ」などと答えるなど、意思疎通が難しいということです。
この日は会話を重ねる中で、子どもがいることがようやく分かったということで、今後、連絡先をたどってみるということです。
玉井さんは「地道にコツコツ訪問しながら信頼関係を作ってサポートができるように続けていくしかない。助けてくださいと言わなくても、必要性がある人に上手に手を差し伸べられる取り組みや仕組みが必要だと思う」と話していました。
コロナワクチン接種 認知症などの人の意思確認 支援に難しさも
新型コロナウイルスのワクチン接種には本人の同意が必要で、認知症などで意思確認が難しい場合は家族など身近な人が意向をくみ取ることが求められていますが、独り暮らしなどで身近な人と連絡が取りづらいケースもあり、どう意思確認を行うのか、現場では模索が続いています。
ワクチンの接種には本人の同意が必要ですが、認知症などで意思確認が難しい場合、厚生労働省は家族や施設の関係者など日頃から身近にいる人が丁寧に意向をくみ取ることを求めています。
しかし、認知症や認知症の疑いがある人の中には、独り暮らしなどで家族と連絡が取りづらいケースもあり、支援に当たる人からは難しさを訴える声が出ています。
神奈川県横須賀市で、無料で福祉相談を行っている社会福祉士の玉井秀直さんもその1人です。
玉井さんのもとには横須賀市でワクチン接種の予約が始まった5月上旬以降、高齢者からの相談が相次ぎ、およそ200人については本人の意思を確認し、予約の手続きを一緒にしたということです。
一方、相談を受けた中には、認知症や認知症の疑いがある高齢者が9人いて、親族と連絡がついてワクチンを接種した人もいますが、身近な人が見つからないなどの理由で意思を確認できない人が今も3人いるということです。
厚生労働省によりますと、国内の認知症患者は去年の時点で600万人を超えると推計されるということで、支援の現場ではワクチン接種の意思をどう確認するか模索が続いています。
支援に難しさも
接種の意思確認とは
新型コロナウイルスのワクチン接種は、予防接種法に基づく実施規則で、接種を受ける人に接種の有効性や安全性、それに副反応について説明がされ、文書による同意を得なくてはならないとされています。
そのうえで、認知症などで意思の確認が難しい場合について厚生労働省は、自治体に対する通知の中で、「状況に応じて家族やかかりつけの医師、施設の従事者など日頃から身近で寄り添っている方々の協力を得て、本人の接種の意向を丁寧にくみ取ることなどにより本人の意思確認を行うこと」としています。
一方、医師などでつくる「日本臨床倫理学会」は意思の具体的な確認方法に関する手引きをまとめました。
手引きでは、最も大切なのは本人の判断であるため、意思を決定する能力があるかどうかを先入観を持たずに確認することが重要だとしています。
そのうえで、本人の意思が確認できない場合には、本人をよく知る家族などが代理で判断するとしています。
その場合、これまでの考え方や価値観、予防接種の履歴などをもとに本人の意思を推定して最善の利益を考えるとしています。
さらに、家族などの身寄りが無かったり、連絡がつかなかったりする場合には、さまざまな職種でつくる医療ケアチームが、話し合って決めることとされています。
そのうえで、認知症などで意思の確認が難しい場合について厚生労働省は、自治体に対する通知の中で、「状況に応じて家族やかかりつけの医師、施設の従事者など日頃から身近で寄り添っている方々の協力を得て、本人の接種の意向を丁寧にくみ取ることなどにより本人の意思確認を行うこと」としています。
一方、医師などでつくる「日本臨床倫理学会」は意思の具体的な確認方法に関する手引きをまとめました。
手引きでは、最も大切なのは本人の判断であるため、意思を決定する能力があるかどうかを先入観を持たずに確認することが重要だとしています。
そのうえで、本人の意思が確認できない場合には、本人をよく知る家族などが代理で判断するとしています。
その場合、これまでの考え方や価値観、予防接種の履歴などをもとに本人の意思を推定して最善の利益を考えるとしています。
さらに、家族などの身寄りが無かったり、連絡がつかなかったりする場合には、さまざまな職種でつくる医療ケアチームが、話し合って決めることとされています。
専門家「医療ケアと生活支援をつなぐ仕組み必要」
認知症のケアなど医療と倫理の問題に詳しい日本臨床倫理学会の理事の箕岡真子医師は「今後もこういった高齢者は増えてくるだろうと思う。しかし、適正な医療にアクセスする権利と受ける権利はすべての人にあり、本人が同意できない、あるいは代わりに同意してくれる家族がいないという理由だけで接種を受けられないのは問題があるのではないか」と指摘しています。
そのうえで「この問題は、医療の問題でありながらも生活支援の問題でもあり、医療ケアと生活支援を切り離さず一連のものとしてうまくつないでいく仕組みが必要なのではないか」と話しています。
そのうえで「この問題は、医療の問題でありながらも生活支援の問題でもあり、医療ケアと生活支援を切り離さず一連のものとしてうまくつないでいく仕組みが必要なのではないか」と話しています。