オリンピック 柔道 阿部一二三が金メダル きょうだいで金は初

東京オリンピック柔道男子66キロ級で阿部一二三選手が金メダルを獲得しました。女子52キロ級の妹の阿部詩選手と柔道では史上初めて、オリンピックの同じ大会で、きょうだいでの金メダルを獲得しました。

オリンピック初出場の阿部一二三選手は、順当に準決勝に進みブラジルのダニエル・カルグニン選手と対戦しました。

優勝候補のイタリアの選手を破って勝ち進んできたカルグニン選手との試合は激しい組み手争いが続きましたが、阿部選手はキレのある技で積極的に攻め続け、開始2分半ごろ、背負い投げで一本勝ちしました。

決勝は、ジョージアのバザ・マルクベラシュビリ選手と対戦し、パワーのある相手に攻め込まれる場面があったものの冷静に対応し、開始2分ごろ、豪快な大外刈りで技ありを奪いました。

その後も相手の力技を冷静にいなして優勢勝ちしました。

阿部選手は詩選手が見守る中、初めてのオリンピックで金メダルを獲得しました。

阿部選手と妹の詩選手は柔道では史上初めて、オリンピックの同じ大会できょうだいでの金メダル獲得となりました。

表彰式に臨んだ阿部選手は、落ち着いた表情のまま金メダルを受け取り、自分で首にかけていました。

表彰式のあとのインタビューで阿部選手は「家族の力、僕を支えてくれる方々のおかげでこのメダルはあると思います。決して僕ひとりの力で取れた金メダルじゃない。いい形で恩返しできたかなと思います」と話しました。

そして多くの人たちの応援に対して「優勝というよい報告ができて、たくさんの方々に自分の柔道を見てもらえて、元気や勇気を与えられたと思うので、満足せずに頑張っていきます」と感謝の気持ちを話していました。

柔道男子66キロ級の銀メダルは、ジョージアのバザ・マルクベラシュビリ選手、銅メダルは、韓国のアン・バウル選手と、ブラジルのダニエル・カルグニン選手でした。
きょうだいで金メダルを獲得した阿部一二三選手と妹の詩選手は表彰式のあと、首にかかった金メダルを2人そろって胸の前に掲げました。
そして満面の笑みを見せながら誇らしげに取材に応じました。
阿部一二三選手は、きょうだいでの金メダルについて「最高ですね。2人で最高に輝けた1日だと思います。決勝は妹からパワーをもらって試合ができました」と振り返りました。
また詩選手は「本当に小さい頃からの夢だったのでうれしいです。兄は本当に尊敬できる存在です。きょうだいで金メダルと言われることにプレッシャーはなかったです」と話していました。

阿部一二三「自分の柔道ができた」

きょうだいで金メダルを獲得した阿部一二三選手は「冷静に一本を取りにいく自分の柔道ができました。ワンチャンスをものにするしかないと思っていたのでよかったです」と落ち着いた様子で喜びの心境を話しました。

直前に妹の詩選手の金メダル獲得を見て臨んだ決勝については「先に妹が金メダルを取ったので自分も絶対にやってやると燃えました。歴史に名を刻めてよかったです」と話していました。

“きょうだいで金” 夢かなえた兄

高校時代から豪快な柔道で注目を集め”東京オリンピックの星”と期待された23歳の阿部一二三選手。最もし烈な代表争いを勝ち抜いて精神的にも大きく成長し、妹の阿部詩選手とともに柔道ではオリンピックで初めての”きょうだい”で同時に金メダルの快挙を成し遂げました。

6歳で柔道を始めた阿部一二三選手。小学生の頃は、体格に勝る女子選手に敗れるなど強い選手ではありませんでしたが、今では阿部選手の代名詞となっている担ぎ技を徹底して鍛えたことで、高校2年生だった2014年に一気に頭角を現しました。

ユースオリンピックで金メダルを獲得すると講道館杯、全日本体重別選手権を史上初めて高校2年生で制し、この頃から”東京オリンピックの星”と呼ばれるようになりました。

世界選手権を2017年から2連覇し、順調だった東京オリンピックへの歩みに待ったをかけたのは、ライバルの丸山城志郎選手でした。阿部選手は2018年から2019年の世界選手権にかけて3連敗を喫し一時は、オリンピックの代表争いで逆転されました。

男子日本代表の井上康生監督は、当時「早くから期待は高いがまだオリンピックには出ていない。どれだけ本人が真剣に現状に向き合えているかだ」と厳しいことばを投げかけていました。

代表争いであとがなくなった阿部選手は、2019年11月の国際大会の決勝で丸山選手に雪辱を果たし、去年12月に異例の直接対決となった内定選手決定戦で、24分間にわたった激闘の末、再び丸山選手を破り初めてのオリンピック代表の座をつかみました。

阿部選手が「あの厳しい戦いに勝てたのは自分自身の自信になった。いちばん成長したのは心の部分」と振り返るとおり、厳しい代表争いを勝ち抜くことで精神面でも大きく成長しました。

ことし4月の国際大会では強化してきた足技も駆使して優勝し柔道の幅も広げて「前に出る自分の柔道を出し切れば、夢・目標はかなう」と自信を持って本番を迎えました。

そして、初めての大舞台、得意の担ぎ技と、それを警戒する相手に対しては足技を使い思いどおりに試合を運びました。

海外勢のマークを跳ね返し、”きょうだい”同時に金メダルという、妹、詩選手との夢をかなえました。

父親「生まれた時にこうなるなんて思ってなかった」

きょうだいで金メダルを獲得した兵庫県出身の阿部一二三選手と妹の詩選手の両親が、25日夜に取材に応じました。

父親の阿部浩二さんは「コロナ禍でどうなるか分からない大会だったが、皆さんの力で畳に立てて、最高の結果を届けてもらえて本当に喜んでいる」と心境を話しました。

母親の愛さんは「2人に最高のプレゼントをしてもらい最高の1日。1日が長くて、1試合1試合、本当に緊張した。私たちもこんなに緊張するんだなと思った。最後、優勝したときはすべての疲れが吹き飛んだ」とうれしそうに話しました。

無観客での開催となり、会場で観戦できなかったことについて、浩二さんは「現場で見られない寂しさはあったが、結果を僕らのもとに届けてくれたので」と話し、愛さんは2人が金メダルを決めた瞬間について「詩が金メダルを取ってみんなが喜んでほっとして、絶対、一二三も金メダルを取れると信じていた。ことばにならないくらい最高の気持ちだった」と話しました。

試合後、2人と会った浩二さんは一二三選手に、愛さんは詩選手に、それぞれ金メダルをかけてもらったということです。

浩二さんは「この瞬間がようやくやってきたなと。メダルは非常に重かった。気持ちも全部つまっていたなと、重さがあった」と感想を話していました。

そして、浩二さんは2人について「生まれた時にこうなるなんて思ってなかった。柔道をすることも頭になかった。何か持っているのかなと。両親がこんなこと言ったらアホやと言われるがまさに“スター”やな」とわが子について誇らしげに話していました。