感染者 初の全国1万人超 “経験ない急速な感染拡大” 専門家

▽東京・3865人▽神奈川・1169人▽沖縄・392人
29日も新型コロナウイルスの感染確認の発表が過去最多となったところが相次ぎ、感染者は全国で初めて1万人を超えました。
“これまでに経験のない急速な感染拡大になっている”
現在の感染状況がこう分析される中、専門家は「危機感の共有」を指摘しています。

全国の感染発表 初の1万人超

新型コロナウイルスは各地でこれまでにないスピードで感染が拡大していて、29日の発表は全国で初めて1万人を超えました。一日の感染発表が過去最多を更新するのは2日連続です。また、全国で14人の死亡が発表されたほか、重症者は539人で28日から17人増加しています。

首都圏. 東京・神奈川はきょうも最多

▽東京都
過去最多となる3865人の感染確認が発表され、初めて3000人を超えた28日よりさらに688人増えました。これで3日連続で過去最多を更新し1週間前の木曜日の倍近くに増えました。

▽神奈川県
1164人の感染確認が発表され、一日の感染者数は2日連続で1000人を超え過去最多を更新しました。

▽埼玉県
864人の感染確認が発表され、2日連続で800人を超えこれまでで2番目に多くなりました。

▽千葉県
576人の感染確認が発表され、過去最多だった28日の577人とほぼ同じ水準で2日連続で500人を超えました。また、1週間前の木曜日よりも233人増えました。

関西. 大阪は5月11日以来の900人超

▽大阪府
932人の感染確認が発表されました。一日の感染者数が900人を超えるのは5月11日以来で、先週の木曜日の倍以上に上っています。

▽兵庫県
280人の感染確認が発表されました。

▽京都府
164人の感染確認が発表されました。

専門家“危機感共有を”

「これまでに経験のない急速な感染拡大になっている」
28日夜の厚生労働省の専門家会合は現在の感染状況についてこう分析しました。そして緊急事態宣言などによる人出の減少が限定的で、感染力が強い変異ウイルス「デルタ株」への置き換わりも進み、東京ではすでに一般医療への影響が起きているとして「このままの状況が続けば通常であれば助かる命も助からない状況になることも強く懸念される」と危機感を示しました。

さらに「こうした危機感を行政と市民が共有できていないことが最大の課題だ」と指摘しました。

脇田座長「危機的状況 市民に共有されていないことが問題」

厚生労働省の専門家会合のあと会見した脇田隆字座長は「東京都は緊急事態宣言が出されてから2週間経過しているが、その効果が出ているとは言い難い。人流は減少しているが前回の宣言時と比べると緩やかで減少幅も小さく、きょうの会合ではこのままではなかなか感染者数を減らすまでには至らないのではという議論があった。今の状況は単純に感染者数が増えているだけではなく、すでに一般医療への影響が始まっていて危機的な状況だということが十分に市民に共有されていないことがいちばんの問題だ。市民に協力してもらえるようなメッセージを発信することが重要だ」と話していました。

尾身会長「最大の危機は社会で危機感が共有されないこと」

政府の分科会の尾身会長は参議院内閣委員会で、現状では感染を減少させる要素がほとんどないとして、社会全体で危機感が共有されなければ早晩、医療のひっ迫が深刻になると強い危機感を示しました。

この中で尾身会長は感染状況について「今、この感染を下げる要素があまりないが上げる要素はたくさんある。一般の市民が『コロナ慣れ』していること、デルタ株の感染力が強くなっていること、夏休みやお盆、さらにオリンピックだ」と指摘しました。

そのうえで「最大の危機は社会で危機感が共有されてないことだ。このまま共有されなければ、感染はさらに拡大し早晩、医療のひっ迫がさらに深刻になる」と強い危機感を示しました。

そして「この1年半で最も厳しい状況にある。東京の感染者数が3000人を超えたこの時期を逃さないで、今まで以上に強いメッセージを出してほしい」と政府に求めました。

<記者解説>“危機感共有” 政府に求められることは?

「危機感が共有されていない」と専門家が指摘していることについて政府には何が求められるか、政治部・瀧川学記者の解説です。

尾身会長が指摘したように感染対策が長期間に及び、国民が宣言慣れしていることは否定できないと思います。

繁華街での人出が政府が期待するほど減っていないことはその表れの一つと言えますし、ある政府関係者も「正直、何か新しい対策を講じるのは難しい」と漏らしていました。

そうした中で、緊急事態宣言の効果をあげていくためには、国民が納得し感染対策の徹底などに協力しようと思えるメッセージを出すことが欠かせません。

今回の宣言はこれまでとは何がどう異なるのか、どんな対策をとっていつごろまでに何を目指すのかといったことをより明確に説明することが求められると思います。

“宣言” 埼玉 千葉 神奈川 大阪を追加

そして、政府は、東京都と沖縄県に出されている緊急事態宣言について埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県を追加する方針を固めました。期間は来月2日から31日までとし、東京と沖縄の宣言の期限もこれにあわせて延長する方針です。

菅総理大臣は午後5時ごろから、総理大臣官邸で西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らと会談しました。

その結果、緊急事態宣言の対象地域に埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県を追加する方針を固め、与党側に伝えました。

“まん延防止措置” 北海道 石川 京都 兵庫 福岡に適用

また、北海道、石川、京都、兵庫、福岡の5道府県に新たにまん延防止等重点措置を適用する方針です。

期間は、いずれも来月2日から31日までとし、来月22日までとなっている東京と沖縄の宣言の期限もこれにあわせて延長する方針です。

政府は、こうした方針を30日、感染症などの専門家でつくる「基本的対処方針分科会」に諮ったうえで対策本部で正式に決定することにしています。